41.生還と秘密
「生きてる……ってことは、私の魔法が成功したのね」
見覚えのある、ポッシェ村で一時的に住まわせてもらっている仮住まいの私の部屋。そこで目が覚める。
身体を起こそうとすると、まず上半身を上げる時に腕が痛み、ベッドから立ち上がる時に腰と足までもが痛いことが分かった。要は全身が痛かった。
「起きたのか。おはよう」
「クラウス……おはよう。私はどれくらいの間寝ていたの?」
「3日間だ。サミュエルがずっと離れずに看病していた。そこに寝ているから、踏まないでやってくれ。コイツはずっと、付き合いの長い俺でも見たことのないくらい真面目に看病していた。後で礼を言っておくと良い」
「うわ、吃驚した……でも、分かった」
私が踏み出そうとしていた足の真横。そこにサミュエルの健やかな寝顔があった。
きっとサミュエルが看病を申し出たのは、私の事を気遣ってのことだろう。
私の身体には刻印が刻まれている。それを誰にも見せないように、意識のない守るためにずっと隣にいてくれたのだ。その気遣いが嬉しくて、なんとなく心が暖かくなった気がした。
「それで、あの男……お前を殺そうとしていたハルトリッヒという男についてだが、アイツも目覚めていない。今、村の集中治療室に拘束された状態で寝かされているよ。情報については、俺達が捕縛した二人から聞き出せ。……俺じゃあ、駄目らしいからな。詳しい事情は聞いていないが、サミュエルから止められた」
「ごめんなさい、サミュエルが止めた通り、事情についてはまだ話せない」
「………………分かった。いつか話してくれることを期待している」
謝罪の言葉しか掛けられなかった。
クラウスは分かったと納得した言葉を吐きながらも、その顔には明らかに不満を秘めていて、苦しそうで、悲しそうな表情が浮かんでいた。
私が思っていいことじゃないが、そんな表情をしないで欲しかった。
だって私はクラウスを守りたいのだ。私なんかの事情に巻き込みたくない。サミュエルは勝手に巻き込まれに来たから別として、クラウスはまだ事情を何も知らない。だからまだ引き返せる。
予想よりも酷くなってしまっているこの事態にクラウスに話そうと思っていた気持ちは完全に消え去っていた。これからも今回のような化け物並みの刺客が差し向けられるとすると……。
今回は敵の規模が分からなかったのもあり、協力させてしまったが、本来であれば彼は関わるべき人ではない。関わる必要のない人だ。
それに私の柵にクラウスを巻き込んで、迷惑をかけたくなかった。もし正体がバレて、嫌われたらなんて思うと、心が張り裂けそうに痛んだのだ。
「ごめん」
「…………無理だけはするなよ」
その言葉に涙が出そうになる。
だってクラウスの態度からして、私の彼に何も話さないと言う言動は『彼を信用していない』行為だ。
でも大して親しくなかったはずのサミュエルは事情を全て把握している。クラウスだけ仲間はずれにしているようで心が痛んだのだ。
しかしここで折れるわけにはいかない。私はそれ以上はなにも言わずに彼が部屋から出ていくのを視線だけで見守った。




