24.一時的な帰還②
帰ってくるための転送ポートを、私の魔力で現在地である授賞式会場の控え室に設置する。
これで随分と帰るための魔力は削減されるが、問題はこの後だ。ほぼ解決したようなではあるが、それは《《原理上は》》という話。実際には、こんなマーキングなしの長距離移動だなんてものは、私含めて誰もしたことがない。
ここに来てから何度も『命知らず』などと言われてきたが、そんな私にも不安がつきまとっていた。失敗すれば、何が起こるのか分からない。しかも今回は一人ではないのだ。
それ故に魔道具の魔法式に魔力を込めるという最後の手順を踏めないままに10分が経っていた。
「ん?フィーア、緊張してるの?可愛い」
「っそんなわけ――」
「良いよ、隠さなくて。大丈夫、君の作った魔法と魔道具を僕は信じているよ」
「俺も、信じている。なにせ俺は誰よりも近くで見てきたからな、お前の魔道具師としての実力を。だから自分を信じてやれ」
「二人とも……ありがとう」
国を抜け出してきた当初からは考えられない光景だと思う。私が誰かに勇気付けられるだなんて。
しかもそれを嬉しいと感じているのだから、人間変わるものだ。
「ポッシェ村へ!」
魔法は想像力の塊のような力だ。目を瞑って行先を出来るだけ鮮明に思い出す。
そうして心の準備が出来た瞬間に私も、魔法式に魔力を流し込む。十分に溜まったところで、空間を斜めに大きく切り裂き、魔道具を発動させた。
後ろで魔力を剣に流し込んでいた二人から小さく歓声が上がったのが聞こえる。それにつられて目を開けてみると、目の前にあったのは、ポッシェ村だった。
***
「ん~!1カ月ぶりに帰ってこられた!!」
到着したのは村の研究室まで少し歩くほどの距離である村の入り口。時間からして、既に皆、研究室に籠っているのだろう。
「そういえば、フィーアは王都に着て2週間だったね。どう?馴染めた?永住できそう??」
「……まだ諦めていなかったんですか」
サミュエル、まだ私を雇うことを諦めていなかったのか。
実際、何度も彼からのこの手の誘いは断っているのだが、へこたれる気配もなく誘い続けてくる。彼のメンタルは、鋼か何かで出来ているのだろうか。それであれば、是非とも魔道具の素材として取り出してやりたいところだ。そしたらこの厄介な勧誘活動も止まる事だろう。
「そうか、授賞式が終われば、フィーアはここに帰ってしまうのか……」
本当に悲しそうな声でそんなことを言うのが聞こえたから、驚いた。声の出所は、サミュエル……などでは勿論なく、クラウスだった。
「あ~!フィーア!!クラウスが悲しいって泣いてるよっ!!可哀そうに」
「泣いてない!!……少し寂しさを感じたのは事実だが」
「私も、クラウスに会えなくなるのは確かに寂しいかも」
「……そう、か」
少し先の事を考えて事実を言っただけのはずなのに、なんだか妙に顔が熱い。
まただ。またこの現象。
何故クラウスと会えないのが寂しいのか、それを伝えると頬に熱が集まるのか、彼も寂しいと聞いて心が少し跳ねるのか。私にはその理由がまだ分からなかった。




