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【完結済み】妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います  作者: 皇 翼
第二章:王都

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22.授賞式

あれから。

クラウスも私に何かしらの知識を与える時の態度が柔らかくなり、二人の間の蟠りは溶けていったと感じられる。

それだけじゃない。私が話を聞く時にも飽きないように適度に興味がある分野――魔法や魔道具と言った知識の歴史を取り入れてみたり、小まめにお菓子を与えて休憩を挟んだりなどするようになった。今までにはなかった細かい気遣いが感じられる。

お菓子を急に与えられた当初は子ども扱いされているのかと少し落ち込みはしたが、それを問いただしてみるとクラウスの純粋な好意だったらしく、逆に彼を落ち込ませるという結果になってしまったためにそれ以降は何も言うことなくその優しさに甘えることにした。


私は私でクラウスから教えられるこの国の歴史や作法、その他式典などに出るうえで必要な知識を素直に聞き、入念な準備をした上で、授賞式当日に臨んだ――のだが。


「私の魔道具が見当たらないってどういうことですか!?」

「フィーア様!申し訳ありません!!しかし昨日までは確かにここにあることを私共もきちんと確認していたのです」

「……ここに入れる誰かが盗んだ、ってことですよね」

「残念ながら、そういうことになります」

「はあ。心当たりは、なくはないかな」


すぐにあの研究員たちの姿が脳裏に過った。

上司に報告したはいいが、ああいう人間達だ。普段の態度やら何やらで聞いてもらえなく、腹いせにこういう手段をとったと言ったところだろうか。そういえば去り際になにか仕出かすようなことを言っていた気がする。

負け犬の遠吠えだななんて舐めていたのは良くなかった。


しかしこれは面倒なことになったと、頭を抱える。

授賞式にて賞を取った魔道具たちは、授賞式時に一度使用され、かつその後に王に献上されるという形で、王宮の管理する展示室に暫く置かれる。

授賞式での実演はそもそも作成者である私であれば、魔法を使って誤魔化すことが出来る。しかし、展示の方はそうはいかない。

様々な人が危険性のないものであれば、それを実際に使ってみたりすることが出来るというのがその展示の醍醐味であるのだ。私の魔道具であれば、危険性はない。確実に使用可能エリアに置かれる。


それに加えて、この展示室には他国からの観光客や同業者、魔道具購入を考えている王族や貴族と言った者が山のように訪れる。それだけ注目が集まるものなのだ。そんな場所に、偽物を置くわけにいかない。しかし授賞式の魔道具部門の発表時間までは残り6時間程。

魔道具は魔法式を書くことに途方もない時間がかかる。そんな短時間で再度アレを1から作り直すことなど不可能だった。


せっかく準備をしてきたのに、こんなくだらないことで邪魔をされて失敗してしまうのか。最初はどうでもいい、出たくないとさえ考えていたのに、色んな人と出会ったこともあり、私にとってこれらの儀式は少しずつ大切なものに変わり始めていた。


「本当に申し訳ありません。この件に関しては、私達から関係者に謝罪し――」

「やあやあ、フィーア!なんか楽しそうなことしてるね!!僕も混ぜて~」

「おい、サミュエル!明らかに重い雰囲気の場所に軽薄な態度で突っ込むな。……それでフィーア、何かあったのか?」


緊迫した空気の中現れた空気を読まないサミュエル。クラウスの方は何かがあったとすぐに察したようで、私を心配する言葉を掛けてくれたが。まるで対比のような二人だ。

苛立っていた私は、脳天気なサミュエルを睨みつけながら、仕方なく軽く状況の説明をした。


「私の魔道具が奪われたみたいで、今どうするか考えてるところ」

「はあ!?いつ奪われたんだ?犯人は誰だ!?目星はついているのか、捕まえられそうなのか!!?」

「さっきから魔道具の魔力を辿ろうとはしているけど、既に壊されているか何かしらの魔法で隠されているかで、見つけられてない。犯人の目星はついてはいるけど、多分すぐに見つけるのは無理だと思う。それに考えている人たちが犯人じゃなかった時が面倒なことになってしまうし」

「……作り直す、しかないのか。でもいや、無理だろ、あれは」

「ええ。一度作った事があると言っても、あの魔道具の場合、魔道具自体の効果や範囲が大規模すぎて魔法式を書くのに最低でも3日はかかる」


この中では私を除いたら一番と言っていい程に作られた魔道具について詳しいクラウスが頭を抱える。

盗まれたと正直に言っても、自分で言うのも何だが、結局賞を最多受賞した本命作品がなければ会場は盛り下がり、私だけでなくこの国自体に悪い印象を与えるだけだろう。

本当にどうすればいいのか分からない状況だった。


「う~~ん、製作期間とかについてはよく分からないけど、代わりとかプロトタイプみたいなのってないの?」

「プロトタイプというか……時間があった時に、より改良していたものはあるけど、全部村に置いてきて――あ!村から取ってくればいいのか」


魔道具についてなんてなにも分かっていない筈のサミュエルの意見によって、私はとある方法を思いついた。

かつて作った()()()()()を使えば、きっと間に合う。


「え?ポッシェ村までは最短ルートでも1週間はかかるって聞いたけど?」

「ええ。でも一瞬で行く方法があるんです。魔力は消費しますが、それなりに魔術師がいれば…………と思いましたが、私、この王都で貴方達以外に知り合いがいないんでした」


そう。私一人でポッシェ村まで、魔力の目標もなくテレポートするとなると、実際魔力が足りない。自分が二人いれば、なんとかなるというレベルの足りなさだ。

しかし魔力を分けてもらおうにも、この国で話せる人間なんてこの二人くらいしか思い浮かばない。

自身の人望のなさに、情けなくもクラウスとサミュエルに助けを求めるような視線を向けると、二人はどこか気まずそうに、私から目を逸らしていた。


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