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【完結済み】妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います  作者: 皇 翼
第一章:序章

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1.久遠の国

トリプレート公爵家。

久遠の国・ブレメンス王国を代々聖女として守護してきた血筋を繋ぎ続ける由緒ある家だ。私はそこの()()()()()()

歴史が無駄に長いだけに富も名誉も権力もある家柄。しかし私にとってソレらは常に意味のないものであり、生きて来た道筋も『幸せ』とは程遠い人生だった。それは何故か。その理由は公爵家の血筋の特殊性、そして両親の関係性にまで話を遡ることになる。


***


私の出身国である久遠を司る国・ブレメンス王国。

この国の成り立ちとしては、女神に気に入られた一人の青年が女神と共に世界中を旅して、その旅をした時の功績や財宝を元手に国を打ち立てた所から始まる。

青年はそのままこの国の初代国王となり、彼の相棒とも呼べる女神はその傍ら……トリプレートという強い肉体・強力な魔法・高い精神力全てを持つ者の姓を与えられ、今の公爵家としての地位を与えられた。


女神は人間の伴侶と国王の死を見送った後には、未練はないとばかりに天上の国に還ってしまったが、公爵家という血筋、そして家は残り続けた。

そして彼女の血を受け継いだ子孫たちが代々女神の力を受け継いで、聖女として様々な厄災からブレメンス王国を守ってきたのだ。


ここまでがこの国の成り立ち、そして聖女という存在の誕生経緯である――。


しかし血筋の本流が女神という特殊性故だろうか。聖女の資質は代々公爵家の女性にしか継承されず、継承した女性は必ず月が溶けた様な白銀の髪に、零れ落ちそうな満月によく似た金の瞳という神秘的な容姿を与えられていた。それは史実通りであり、私にも同様に受け継がれているものだ。


一言で表すのであれば、王族よりも稀有で貴重な血筋。受け継げるのは本当に稀なものだ。

時々聖女が王族や他貴族に嫁ぎ、血が交わったとしても、聖女が産まれるのは公爵家でのみであった。王家にも他の権力を欲しがる貴族らの元にも特徴的な白と金は現れない。それどころかその力の片鱗すらも持っていない子供ばかりが産まれる。誰かが言った。まるで呪いのようだ、と。

そこから『呪われた一族』などと呼ばれることになったのだが、その話は今は関係のない事だ。


しかし、そんな国を支え続けるために重要な立場であるはずの聖女は歴史上、いつも絶えず存在していたわけではない。時代が流れゆく中でも聖女が存在しない期間もどこかしらであったが、国に厄災が降りかかろうとしている時には必ず聖女が産まれ、聖女によってこの国は救われ続けてきたのだ。


彼女ら『聖女』は、普通の魔法使いが持ち得ぬ魔法……人体の再生や結界などという有名なものから天候を変化させたり、未来に起こる不幸なことを予言出来たりなど大掛かり且つ規格外の魔法・魔力を持つ。


このブレメンス王国が久遠の国などと他国から呼ばれてきたのも、この国の規格外の能力を持つ聖女の能力がかなり大きいと私は考えている。

歴代の優秀な聖女のお陰で昔から戦には負けなし且つ他国からの侵略を許したこともない。結界によって、民の安全は完全に守られ、魔物に脅かされるなんていう日々からも解放される。

それだけではない。人間が生きていくために必要な食という概念……聖女が存在する時代においては農作物についても豊作でない年はなかった。まさに天からの贈り物。


けれどそんな歴史も今は昔。聖女の存在はある意味大きすぎた。国の――王族の面子を保つためにもいつからかこの国を支える『聖女』の能力はその時代の王太子以外には秘匿とされる傾向が見られるようになる。具体的には聖女の功績は全て王のものとして扱われ、聖女は存在は国民や裏の事情を知らない王侯貴族からは、外交時や国の式典・祭典を執り行うお飾り程度の存在としか思われていなかった。

実際私自身も何度も何度も、『お飾り公爵』などと貴族に揶揄されてきたのだ。

悔しくないわけではない。いつも思っていた、『誰の努力のお陰で貴方達が豊かな生活を送ってこられていると思っているの?』と。しかし誰にもぶつけることの出来ない恨みは、募り募っていった。でも抵抗など出来ない。だって、一人で抵抗したところで何も出来ないから。

……何も出来なかった。いくら聖女などと言っても、所詮は一人の力だ。

国や人間を全て焼き尽くすことも、誰かの記憶や気持ちを変えることも、厳重な警備から抜け出して逃げることも出来なかった。逃げようとしても離してなどもらえない。何も与えてくれないくせに、その首輪だけは頑丈だったのだ。


要は今現在の聖女は、陰で公爵家の仕事という大義名分を盾に働かされるだけ働かされて、力を搾りつくされる国の操り人形だった。

けれど国になくてはならない存在だったが故に血筋は何があっても途切れさせることなく、継がれ続けた。まるで家畜のようだ。


そういう諸々の事情から公爵家というのは国内でも有数の権力・特権を持つ代わりにどの貴族よりも国からの束縛が大きく、規則も多い家であったのだった。


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