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補足資料1.技術資料集


この世界の技術資料(用語集)



反応炉


 核融合炉のこと。

 この時代の主な電力供給元で、広く使われている。

 2160年代には条件付きではあるが、車載可能な大きさのものも実用化されている。

 地上の発電所は反応炉4基前後で構成されていることが多い。

 宇宙船の主電源にも反応炉が用いられており、各種機器や兵装などを動かす動力源である。



反応エンジン


 厳密にいえば核融合炉の一種。正式には核融合トーチという。

 特定方向に高エネルギーを噴射するための機構で、推進剤との併用で宇宙船の推進用エンジンとして利用される。



プラズマ噴射装置


 電力によってプラズマを発生し、特定方向に噴射することで推進力を得る。

 推力自体は大きくないので宇宙船などの姿勢制御などに用いられる。スラスターなどとも呼ばれる。



時空振動弾


 高エネルギーを集中させることで、空間の構造自体を破壊する兵器。

 2128年、実証実験に成功する。

 この時、12基の反応炉の出力で、破壊した空間は0.00016π㎣(直径0.1㎜の球状空間)だった。

 その際に想定していない磁場変動や重力変動、空間変調が多発した。

 解析の結果、限定範囲であっても3次元空間において空間構造そのものを破壊すると、空間自体が修復不可能となり連鎖的に空間崩壊が始まることが推測される。

 実験において、それ以上の空間崩壊が起きなかったのは、空間の自己修復性によるものと考えられた。

 この実験はこの時点での限界点であったが、運が良かったと言える。自己修復には限界点が存在し、それを超えると崩壊速度が修復速度を上回るのだ。

 計算上は上記の空間破壊は、自己修復されるかなりギリギリの大きさであったと推測されている。

 破壊する空間を隔離する方法が検討されるも、隔離するためにその空間の周囲を断絶するのは、すなわちその断絶を起こすための空間破壊に他ならなかった。

 以後、この技術は禁忌として、研究自体が中止される。



空間圧縮技術


 表向きは研究中止となった時空振動弾とその関連技術であるが、それをもとにいくつかの研究が続けられていた。

 その一つが超高速航行技術。

 当初は時空振動弾の空間破壊から発展した理論によって、特定の空間を圧縮させて、通常速度で移動することによって結果的に高速を超えて移動できると考えられた。

 だが、空間崩壊の問題がここでも立ちはだかる。

 空間構造を圧縮すると、局所的な空間の破断(微小な空間破壊)が生まれる。これを大規模に行ってしまえば空間の崩壊の臨界に達してしまうのだ。

 つまり空間の圧縮は可能だが、圧縮規模が大きければ空間の構造を破壊するのと結果的に同じことが起きる。

 計算上、数100m単位であれば空間圧縮は可能だが、膨大なエネルギーを消費してそれでは何の役にも立たない。

 理論的には完成されたが、実証実験は行われなかった。



次元内包論


 時空振動弾の研究は中止となったが、その過程で得られたデータは新しい知見を人類にもたらした。

 3次元空間を崩壊させた際のデータから、3次元の崩壊に伴い高次元側でも同時に崩壊が起きている可能性が示唆されたのだ。

 最初これは3次元の空間崩壊が、多次元構造も破壊するものと理解された。

 慎重にデータの検討が進むと、一つの結論に至る。

 3次元において3次元空間を破壊するということは抽象化された空間そのものを壊すことになるのではないか。

 人間は3次元で生活しているが、これは3次元という空間が存在しているのではなく、n次元の中の3次元分しか認識も影響を与えることもできないことを示しているのではないか。

 すべての次元は常に我々の世界に存在している。3次元とは3次元分の情報として抽象化させた世界を指している。という考え方だった。

 2135年。時空振動弾の技術をもとに、3次元空間を破壊するのではなく、高エネルギーによってより3次元空間内により高次元と同じ環境を作ることで、その次元の境界を超える扉を作れるのではないかという発想のもと、実験が行われる。

 この時開けられた扉のサイズは前回同様に、直径0.1㎜程度のいわば「穴」だった。

 実際にこの穴は空間を破壊するよりもより小さなエネルギーで開くこと、そして穴の先は3次元とは構造が異なる空間であることは証明された。

 ただし、この空間に侵入すると3次元空間での常識や物理法則があてにならないことがすぐにわかる。

 多次元にアクセスする技術ではあったものの、それを活用することは人間には不可能であることが証明される結果となった。

 完全に入ってしまえば、出口すら見失ってしまう。そして2度と戻ることはできない。

 多次元へのアクセスは可能になったが、内部では3次元的な座標系が成立せず、進行方向も出口も定義できなかった。

 そのため、この段階の技術は「開けても戻れない穴」に留まり、研究は停滞した。



ゲート技術


 二つに派生した技術は、超高速航行を研究していたチームによって、再度統合される。

 多次元が3次元を内包するものであると仮定するならば、n次元の中で3次元分だけ圧縮しても、n-3の空間骨格が残る。

 その状態であれば自己修復能力は極めて高いものになるのではないか、という発想から研究が続けられた。

 そこで彼らは、多次元空間そのものを理解するのではなく、3次元側の座標に従って多次元側を“拘束”し、距離を実質ゼロ化する手順へ舵を切ったのだ。

 まず空間を多次元化し、3次元から多次元へのアクセスを確保する。

 次に3次元上の座標をもとに、多次元側に空間圧縮を起こし、3次元計算上の距離をゼロにする。

 圧縮完了地点の多次元側に高エネルギーを放射し、把握している3次元要素以外の部分を除去することで出口を作る。除去された成分は多次元空間側で散逸する。

 多くの実験を経て2138年。この手順が研究室内で実行された。

 実験室内の空間に開けた直径1㎝の次元の穴を開けて、2m分の多次元側の3次元要素を圧縮。その先に出口を作るエネルギー放射を行った。

 見た目上は何ら通常の空間と変わらないが、計測上存在する穴の位置に慎重に最も安定した物質であるニッケル62の直径1㎜の棒を押し込んだ。

 すると、座標位置で2m先からその棒の先端が生えたのである。

 抜き差しすると、空中に生えたニッケルの棒は同じように抜き差しする動きを見せた。

 出力の維持ができなくなり穴が閉じられると、ニッケルの棒は二つに切断されて空間の穴から顔を出していた部分が地面に落ちた。

 その部分を計測すると、切断されることによって生じた断面は鋭利なナイフで切ったように美しく、損失はほぼ0であった。

 空間が距離0で繋がっていることの一つの証明となった。

 人類は、距離の制約を無効化する技術の足掛かりを得たのだ。

 この後に、ここで言われた多次元空間を亜空間と呼ぶのが定着する。実際に我々がアクセスしているのがどういう多次元なのかは解明されていない。


追記:時空振動弾はパンドラの箱に例えられる。

 人類はパンドラの箱を開けようと、そのカギを必死に探した。

 だが、そのカギは見つからなかったのだ。

 だから、災厄(破滅的兵器)が世界に溢れることはなかった。

 そして開かなかったからこそ、別の場所に希望(空間跳躍)を見つけることができたのだ、などと技術史の授業では語られる。




1stゲート


 宇宙空間における実験を繰り返し、実用に向けての研究が進む。

 大きくすると必要となるエネルギー量が増えることもさることながら、少なからず通常空間側にも影響が出ることが確認されていた。

 それらの技術改善と、データ収集が繰り返され、最初の実用ゲートとして2143年に最初の恒星間ゲートが計画される。接続先はプロキシマ・ケンタウリ(4.25光年)であった。

 ゲート技術は送り出すことしかできない。帰ってくるためには向こう側にもゲートが必要だった。

 計画されたのは有人宇宙船が通過できるサイズのゲートを、こちら側のゲートとセットで運用する方法だった。

 また、周囲への影響を抑えるために、ゲートは木星軌道の外側、ほかの惑星の重力干渉を受けない場所に設置されることになった。

 1stゲートαは外周直径400m、中心部に200mのゲートを開くことができるリング状、1stゲートβはその内側を通行できる外周直径180mで、中心部に80mのゲートを開くことができる円筒形となった。建造プロジェクトは順調に進む。

 2150年、ついに完成し、1stゲートβをαを使い送り出すフェイズとなった。

 結論から言うと1stゲートは起動しβを送り出したように見えたが、実際には空間の安定に問題があり、βは失われる。

 これまでの実験で見落とされていた空間に対するアプローチの方法に不足が見つかったのだ。これまでの実験では見過ごされ、運よく成功していただけであったことが判明した。

 2154年に1stゲートαを改良した2ndゲートα、および新しく作られた2ndゲートβによって、人類は初めて別の恒星系へとたどり着くことになる。

 

 一般にゲートというとゲート技術のことを指す。1stや5thのような接頭語が付く場合にはその構造体ゲートそのものを指す。ちなみに構造体としてのゲートはリングと呼ばれることもある。

 

 

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