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16.その後


 2171年4月

 

 北半球の春と同時に地球再生プロジェクトが発表される。

 希望者から徐々にシェルター外に出て、地域を再建する試みだ。

 シェルターに近い場所から、街と農場などを作り、かつての地球環境に近い状況を作るための取り組みである。

 初期の人員配置は1000万人程度で、南北に街を作ることになる。

 シェルターの隣接する地域は基本的に温暖であることもあり、希望者が殺到した。

 人員を絞るために、所有している技能などをもとに選考が行われることになる。

 また、自らの所有する土地を買うためにクレジットを用いることが可能となると、旧時代の金持ちを優遇するのかとの声も上がったが、政府はこの声に耳を貸さなかった。

 個人で大きな土地を所有したところで、そこで働く労働力は確保できないことはわかっていた。

 なので、ここでCRを消費させることは、過去の権利を持ち出せないために有効な手段と考えていたのだ。

 実際シェルターを出ることで、かなりの自由を手にすることは可能だが、それと引き換えにCRを消費して生活を回す必要が出てくる。

 必要な物資は自己生産も可能ではあるが、当面は政府からの放出に頼ることになる。

 結果として、政府の強い統制を維持したまま、経済制度が再建され始めることになる。



 2172年1月


 寒冷状態は続いている。

 再生プロジェクトが始まって急速に都市開発や環境整備が進む。

 その過程で、政府から離脱し生き延びた人たちとの接触と衝突が生じる。

 この時点で改めて政府の方針に従うものは、その土地で支援を受けられることとなるが、そうでない人たちは、その地を追われることになる。

 半数ほどが連邦の市民となり、半数ほどがそれを拒み、より過酷な両極側へと逃れた。



 2172年4月


 連邦政府は、非保護民の居住地を北緯40度以北および南緯40度以南と指定し、それより極側には干渉しないことを宣言した。

 法律上の成人年齢は16歳と定められる。それ以降は何らかの社会貢献が法律的に求められることになった。

 このころから連邦市民をシビリアンと呼び、非公式ではあるが細々と自力で生き続ける人々を棄民アバンダンドと称するようになる。

 パナマ沖に大規模な水上都市の建設が始まる。



 2172年5月


 静止軌道上に大規模なドックの建設を開始。

 パナマ沖に建造中の水上都市は、EB-01、静止軌道上のドックはFB-01と名づけられる。それぞれEarthBase、FleetBaseというコードネームからそう呼ばれることになった。

 同時に人類初の軌道エレベーターが建設されることが発表された。

 EB-01とFB-01は軌道エレベーターで結ばれる計画であった。



 2175年


 人類の再配置計画が終わりに近づく。南北38度までの土地が再配分され、正式に個人の所有する土地として認められることになる。

 各種製造プラントは政府所有のままであったが、小規模流通業や小売業、小規模サービスなどは民間の運営も可能となっていた。

 依然として政府の強い統制は敷かれたままであったが、現状に疑問を投げかける者は少なかった。


 同年、連邦政府は最高評議会の設置を宣言。

 議席の配分は地域ごとで北米1、南米1、欧州1、アフリカ1、西アジア1、東アジア1、議長1という構成だった。

 一見公平にも見えるが、議長は北米出身、南米代表も北米出身者、アフリカは欧州出身者、東アジアは旧日本の出身者と極めて偏った形でのスタートとなる。

 その上に連邦政府主席が存在する形であり、最終決定権は政府主席が持ち続けることとなる。

 この時点で選挙は行われていない。


 この時点での統計上の人口は10億2500万人。

 2166年末の記録が推定96億5000万人。実に10分の1まで減っていた。

 なお、この人口減少は大半が未知の物体の墜落に関連する災害により起こったとだけ記録されている。

 実際のところ、何人が最初の衝突で死に、その後の統一戦争で死亡したのか、何人が飢えたのか。詳細はわかっていない。

 今生き残っている人たちの記録は揃っていたが、死んだ人の記録が補完されることはなかった。



 2176年


 建造中であった軌道エレベーターが完成する。


 学校制度が正式に決定される。

 これまで各地域ごとに運営されていた教育機関に一定のカリキュラムが義務付けられることになる。

 使用言語は自治政府に委ねられていたが、最低限の言語能力と数学的知識、および歴史教育が必須となった。

 同時に大学の名称は使用できなくなり、研究機関としての存続は認められたが、政府に対しての研究内容の報告が義務付けられた。

 また、EB-01に連邦大学を設立。

 入学試験をパスすれば、誰でも入学可能となる。

 連邦大学の生徒は候補生と呼ばれ、軍属となる。だが卒業後の進路は本人の希望に沿ったものになることが保障された。

 連邦政府の機関や研究所に入るための必須の教育機関と位置付けられ、世界各地から優秀な人材を集めるための手段として機能する。

 なお、入学試験は世界各地で行われたが、試験問題、回答はすべて英語で行うことが求められた。



 2180年


 気温の上昇傾向が始まる。

 日照は完全に回復しており、北半球においても体感温度は確実に上昇していた。

 農場では作物の切り替えが始まる。

 かつての砂漠であった地域には農地と森が再生し始めていた。



 2195年


 FB-01の大規模改修が行われる。

 改修の完了に伴い、EB-01にあった大学の機能の半分がFB-01に移動となり、候補生の定数も倍に設定された。



 2200年


 地上の気温はかつてよりも少し低い水準で安定する。

 海流や大気の対流はかつてと異なってはいたが、安定状態を保てるようになっていた。

 生産は政府管轄下の企業に移管されており、経済も安定的に回るようになっていた。

 地方の自治政府の行政も安定を見せ始める。

 一見すると、かつての世界が蘇り始めているように見えた。



 2205年


 5thゲートにて大規模事故が発生。多くの犠牲者が出ることになる。以後5番ゲートは閉鎖となり、エプシロン・エリダニとの往来は途絶えた。



 2217年


 地球圏の人口は15億を超えていた。

 地球連邦政府は何度かの選挙を経て、安定的に運営されている。

 人類は統合された状態を維持してはいたが、その内情は三層を成していた。

 連邦政府と、自治政府。そして棄民。

 歴史はなおも刻まれ続ける。





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