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部下の方がキレてる定期


 私がポンになった日から、数日が経ちました。曲がりなりにも襲撃を受けて、倒れてたんですよ?なのにもうお仕事復帰ですよ。笑えね~。はい、頑張りましょう。


「ソフィア様、私にも見せて下さい!」


 ガタゴトガタゴト馬車は往く。会談会談、疲れる会話が待っている。あ、目的地は教会です。フィグラス司教と今後について詰めます。教典派の印象は上げとかないと、流石にこれからの教育と福祉に影響が出ますからね。私が許しているアピール、向こうは反省してますアピールが出来てお互いに利がある。鉄は熱いうちに打てっていうし。知らないけど。


「イリルさんから聞きましたよ!ソフィア様が可愛くなっていた、って!」

「やめましょう、その話は」

「嫌です!」


 あ、対面に居るのはアイヴィー先生です。ポンの私が見られなかったからってぶー垂れてます。あれは私の精神が変になった結果出たバグです。再現性はありません。あってたまるか。

 

「今回、先生は私配下の幹部として顔を合わせるんですからね?」

「分かってますよ!勿論!」

「本当ですか……?」


 相変わらずニコーと笑う先生に、何とも言えない顔をしているであろう私。別に社交界って訳じゃないし、私の影響下にある人だからいいんですけどね?まぁ、シリッサと西北所領以外に出て貰う予定は無いし……。西北に居る限りは、私と同列以上の身分は存在しないからなぁ。辺境侯爵は伊達じゃないのだ。そもそも七大貴族の本家長女だし。えへん。はぁ。


「えぇ!しっかり教育の話をします!」

「あっなるほど」

「冗談ですよ……」

「本気で言ってるように聞こえましたので」

「酷い!」


 今度はさめざめと泣いているフリ。この人やっぱり見てて飽きないな……。私がポンになった日、先生は普通にギルド関連のお仕事で外に居た。絶対あのタイミングで会ってたらよりグズグズにされてただろうし、むしろ良かった気はする。非常に。とてもあぶない。

 そんなこんなで話していると、大聖堂へと辿り着いた。ちょっと前にここで殺されかけたって考えると凄いな……。まぁ、今更か。


「大聖堂……」

「……?」

「久しく、来ていなかったので」

「あら、そうなんですか?」

「はい」


 物憂げな顔で大聖堂を眺める先生。大聖堂の正面を横切り、そのまま裏側へと馬車は入っていく。停まった場所は、やはりあの日と同じであった。また首焼かれるんですか?勘弁してよね。

 止まって暫くすると、馬車の扉が開いた。顔を覗かせたのはロブでした。やっぱ場所が場所なせいで、張り詰めてますね。大丈夫だって、理論上は襲撃食らわないから。


「着きました」

「よし、行きましょうか」

「はい!」


 降りてすぐ、フィグラスと男の聖職者が私を迎えて来た。フィグラスはともかく、男の方はデカいわね。身体つきを見る限り、元軍人かな?手に剣ダコは見えない、習慣だけが残ってる感じかな。ふ~ん。


「元気そうね、司教補佐。いや、もう司教か」

「揶揄わないで頂けますか……?」

「そう気を悪くしないで」


 ちゃんと困るフィグラス。横の男は胡乱な目でフィグラスを見ていた。ま、彼については後で紹介があるでしょ。無かったら困るわ。服装を見る限り、次の司教補佐かな。


「……こちらへどうぞ」


 フィグラスの案内で、全員が大聖堂の中へと入っていく。あ、勿論直衛も居ますよ。私もふざけた真似しないんでよし。

 廊下を歩き、辿り着いたのは会議室。大きい机と椅子が置かれた簡素な部屋。直衛たちが部屋を囲むように立ち、他全員が椅子へと座る。一息ついて、フィグラスが先に口火を切った。


「まずは謝罪を。身内の暴走を統制できず、余りにもご迷惑をお掛けいたしました」

「えぇ、謝罪を受け入れましょう」

「寛大な御心に感謝いたします」


 まぁ謝罪ですよね。一旦。ぶっちゃけ蜂起は当日まで分かんなかったですから。聖女派自体はともかく、本人は揺れてたっぽいからなぁ。ぶっちゃけ私はここで激詰めしたところで利が無いのでいいです。こういうのは形式が大事なんすよ。トップ同士が許し合っておけば、下は口出せないからね。大体。


「けれど、これから内部の統制はしっかりやりなさい。二度目は無いわ」

「……無論です」


 程よく緊張感が戻ったようで何より。統制しろとは言うものの、完全に教会をまとめ上げられたらそれはそれで面倒ではある。台頭して来たら潰さなきゃならないから勘弁ね。めんどいから。


「……さて、過去はもういいわ。未来の話をしましょうか」

「待って下さい」


 先生が、口を挟む。えっ、どうしたんですか。フィグラスと男が緊張しかない顔で先生を見る。てか、彼も先生も紹介すらしてないんですけど。流れが、流れが……。


「……貴女は?」

「順番が前後しましたが……彼女はアイヴィー・アトモス。教育分野の担当官です」

「ご紹介に預かりましたアイヴィーです。早速お聞きします、何故リードラル卿は襲われたんですか?」

「それは……」


 あっ先生怒ってる。そりゃそうか。心なしか、直衛たちも気まずそうにしているぞ。君らは当日私が何とかメンタルケアしただろうに……。

 フィグラスが何とも言えない顔でこっちを見てくる。どこまで話してるんです?確実にそう言ってる。フィグラスと私の協力関係は公となっていない。何となく察していても、礼拝の日に何が起こっていたのかを詳しく知る人間は少ない。何ならフィグラス、クレア、私、当事者たちでさえ知らない部分があるのだ。もう闇に葬らない?


「私から答えましょう。司教、よろしいですか?」

「……あぁ、構わない。こちらも紹介を、彼はグルド・ザハリア。新しい司教補佐です」

「グルド・ザハリアと申します」

「えぇグルド、よろしく」

「よろしくお願いします。それで、どうなんですか?」


 グルド司教補佐ね。一気に叩き上げがポストに入ったねぇ。で、どう答えるんですか。ぶっちゃけ両方腹心だし、フィグラスと私は知ってるから微妙に止めにくい。めんどくさい。先生も私が傷つけられた義憤で聞いてますからね。だからこそ止めにくい。今後の話するのにも、お互い気まずくなるのはなぁ。一回ぶっちゃけさせた方がいいのかもしれない。もう見とけばいいか。


「当日の会場警備にクレア派の影響が」

「事前に警戒出来なかったんですか?」

「教会内部の力関係が、偶然クレアに味方した点もあり」

「それを防ぐための警備では?」

「完全な防備を目指してはいました」


 私とフィグラスを尻目に、舌戦が繰り広げられる。我々としてはもう終わった話なんですけど。フィグラスはシリッサ大聖堂の実権を握って、私は彼と教会に貸しと影響を持つ。私優位の関係性が出来た地点で、もうどうでもいいんですけど。そんなに怒らなくても……。フィグラスとしても部下は、異端審問官が私の手の者だったって話は知らないだろうし。ただひたすらに、何とも言えない。私の為に怒ってくれてるしなぁ。

 止めてもいいけど、部下のリアルな心情は聞いておきたいところではある。フィグラスを見遣るが、向こうも同じような意見らしい。困った目で私を見返してきた。そうでしょうね。そんなことをやっている間にも、幹部二人の議論は続く。


「領主を独断で異端審問に掛けた事実については?」

「クレアと彼女の知り合い間で行われた暴走であると結論が出ています」

「だから責任は無いと?」

「主犯たるクレアは処刑され、知り合い達も整理されております」

「論点はそこではありません。今回の凶行が行われてしまう仕組みに問題があるのでは?」


 あっちょっと危険な方向に向かってない?もう一歩踏み込み始めたら流石に止めないといけなくなるけど。教会は少しづつ解体するけど、中央教会の批判は私の危険視を生む。お怒りはもっともなんですけど……魔法使いあるあるというか、真実を求めがちなんですよね。やっぱ教会と相性悪いわ。まぁこっちの勢力が怒ってますよってのを伝えるのは大事と言えば大事なんで……。ね。うん。


「アイヴィー殿。我々は地方の一勢力に過ぎません」

「ですが」

「お怒りはもっともです。我々は教会としてそれを受け止めます」

「……そうですか。グルド司教補佐、でしたよね?」

「……はい」

「お答えいただき、ありがとうございます。リードラル卿、フィグラス司教。未来を考える場にてこの様な発言をしましたこと、謝罪いたします」


 悪い方向に行っちゃったか、全然納得して無さそうっすね。まぁそうでしょ、先生は仕組みの話をしてるけど、グルドは個人の問題の話をしてるし……。いや全面的に向こうが悪いんですけど、平謝りも難しいんですよ。これが政治の嫌なところで……。そも宗教的な組織に、こっちみたいな官僚っぽさを求めるのが文化的に無理というか。

 ま、私とフィグラスで締めるしかないか。この場は。もう一度フィグラスを見ると、向こうも察したのか口を開いた。よろしく~。


「……我々の責任を考えるよい機会と考えます。アイヴィーさん、ご意見を頂きましてありがとうございます」

「アイヴィーは温厚で優秀な部下よ。そのような者がこの場で怒るという事実を今一度、嚙み締めなさい」

「リードラル卿の寛大さに、心から感謝いたします」

「……教会の構造的な対策はこれから。そうでしょう?」

「仰る通りです。中央も今回の件には深く憂慮を抱いております」


 流石に助け舟ぐらいは出しとかないと、先生の教会に対する評価が最悪の下に行ってしまう。フィグラスも上手く拾ってくれたから軌道修正は何とかできたか?先生の方を見ると、私に向けて申し訳なさの混じった顔でニコッと笑ってきた。あ~微妙そ~。後でカバーしとかないと……。グルドは難しい顔してますね、元々実直な人なんでしょう。彼も責任を負わされてしまって……。かわいそ~。


「これから立て直す。その一点において、我々は一致しているわ」

「それも、仰る通りです」

「でしょう?なら、ここで話すべき話題をもう一度言うわ」


 私は一度、言葉を切った。いい加減本題に入らせてくれ。我々は良くも悪くも民衆側じゃない。だからこそ、感情に吞まれてはならない訳で。いや、捨てる必要は無いけどね。なんて考えながら、皆の気持ちを切り替える為に言いましょう。えぇ。

 

「未来の話よ。始めましょう」


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