8話:海の脅威
古代には本当に鉄の装甲を纏ったサメがいたらしい。
海に戻った俺は、「真の王」を探す前に、新たに得た電撃の力を試すことにした。
常に帯電している状態ではエネルギー効率が悪い。だから、まずは電撃を自在に制御し、必要なときだけ力を解放できるようにするのが先決だ。
近くの魚群を狙って、海中を泳ぎながら実験台を探す。
――あれは……イワシか、アジか。正直よくわからないが、小魚が集まっている。ちょうどいい。
体内に満ちるエネルギーを、ハサミの先へと集中させるイメージで意識を向ける。そこから――放つ。
バリバリバリッ!
小魚は一瞬で感電し、炭のように黒焦げになって海中に沈んだ。
(……想像以上に威力があるな。あのデンキウナギが放った電撃よりも強い。俺のエネルギー出力が、すでにあいつを超えているということか)
遠距離攻撃手段としては申し分ない。満足した俺は、次の目的――真の王の探索に移ろうとした、そのときだった。
突如、強い気配を感じた。海の捕食者たちが、俺の生体オーラに引き寄せられたらしい。
ホオジロザメが、複数。
(……ホオジロザメが群れるなんて聞いたことがないが――)
その異常な光景の中心に、ひときわ大きなサメの姿があった。
二回りは巨大なその個体は、全身が鈍い金属光を放っている。まるで鉄で覆われたような装甲のサメ――
(なるほど、あれが原因か)
しかし、今の俺にとって、サメごとき敵ではない。
(雑魚どもが……)
俺はハサミに電撃を集中させ、放射状に一気に放った。
バチッ、バチバチバチッ!
ホオジロザメたちは一瞬で感電し、力なく沈んでいった。
(雑魚でも捕食すれば多少のエネルギーにはなるんだがな……電撃を使ったのは少しもったいなかったな)
そう考えていた時だった。
俺のすぐ近くに、鈍く光る影が急接近してくるのを感じた。
(……何!? 電撃が効かなかった!?)
その個体は、確かに電撃を受けていない。
(なるほど……表皮が本当に金属のようにできている。まるでアースのように電流を外へ流しているのか)
(小癪な……だが、ならば近接戦で叩き潰すまでだ)
俺は装甲鮫の突進を見切り、すれ違いざまにハサミで切り裂こうとする。
ガリッ――キンッ!
(硬い!? 地上で遭遇したどんな敵よりも、はるかに硬いぞ……)
俺のハサミは鉄さえ断てるというのに、やつの装甲には傷一つつかなかった。
その瞬間、装甲鮫が笑ったように見えた。
次の瞬間――信じられない速度で突進してくる!
(くっ……!)
ギリギリでかわしたが、完全には避けきれず、甲殻がざっくりと削り取られた。
(ぐぅっ! なんて破壊力だ……あれをまともに喰らえば、胴体ごと持っていかれる!)
装甲鮫は攻撃の手を緩めることなく、何度も俺に噛みつこうと突進を繰り返す。
直撃こそ避けているが、ダメージはじわじわと蓄積していた。
脚をやられれば――機動力を失い、逃げることすらできなくなる。
(どうする……! このままでは、やられる……!)
逃げ道は――上も、横も塞がれている。
だが、一つだけ――
(……下だ! 深海なら、あいつの行動範囲外。あの装甲では潜れまい!)
俺は全力で、深海へ向けて泳ぎはじめた。
傷ついた甲殻に水圧が染み、痛みが全身を貫く。
それでも、あの装甲鮫の追撃を断つには、ここを潜り抜けるしかない。
やがて、甲殻が軋みをあげ、辺りから光が消え――
俺はついに、奴の気配を感じなくなった。
(……あれが海の王、だったのか?)
体の痛みと疲労を噛み締めながら、俺は静かに小魚を求め、深海を漂った。
傷を癒す――次の戦いのために。
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