7話:ぬるぬるとの再戦
デンキナマズよりデンキウナギの方が電撃が強いらしいです。
俺は川をさかのぼり、あのデンキウナギと出会った付近に来ていた。
(デンキウナギ──俺に敗北を与えた存在。喰らうために戻ってきたぞ)
この世界の生き物は、強くなればなるほど“オーラ”のようなものを纏う。
強者が近づけば、その気配だけで場所が分かる。
もちろん、気配を隠す者もいるだろう。だが俺はしない。堂々と縄張りに踏み込む。俺が来たことを、はっきり知らせてやる。
案の定、俺の気配を察したのか、川の上流からデンキウナギが現れた。
初めて出会ったとき、あれほど巨大に見えた奴も──今では、手頃なサイズに見える。
……いや、俺がそれだけ強くなったということだ。
ハサミだけでなく、俺の全身は以前よりも大きく、強靭になっている。
だが、気を抜くな。奴の放つ電撃は凄まじい威力だった。当たれば、今の俺とて無事では済まない。
水中にうごめく影を確認し、俺は陸に上がる。前回と同じように、奴に向かって石を投げつけた。
投げる石の大きさも、速度も、あの時より段違いだ。これで倒せれば楽だが──
甘くはなかった。
奴は学習していた。石が当たる直前、体をくねらせ、体表のぬるぬるで衝撃を流したのだ。
さらに──デンキウナギの体が発光を始める。
(放電か?だが俺は地上にいる。無駄なエネルギー消費だぞ)
……そう思った、が。
次の瞬間、奴は水中から電撃を放ってきた!
(なにっ!? 遠距離攻撃まで!?)
俺は間一髪でそれを回避。着弾点の地面が黒焦げになる。
(あれだけ距離があっても威力が落ちていない……いや、奴も進化しているのか)
そうか。俺だけじゃない。この世界の生き物も──喰らい、進化している。
(だが──進化は俺の特権じゃないにせよ、お前たちの進化は遅すぎる!)
次々と放たれる電撃を避けながら、俺は考える。
(このまま撃ち続けられれば、いつか当たる……。だが今の歩脚なら──届く!)
俺は地面を蹴り、奴の頭上へ跳躍する。
空中で体勢を制御しながら、ハサミを突き立てるように突き出す。
(喰らえ──! ギザギザと粉砕の力は、お前のぬるぬるでも防げまい!)
狙いは的中した。ハサミが奴の体をしっかりホールドする。
そのまま、全力で挟み切る!
奴も最後の抵抗とばかりに電撃を放ってきたが、遠距離攻撃の連発でエネルギーは消耗していた。威力は大したことはない。
そして──
バチッ、という音を最後に、奴の体は完全に動かなくなった。
勝った。
俺はついに、あのデンキウナギにリベンジを果たしたのだ。
すぐさま奴の体に食らいつく。大きさはノコギリガザミには及ばないが、強力な電撃を生み出していたその肉体は、濃密なエネルギーに満ちていた。
喰らい尽くした瞬間──俺の体に、異変が起きた。
裂けるような衝動。凄まじいエネルギーの奔流に、体が一気に脱皮する。
そして──
新たな俺の体は、紫電を纏っていた。
放電能力を得たのだ。
俺は今──デンキガニとなった。
もう、この川沿いに敵はいないだろう。
アサヒガニが言っていた、"真の海の王"──
そいつに会いに、俺は再び海を目指す。
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