3話:ぬるぬるとの邂逅
ガザミもデカいです
さて、この辺りで“最強”と噂されるぬるぬるに会いに行くか。
俺は、ベンケイガニとしては破格の大きさになった体を揺らしながら、巧みに川を目指して進んでいった。
……しまった。
ぬるぬるがどのあたりにいるか、聞きそびれていた。
まあいい。噂になるほどの存在だ、並のサイズではないだろう。川沿いに進めば、いずれ出くわすはずだ。
そう思いながらしばらく上流へ歩いていると——
川面が、ピカリと光った。
ビリビリ……間違いない。
ぬるぬるの放電だ!
俺は草陰から急いで近づいた。
そこにいたのは、想像以上に巨大なデンキウナギだった。
元の人間としての知識に照らしても、常識外れのサイズだ。まさに“最強格”と呼ぶにふさわしい。
そのまま水に飛び込めば、奴の電撃で即終了だろう。
正面からやり合うには、少し工夫が必要だ。
俺はその辺に転がっていた石をハサミでつかみ、全力で投げた!
ドスッ!
見事、ウナギに命中。
身をよじり、水飛沫が飛ぶ。
俺に気づいたらしく、鋭い眼差しが向けられる。
だが、相手の挑発には乗らない。俺は黙々と石を投げ続ける。
ドスッ! ドスッ!
やがて、デンキウナギの動きが止まった。
これはチャンス……!
俺は一気に水に飛び込み、ハサミで奴の体を切り裂こうとした。
——ぬるっ!
くっ! 弾かれた!
ハサミが滑って入らない……!
この巨体に対して、まだ俺の力では足りないのか!
どうする!? と焦ったそのとき——
デンキウナギの体がピクリと動き、次の瞬間、強烈な電撃がほとばしった!
「しまった——ッ!」
バチバチッ!!
体中を電気が駆け巡る。
内臓が焼けそうな痛みに意識が揺らぐ……!
なんとか理性をつなぎ止め、俺は川岸へ這い上がった。
ハサミの力では、あのウナギに致命傷を与えることはできない……!
もっと強力な武器が必要だ……!
次に挑むときまでに、圧倒的な“切断力”を手に入れなくては!
俺は後ろ髪を引かれる思いで、川を離れた。
強力なパワーと鋭さが必要だと感じた俺は、河口へと向かっていた。
狙いは海の怪力種・アサヒガニを取り込むこと。その前段階として、まずは海に適応できる蟹を見つける必要があった。
そう、ガザミだ。
奴は鋭いハサミと、遊泳脚を備えた泳ぎの達人。
今の俺は陸棲のベンケイガニだが、ガザミの能力を取り込めれば、行動範囲は格段に広がる。
――もっと広い世界へ行くために。
俺はその第一歩として、ガザミとの接触を目指していた。
もちろん、まだ確証はない。
異種の蟹の特徴を本当に取り込めるのか?
だが、脱皮のたびに「大きくなれ」と念じてきた結果、俺の体は確かに巨大化してきた。
ならば今回も……なんとかなるだろう、とタカをくくっていた。
とはいえ、河口は広い。そう簡単に見つかるものか――
その時だった。
頭の奥に、ざらついた声が響いた。
「おまえだな。この辺の沢を荒らしてる新参の蟹は。自分が王にでもなれると思ってるのか? ここでわからせてやる」
念話……! これは、ガザミか!
姿はまだ見えない。だが、強者の気配ははっきりと伝わってきた。
いいだろう……その挑発、受けて立つ。
俺の名は蟹沢徹。今こそ、その力を見せてやる!
――こうして、俺とガザミの一騎打ちが始まった!
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