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幽霊都市  作者: グルタミンさん
一章 
6/8

6 火山のある発電所

ドローンに発電所へ行かないかと誘われたテラとサンツキ。

 そのドローンからは、何か期待のようなものを感じた。小さい希望を持っていうようだった。テラは、緊張していた。そのコンピューターシステムは敵では無かったのか?テラ達は、不安を抱えながらも、外へ出た。それから途中までは、図書館までの道と同じだった。外はあいかわらず寒かった。半袖のテラはドローンに、着られるものはないかときいた。テラがあまりにも寒そうだったのでドローンは渋々、衣料品店らしきところへ連れて行ってくれた。しかし、ここは500年前からずっと放置されているのだ。いくら常時分厚い雲が覆っているとはいえ、微弱な紫外線でも服の繊維を劣化させるのだ。よって、まともに着れそうな服は無く、どれも少し引っ張るだけで紙のように裂けた。この様子を見ていたサンツキは、ドローンに何かを言った。


『もう一度部屋へ戻りたいそうです。付いてきてくれますか?』


テラは、別に構わないと言った。テラの頭に乗ったカルは、


『えぇ〜。遅くなるの?』


と、言った。まるで他人事だった。

来た道を戻り、コンクリートの狭い部屋に戻った。部屋に戻るとサンツキは、白い木綿を持ってきた。漂流した時にサンツキを覆っていたものだ。サンツキはテラの肩幅を手で簡単に測ると、なんの下書きも無しに布を切り始めた。あいにく、ミシンはここにはなかったが、隣の部屋で糸と丸く曲がった針を見つけることはできた。サンツキは糸の先を軽く整えた後、針の穴に一発で糸を通し、ミシンとほぼ変わらない速さで縫い始めた。サンツキはミシンだった。そうして完成した服は今サンツキが着ているように襟が正面で交差しており、腰に紐を巻けば胴まわりのサイズ調整は簡単にできた。テラは、腹に何かを巻くのは好きでなかったので、今着ている服の上に羽織るようにした。サンツキの着ているものとは違い、テラの服は袖がヒラヒラしていなかった。服はかなり温かかった。コレを1時間足らずで作り上げるサンツキが、テラには少し恐ろしかった。

 外は、雪が降り始めていた。テラはもう寒くなかった。先ほど進んだ道を行き、図書館が見える場所に立ち止まった。そこからは地面に向かって階段が伸びていた。四人は少しここを降りるのを躊躇った。電気がつかないのだ。ドローンがいくつか試したが、地下は真っ暗のままだった。ドローンはしばらく何かを考えていた。


(これ以上はもう大丈夫なのでは?もしかしたらなんともないかもしれない。)


ドローンは、内心ヒヤヒヤしながら階段を降りていった。ドローン液晶の一つ目は強く光った。カルは興味深そうにドローンを見た後、同じように目を光らせた。カルはテラの頭に乗り、視界を照らした。サンツキはドローンの近くを歩いた。階段を少し降りると、


『少しここで待っていてください』


とドローンが言い、先へ一人で進んだ。表には全く出さないが、何か緊張しているようであった。


 あかりがついた。ここは地下鉄だ。大都市には必須の地下鉄だ。改札を無賃で通り抜けても、誰も何も言わない。サンツキは、初めて見る光景をメモに記録していた。しかし、メモを取り終える間もなく電車はすぐにやって来た。扉が開く。ドローンもテラもカルも、特に怪しむことなく電車に乗り込んだが、サンツキは、巨大な蛇を見るかのように立ち止まった。サンツキはテラの目を見ると、少しづつ近づき、恐る恐る乗り込んだ。扉が閉まる。サンツキは後ろを振り返えった。すると、電車が喋った。テラはさすがに何を言っているかは分からなかった。ドローンは何も言わず、ただ無人の運転席を見つめた。テラははじめてドローンが通信装置を使っているのを見た。


『OK! Lie,...』


電車はドローンに了承したようだ。すぐに動き出した。地下鉄から見える景色は、ほとんど変わらないのに、どうして窓がついているのだろう。そんなことを考えながらテラは、電車に乗っていた。揺れはほとんど感じず、速度変化による慣性だけが、この電車の動いている証拠だった。サンツキはドローンと何かを話していた。カルはテラの頭の上で寝ていた。目的地に着くまで、そんなに時間はかからなかった。

 電車は止まり、何か言った。おそらくは、目的に着いたということを知らせているのだろう。テラが、電車から出ると、硫黄の臭いがほんのりした。何かが腐った臭いだ。地下から出ると先ほどいたビル群とは大きく変わって、黒い空を背景に鉄色のパイプや煙突が大量にあった。工場地帯だ。しばらく見まわすと、左手側に円錐形の灰色い山が見えた。大きなその山は、煙を吹き出していた。火山だ。おそらくこの硫黄の臭いはここからきているのだろう。サンツキは硫黄の臭いを嗅ぎながら、メモ帳に何かを書き、テラに見せた。…。人が水に浸かっている絵だ。サンツキは、ピンとこないテラの様子に怒っているようで、ぷっと頬を膨らませた。サンツキはドローンを見つけ、早足で去っていった。やはり、言葉の通じるドローンがいいのだろう。


 サンツキとドローンは何かを話した後、二人でどこかへ行った。火山の方へ向かって行った。テラは遠くから二人を見ていた。頭の上のカルが言った、


『あれ?彼女さんを取られたみたいな顔だね。どうしたんだい?』


カルは煽って来た。しょうがないのだ。テラが理解できるのは、AIのもつ感情のようなものと言語化された思考だけなのだ。人間に対しては、正確な感情の読み取りさえ難しい。テラは、サンツキとは逆の方向へ向かった。

1000年前では、安定して電気を作ることが難しかった。人々はエコというものに囚われていた。炭化した古代生物を燃料にして熱を得ることができなくなったのだ。しかし、ある都市で画期的な発明が起こった。その火山と地震の国では、火山を人工的に操作することが可能になったのだ。人々は、火山による災害を恐れることはなく、火山は安定した熱源と温泉の提供地になったのだ。

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