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幽霊都市  作者: グルタミンさん
一章 
5/8

5 図書館

この都市での生活に絶望し始めたテラは海で一人の女性を見つけた。

 確かにその人が話しているのは、言葉である。ただし、知っている単語は全く聞き取れず、本当に人間の言語なのか分からないくらいに速い。


『目が覚めたんですか、無事でよかったです。』


テラは何も言わないのは失礼かと思い、こう言った。目の前の女性はテラの言葉を聞いて、固まった。お互い、意思の疎通ができないことに気がついたようだ。その人は走って他の部屋へ行き、少しして、スケッチブックのようなものを持ってきた。ページをザッと開いて、書き殴った。島のような絵と、おそらくこの年のことであろう摩天楼の絵が、細長い三角形で繋がれていた。そしてこの島の絵の上には文字らしきものが書いてあった。縦書きのその文字をテラは理解できなかったが、文字の下に書かれた『⁇?』と言う記号をみて、なんとなくは理解できた。この記号は、テラの言語ではよく使われている『¿?』と瓜二つなのだ。テラはその人からペンを受け取り、同じように絵を描いた。テラは人を二人と、吹き出しに入った『⁇?』を二人に書いた。


『Ahhhh〜⁇』


その人は、がっかりしているように見えた。テラは続いて、もう一度二人の絵を描き、一人は束ねた髪、もう一人は短い髪にした。短い髪の方は、矢印で

『TERRA』と書いた。


『私はテラです。テラ。』


テラはその人の方を向いて言った。その人は目を丸くしてペンを取り、四角い線の塊を二つ、丸っこい線の文字を繋げて書いた。


『タノカ』


その人は、小声で言った。


『サンツキ』


どうやら、名前が二つあるようで、四角い字の名前と丸い字の名前で別れているらしい。テラはその人をサンツキと呼ぶ事にした。

 サンツキと絵を描いて会話している時、ドローンがやってきた。


『連れて行きたい場所があります。きてください。』


テラはカルを呼び、サンツキを連れてドローンについて行った。四人は外を歩いた。雪は降っていなかった。サンツキは外の景色に感心しているようで、小さなメモ帳を片手に何かをメモっていた。ビル群を抜けた。周りには倒壊した木造の建物が増えた。厳密にいえば、ほぼ金属の骨組みや少しのコンクリートの壁しか原型をとどめていない。木材らしきものは地面に粉々のチップとして確認できた。しばらくすると大きな建物が現れた。レンガの使われた柱といくつもの大きな窓のあるその建物は、テラには宮殿のように見えた。


『ここは図書館です。500年前までの世界中の本があります。』


テラは、ワクワクしながら入っていった。いくつもの柱のような本棚が天井を支えていた。こんなに高いのにハシゴがない。テラが不思議に思っていると、ドローンはベルトのようなものを持ってきた。一方をテラの左手に結びつけた。みるからに頑丈そうだ。ドローンはベルトのもう一方を自分にくくりつけると、ふわっと浮かんだ。テラはドローンに持ち上げられていた。


『そこの赤い本を取ってください。それからちょうど二段上の本もお願いします。』


ドローンに吊り下げられたまま、テラは言われた通りに本をとっていった。それから30分ほど本を集めた後、サンツキの前に持っていった。


『コレらの本は、それぞれ500年前で書かれています。10種とも今使われているものと大きく乖離していると思いますが、みてみてほしいのです。』


サンツキはドローンの言葉の意味を理解したわけではないが、本を見ると同時に一つの本を取った。サンツキは本をペラペラめくり、(コレだ!)と言うようにテラとドローンに見せつけた。ドローンは、関心して


『ハポネ語ですか。』と言った。


それからドローンは謎の言語を話した。サンツキはドローンが話しているのを聴いた後、メモ帳を取り出し何かを縦に書いて見せた。


『分からないようです。』


ドローンは少し残念そうに言った。


『おそらく、書きと読みが、ズレてしまっているのでしょう。書き言葉は変わらないのに、言語は不思議なものです。』


ドローンは言った。テラにはよく分からない話だった。テラは持ってきた本を見た。10冊の本のうち、かろうじてテラも読めそうなものがあった。


『イスパニィア語ですか。それはあなたの言語の祖先です。今のものとは単語の語尾がかなり変化しているようなので、それにさえ気をつければあなたも読めるのではないでしょうか?』


テラは、本を読んでみた。文字列は、みたことありそうでないような変な感じだった。結局、テラはこの本を読めなかった。

 それから、しばらくサンツキの言語を学ぶ事になった。厳密にいえば学んでいるのは主にドローンだったが、テラもサンツキの名前くらいの文字は認識出来るようになっていた。ドローンの言語学習能力は凄まじかった。主に話し言葉と書き言葉の乖離を修正しただけのようではあったが、それでも二日と経たなかった。その間テラは、あまりサンツキと関わることはなく、カルと話していることが多かった。はじめて、工場にてテラがサンツキと食事をした時、サンツキはつまんでものを口に入れているテラを嫌な目でみた。サンツキは細長い棒を四つ持ってくると、テラに半分渡した。テラは仕方なく棒で刺して食べた。テラがサンツキを見ると、驚いた。サンツキは二本の棒を使って器用につまんで食べていたのだ。なんだ、それは当たり前のことなのか?テラはサンツキのメモ帳に二本の棒を描き、『???』と矢印で指した。サンツキは、


『HAhhh!?』


と驚いた。まったく、驚きたいのはこっちだ。



 ある時ドローンがテラとサンツキを読んで話をした。同時に二つの言語で話してくれた。発電所へ行かないかと言う内容だった。つまりは、この都市のコンピューターシステムと会わないか、というものだった。明らかに、ドローンの目的は変わっていたのだ。

最も多くの人口がある大陸では、文化も言語も多かったのだろう。数多くの文献が残っているが、誰も実際に見聞きすることはない。

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