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幽霊都市  作者: グルタミンさん
一章 
4/8

4 来客

ドローンは急にまともに喋るようになった。

 ドローンが言うに、ここには都市を集中管理しているコンピューターシステムがあり、今は様子がおかしいようだ。その大統領のようなシステムが、このAI(おそらくは、ドローン)を発電所に閉じ込めているらため、どうにかして欲しいらしい。しかし、ドローンは確かにこう言ったが、急ぎでもないしそこまで慎重な任務として捉えているわけでもないようだ。

 テラは工場の地下の部屋のベッドで寝ていた。あの工場と比べればこの部屋の天井がものすごく低く見える。テラはドローンの言うとおりにすべきか悩んでいた。カルは部屋の真ん中のテーブルで一人、変なカードで遊んでいた。


『少し外に出たいのだが、ついてくるか?』


テラは言った。


『ああ、ついて行きたいな。』


カルはそう言うとカードを放ってテラの頭の上にとまった。重いんだが。カルはテラの短い髪の毛を掴んでいる。テラが部屋から出ると、


『外へ行きたいなら、階段の方が楽ですよ。』


とドローンが言ったのが聞こえた。階段はエレベーターとは逆の方向にあった。

 外はやはり寒い。空は相変わらず真っ暗で、ビルの赤い光がとても目立つ。テラは、冷たい風で少し頭を冷やそうと、海の方へ行った。テラのいた建物から海はそこまで離れていなかった。

 黒い海を見ていた。白い波に乗って冷たい空気が潮のにおいと共に運ばれてきた。テラは、自分が厚着でないのを少し恨んだ。


『ここにずっといるつもりか?サビちゃうよ。』


カルはそう言うと、陸の方へ戻って行った。あぁ、寒い。ここに来た時はこんな気温の低さではなかったはずだ。指が痛い。テラは、困った。今になってやっとこの現状を受け入れることができた。コレからここでどれくらい過ごすのだろうか。家には帰れるのだろうか。ドローンの望みは叶えられるのだろうか。本当の望みはなんなのだろうか。テラは真っ黒い空を見上げた。テラはため息をついた。息が白い。どうやらここの空気は、あまり綺麗でないようだ。空に点々と白いものが見える。雪だ。テラはしばらく波打ち際をふらふら歩いた。ボートを探していた。



 …。それは突然現れた。テラが見つけたのは、見慣れたボートではなかった。その木製の小さなボートの中にには白い木綿の布がかかっていた。テラはおそるおそる、布をまくりあげた。人だ。髪の長い女性だった。テラはどうしたらいいのか分からない。とりあえず布ごとその人を抱きかかえ、ドローンのところへ持っていくことにした。五十キロ後半だろうか、かなり小柄な人だ。テラは、雪の中自分の足跡を早足で戻っていった。しばらくいくとカルに会った。


『なあ、テラ!あいつが言うにはさ、僕らはちゃんと表面を加工されてあるから錆びることはないんだって。杞憂だったぜ。』


カルは、いつも通り呑気に言う。しかし、テラの雪まみれのバサバサ頭と、テラの抱えた白い布を見て、カルは固まった。


『お前、何してたんだ。』


『人を拾った。生きてるかもしれない。カル、急いで戻るぞ。』


その人は決して重たくないが、走るとなると話は別だった。カルはテラが走るのに手こずっているのをみると、白い布を掴み上げ、少し上に引っ張ってくれた。かなり軽くなった。やっと地面が舗装されたものになると、砂と違い、ずっと走りやすかった。階段は、ほぼ滑り落ちるようだった。ただ狭い通路にこの人をぶつけないように気をつけた。ドローンを見つけた。


『おい、お前。人を拾ったんだ。どうにかして助けてくれないか。』


ドローンはテラをみると液晶の黒目がずっと小さくなって、ゆっくり布をとった。

 ベッドに寝かされたその人は。息をしていた。ドローン曰く、軽い脱水症状のだけだそうだ。幸い、ここにはいろんなものがあって、知識が有れば点滴のようなこともできた。ベッドを奪われたテラは中央の机の下ので寝た。寝心地は最悪だが、身体的、精神的疲労にはかなわなかった。あの人の安否がわかってから、倒れたままなのだ。カルはその机の上で寝た。



 この都市には朝という概念がない。その上ここは地下なので、生活リズムはどんどん狂いまくる。テラは、夢を見ていた。故郷の暖かい海で、釣りをしている夢だ。夕方まで変な四角い金属をたくさん釣って、疲れたのでそのまま寝た。夢の中で、朝が来た。目覚めようと、体を起こした時、ゴツンッ。テラは机に頭をぶつけた。テラは頭に耐えながらもここが薄暗いあの部屋だという事を思い出して、がっかりした。テラが頭を抑えてもがいていると。廊下を歩く足音が聞こえた。テラは机の下からでて、扉の方を見た。そこにいたのは、昨日見つけたあの人だった。再度の低い濃い緑の服は首の前で襟が交差しており、厚着だが、ダボダボでここでは少し寒そうだ。腰のところまである髪の毛は紐のようなもので束ねられ、蛇口の水が肩を流れているようだった。こんな格好は見たことがない。その人はテラと目があうと、あいさつらしきものをした。正直言うと何を言ったのか分からない。テラはが知る限りは、存在しない言語であった。

現在使われている言語は二つだけである。一つはテラにも馴染みのあるこの言語で、もう一つは海を挟んで南の大陸で使われているそうだ。言語学者や考古学者は、過去に数千もの言語があるとみており、今も確認できる大昔の書籍にその証拠がある。またこの世界は球体で、人の住む大陸は今も五つか六つあるはずだとの説があるが、この大陸の外ではいかなる電子機器も使うことができず、自分の目で確認しようとする人はいない。何千年も前は、なんの電子機器も存在しなかったはずなのに、今の人間は機械なしでは何もできなくなってしまったのだ。

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