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幽霊都市  作者: グルタミンさん
一章 
3/8

3 頼み事

何も分からないまま、小さな部屋に連れてこられたテラ

やって来たドローンは、カルと同じ一つ目のドローンだった。隣のカルよりもひとまわり大きかった。カルのドローンはまるい目をしているのに対して、そのドローンは四角い液晶の目だった。


『目を覚めたのですか』


そのドローンは少し変な話し方だった。


『よかった。よかった。私が2人を連れて来た。ここに。音声会話を許してください。通信はできないのです。』


そのドローンは、テラ達をここへ連れて来た経緯を説明した。しかし、あまりに言葉が不自然で理解できない上、このドローンの思考はテラの知らない言語で動いていたため、ドローンの意図をすべて読むことはできなかった。ドローン曰く、この都市のコンピューターシステムを壊して欲しいようではあるが、理由は曖昧であった。テラが何故なのかを尋ねても、何も言わない。ドローンは真面目に頼んでいるし、それは本当に心から望んでいることなのは確かだ。テラはこのドローンの考えを読むのに苦戦した。テラは話すうちに、このドローンの思考の中に少しの迷いを見つけた。本当はそんなこと頼みたくないのではないか。テラは返事に迷ったが、とりあえず表面上はシステムを破壊することに同意した。すると、ドローンはテラを(工場)に案内すると言った。テラはカルを連れて、そのドローンについて行った。

 テラ達が先ほどいた場所はその工場の地下であった。部屋を出ると暗い廊下があり、少し進んだ所にエレベーターがあった。エレベーターはガタガタいいながらも、動き出した。あまりにも揺れるので怖かった。カルは、テラの首のところの服を細い脚のようなもので掴んだ。AIも怖いのか。揺れが止まり、扉が開くと、目の前にはこの都市の赤い摩天楼が広がっていた。テラは窓に近づき、この景色を眺めた。ここはかなり高い。下を見てしまったテラは、まるで窓に蹴飛ばされたのかのように後ろに倒れた。カルと目が合った。


『こっちです。』


ドローンが声をかけてきた。右側を見てみると、確かにここは工場のようだった。

 天井はかなり高い。部屋自体もかなり広く、一番奥の機械は豆粒くらいに見えた。ドローンは、ある機械のもとへとテラを案内した。何の機械なんだろうか、とテラが思った時、


『合成』と


ドローンが言った。ドローンが、その機械のボタンに体当たりすると、機械が動き出した。しかし、何をしているのかはさっぱりだ。


『作るは時間かかる』


ドローンは言うと、どこかへ飛んでいった。テラは、機械を見つめていたので、気づかなかった。ドローンはすぐ戻ってきて、カルのもとへ近寄った。


『コピーだ。よこせ。』


ドローンはUSBっぽいものを取り出しカルの口に刺した。というか、口っぽい位置に差し口があったといえばいいのだろうか。カルのまるい液晶の目に(0%)と表示された。数字は、なかなか変わらない。


『まだ、少しか。』


ドローンは、機械の方を向いて言った。少しして、機械が止まり中からトレイにのった数十粒の薄茶色の塊が出てきた。豆粒のようだ。


『できた。食べなさい。』


ドローンが言った。テラは、トレイ上の豆粒のような、肉塊のような、何かを見つめた。コレを食べろだと?テラは人工食を食べたことがないわけではないが、ここまで食べ物らしくないものを見るのは初めてだった。ドローンはじっとこちらを見ている。食べないわけにもいかないので、テラはトレイをもって机を探すことにした。触れる場所はエレベーターの近くにあった。あの大きな窓沿いに、四角い机と丸い椅子が何個もあった。テラは試しに一粒食べてみた。悪くない。むしろかなり美味しいかもしれない。トレイ上の粒がなくなった時、テラは空腹を感じていた。何かを食べたことをきっかけに、お腹が空くなんて変な感じだ。テラはドローンにまだ食べ物はないかとたずねた。するとドローンは


『ここの機械、全部食べ物。色々ある。』


と言った。ここの機械全部?もしかしてここは合成食のレストランか何かなのだろうか。テラは近くの機械を数個選んで、ボタンを押してみることにした。

 テラがそんな感じで食事を終えた時、カルの目のパーセント表示は100になっていた。ドローンはUSBを引き抜き、側面にあいているエラみたいな所にさした。ドローンは、しばらく黙り込んだままだった。しかし、その思考の中に少しずつ、テラの馴染みある単語と文が出てくるようになった。


(なんだ、このタメ口は?私はこんな事を言っていたのか?)


ドローンは今までの発言の記憶をリピートしては後悔していた。かなり高速で。


『先の無礼はお許しください。あなた様の記憶から大雑把にですが、そちらの言語を学習いたしました。』


ドローンはカルの方を向いて突然、別人かのように話し始めた。


『移植の際、少しは学習したつもりではありましたが、おそらくは不十分だったでしょう。私が、最初に言った事をもう一度お伝えしますね。』


ドローンはテラを見た。


『私は、貴方のような(人間)がここへやってくるのをずっと待っていました。どうか私達を助けてください。』

テラが失踪してから、二日目が経とうとしている。テラのいた町ではそろそろ、騒ぎになってきた所だ。

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