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祝福の花吹雪をあなたに  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)
1章 異端審問官と護衛騎士

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11話 わたくしはお風呂に入りたいのです!

 ディーンが屋敷を探したところ、従僕用のシャツとズボンが出てきた。


『これに着替えておいでよ』

 とリンゼイが声をかけたところ、紫の瞳をつり上げて彼女は不満を漏らしたのだ。


『このような粗末な服は嫌ですっ』

 おまけに、服に着替える前に、風呂に入りたいと言い始めた。


『今日はもういいじゃん。風呂、手間かかるんだよ。こっちの世界、電気無いからさぁ』

 うんざりするようにリンゼイは言ったが、セトは折れない。


『デンキだかなんだか分かりませんが、わたくしはお風呂に入りたいのですっ』


 半泣きになってセトは訴えるが、リンゼイは無視だ。

 さっさと夕飯作りに移行してしまう。セトはその後ろをついて回り、『お風呂、お風呂』と言いつのる。その姿を見て、ディーンはだんだん気の毒になってきた。


(そりゃそうだよな。背中はあんなだし、泣いたり叫んだりで顔や首も汚れただろうし……)

 ついつい同情し、屋敷の中にバスタブがあるのをリンゼイに告げる。


『なんでそんな無駄なモノ見つけるかなぁ!』

 憤懣やるかたないと言いたげにリンゼイは怒鳴りつけたが、セトは小躍りした。


『僕は手伝わないからね』


 断言するリンゼイに、『火を貸してくれるだけで良いから』と拝み倒し、ディーンは調理場の竈に大鍋をしかける。燃えるかどうか心配したが、薪は湿気ていないらしい。リンゼイに火を任せて、自分は井戸から調理場に桶でもって水を大量に運ぶ。


『自分のことなんだから、手伝いなさいっ』


 リンゼイは、ぼんやりと作業を見ていたセトをしかりつけ、水桶を持たせたが、井戸から調理場に運ぶことがまず出来ない。


 桶を持ったまま、数歩歩いてはよろめき、体勢を整えるため、立ち止まったら手が痛くなって地面に下ろす。ヒリヒリする掌に息を吹きかけてまた桶の持ち手に指をかけている間に、ディーンは風呂に必要な水を運び終え、今度はバスタブまで沸いた湯を桶に移して移動する。


『なに、ぼうっとしてんのっ! ほらっ!』


 リンゼイに急かされ、今度は持ち物を(たらい)に変えた。これならば、軽くて大丈夫だろう、とセト自身も思ったのだろうが、運ぶまでに半分以上を廊下にこぼす。


『この、ポンコツがっ』


 リンゼイが地団駄踏んで怒鳴りつけ、セトは、ほぼ空っぽになった盥を抱えてしょんぼりと立ちすくんでいた。


『ほら、準備が出来たから。風呂に入っておいで』


 見かねてディーンが声をかけ、手ぬぐいと着替え一式を渡してバスタブまで誘導したのが、半時程前だ。


 着替えは結局、ディーンのシャツとズボンを選んだ。屋敷中の着替えでは納得せず、仕方なくディーンが『俺のでよければ……』と差し出したのだ。


 素材的には多分一番彼女の目に敵うのだろうが、男物である上に、規格が全く違う。声をかけたものの、納得するとは思わなかったが、『これがいいです』と彼女は喜々としてディーンの着替えを選択した。


 どうやら彼女がこだわったのは素材だったらしい。




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