表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

イタチの短編小説

ユニットバスの恋人たち.jp

作者: 板近 代

 狭いユニットバス。


 背の高いあなたが髪を洗うと、泡が私の顔に飛ぶ。あなたは私に背を向けるように言うけれど、私はその時間が大嫌い。あなたの帰りを、待っていた時のような気持ちになるから。


 アリスシリーズの新作が作られているという噂がある。


 当然、作者はルイス・キャロルではない。でも近々人類は、ルイス・キャロルに類似した人工知能を生み出すという。ソレにより書かれた新作を、正当な続編と認めるか認めないかは私次第なのだろう。


「なんてこった、俺は昨日娘にうさぎを買ってやったばかりだぞ! ちくしょう、初めてのペットなのに!」


 卑屈という言葉は理屈という言葉から産まれた…………なんていう嘘を思いついたのは、もう二ヶ月も前のこと。もしかすると、その嘘が、真実かもしれない可能性(・・・)を確かめることもなく、私は今日まで過ごしてきた。


「バベルを建てたから言葉をバラバラにされたわけじゃあない。言葉をバラバラにしてもらうために、建てたんだよあれは。人は神よりずる賢い。そもそも神には言葉という概念がないからね、僕たちの祖先の目論見を見抜くことはできなかったんだよ」


 戦争はビジネスだ。

 戦争はビジネスだ。

 戦争はビジネスなんだってば。


 そんなことを声高らかに主張する人もいるけれど、私は――絶対に――違うと思う。人の暴力は、そんなに整ったものではない。人の本質は、そんなにデジタルなものではない。そもそも、貨幣感覚が生まれる前からソンザイする暴力が、金のためだけにソンザイできるわけがないのだと、私は主張したい。


 おそろいの歯ブラシは、色だけが違い固さは同じ。でも、いつも私の歯ブラシのほうが早く傷んでしまう。私の生き方は、あなたにくらべると丁寧ではないから、そうなってしまうのだろう。


 人生に意味はある。

 愛に意味はある。

 人に意味はある。

 私に、意味なんてない。


※以上を()って、私が無意味であることの証明とする


 ならば、私自身の存在は、あなただけが肯定できる。だから私は自分を否定しなくなって、猫の鳴きまねがとてもうまくなりました。


 愛しています。ありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  不思議な雰囲気が好みです。  主人公が思い描いた事を並べて書いてあるだけで、起承転結など無縁な作品の様なのに、何故かまとまっていると思いました。  ハブラシのとこが特に好きです。  あ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ