もしも、僕が主人公なら
もしも、僕が主人公なら君の笑顔を簡単に守れるのだろうか。
僕はいつでも君に笑顔でいてほしい。
だから君の言うことはいつも聞くようにしている。
そうすれば君は笑う。
「ありがとう」
そう言って。
「ーーーくん!」
名前を呼ばれる。
どうしたの?
大丈夫?
なにか困ったことあった?
そう聞いたら君は余程辛いことがあったのか、僕を殴る。
「痛そうだね。大丈夫?でも、私は君のおかげでスッキリしたよ。ありがとう」
そう言って君は僕に笑顔を向ける。
ああ、この笑顔を見れるなら僕はなんだってする。
ある日、君は僕に怒った。
僕が前日従兄弟の葬式でいなかったからだ。
「ごめんね」
謝るけど君の怒りは収まらない。
「どうしたら許してくれる?」
少しでも笑顔でいてほしい。
そのためならなんでもするよ。
「死んでよ」
思わぬ言葉に僕は目を見開く。
「なに?出来ないの?」
「死んだら、許してくれるの?」
再確認をする。
本当にそれで許してくれるなら。
「勿論」
君は頷く。
本当に?
良かった。
じゃあ、死んだら君は笑顔になるんだね。
丁度この部屋には窓がある。
ここも8階だから生きられる可能性は極めて低いだろう。
でも、待って。
最後に、これだけ言わせて。
「愛してるよ」
僕は窓から飛び降りる。
全身に痛みが走る。
この温かい液体は血だ。
最後の力を振り絞って8階の窓を見る。
『ありがとう』
声は聞こえなかったけど、口の形で伝わった。
そう言ってから君は満面の笑みを浮かべる。
ああ、良かった。
笑顔になった。
僕はなんて幸せ者だろう。