エンジェルライフ最終巻3/9愛車ロッシとお別れして日本に帰る。到着予定日は台風接近の予報!どうする?カルロに近づく怪しい女・・慌てるカルロ!
今年やるべき牧場の修理は何とか終わった。愛着の湧いてきたキャンピングカーのロッシでの生活も終わり寂しくなる。エライザとカルロは、ベニスの街を散歩する。
エライザ:カルロの事、まだ何も知らないから普通の街を案内して! 衣料品や生活雑貨の街を見て回った。少しだけ飲んでいこうと、エライザが興味を持って入った店は、・・・怪しい女の影、慌てるカルロ!
エンジェルライフ最終巻3/9愛車ロッシとお別れして日本に帰る。到着予定日は台風接近の予報!どうする?
トレヴィーゾの街で買ってきた杉板や石膏ボード、合板などで牧場の物置小屋を
修理している。物置小屋と言っても牧草の刈り取り用のトラクターや重機が、
入っているので自宅より屋根が高く建物も大きい。柱も腐ってきているので、
全部壊して建て直した方が早いが費用が掛かる。それと、カルロが一人で修理
するには、建物が残っている方がやりやすい。新しい柱を古い柱に添わせ、
古い柱を抜く。その繰り返しですべての柱を交換したら屋根に新しい材料を上
から張っていく。このやり方ならカルロ一人で修理ができる。修理には、1か月
は掛かりそうだ。7月に入り雨が少なくなった。代わりに晴れて暑い。日本の
ような蒸し暑さはないが空気が澄んで直射日光が刺さるように痛い。イタリア人
は紫外線に弱くカルロの顔は、真っ赤になった。それでも何とか物置小屋も
修理が終わり使えるようになった。
エライザ:ここは、塗装はしないの?
カルロ:しないよ塗料のにおいは動物が嫌うから。
エライザ:そういえば牧場にするんだよね。牛舎とか動物の家は?
カルロ:来年かな・・ヤギや羊を最初からたくさん飼えないから建物も少しづつ
増やしていく。この小屋の東側に風をしのげるように伸ばしていくんだ。最初は
5mぐらいヤギ4頭羊4頭うまくいけば1年で倍になる。増えていく頭数に合わ
せて建物も伸ばしていくんだ。牧草の方は一気に生えるから刈り取って余った分
は売るんだ。親戚に任していた間は、親戚が牧草だけ刈り取って売っていたんだ。
だから動物もいないし建物も無い。
エライザは、カルロがここへきてやっていることは、カルロが考えてやっている
わけではなくて、やるべきことが決まっていてそれを天気や状況に合わせて調整
している。新しい建築資材も使うけれど基本的な部分は、すべて決まっている。
そう考えると、カルメンがやっていることも同じだ。
100年以上前から同じことを淡々と、黙々と毎日続けていく。
カルメンが、”私は、あの牧場に帰らないといけない”と、言っていた意味が
エライザにも分かってきた。
なんだかんだで、やっぱり3か月は掛かってしまった。来年もまた傷んだところ
を直し新しく畜舎を作り、再来年も修理をして家畜を飼いやっと牧場になる。
やっぱり3年掛かるのだ。明日で9月になる。エライザの出産予定日まで1か月
ちょっととなって、日本へ帰る準備に入った。予定していたことが全部終わった
わけではないが、このまま住むわけではないので焦ることはない。持ってきた
荷物や送った荷物で帰りに必要なもの以外は置いていく、缶詰や乾物、ワイン
などは貯蔵できる。冷凍食品などは、帰宅日に合わせて消費する。9月15日
の飛行機を予約した。今回はエライザの体調も考慮して、成田までの直行便で
帰る。ベニスから北回りで、アラスカで給油して成田、そのまま名古屋まで行く
大分お腹が大きくなってきたエライザの席を2席取って4人分のチケットを予約
した。
明日、10日には、牧場を出て、トレヴィーゾ、そしてベニスへ。天候を見て
14,15,16のいずれかで帰国予定だ。何もなければ、15日の朝の便を
予定している。結局3人は、あの雨の日、以外は、キャンピングカーで寝泊まり
した。使い慣れてきてこのキャンピングカーを離れるのもイタリアを離れるぐらい
寂しく感じていた。
エライザ:今度来た時、この車が使えるか、わからないよね。
カルロ:そうだね。誰かが買ってしまうかもしれないし、
人気のカル・ロッシの車だからね。
エライザ:買うとしたらいくらぐらいなのかな
カルロ:古いとはいえ・・・1千万円ぐらいかな・・・
エライザ:それくらいなら買っちゃう?
カルロ:それは、やめた方が良い。イタリアから運べないし、
これから先部品が交換できなくなる。
エライザ:そうか・・・お別れか・・・ロッシ!バイバイ
エライザは車に勝手にロッシと名前を付けて呼ぶようになっていた。
ほかのふたりも影響された。
翌朝少し遅めに朝食を済ませ出発の準備が整った。
家の鍵を閉め電気を止めて、
カルロ:みんなロッシに乗って!忘れ物は無いかな!
カルロがエンジンをかける。ギュルルル・・gyルルル・・
gyルルr エンジンが掛からない。
エライザ:ロッシ!壊れちゃっても良いよ! 別れたくないのか!
ギュルル、グウォーン エンジンがかかった。
エライザ:なんだーーお別れする気か!!
あんまり走ってなかったからバッテリーが弱くなっていたようだ。
ガタゴト道を下り写真撮影のガソリンスタンドにクラクションで合図をした。
カルロ:(パーン・・パーン)
スタンドの店員:ありがとう!また来年!
1時間半さまよい歩いたドラッグストアーを横目にベニスに向かって走り出した。
寄り道もせず30分ほどでベニスの街に入る。車を借りたレンタカー屋に行くと
友達が待っていた。
店員:お疲れもう帰るんだって、車の調子はどうだった?
カルロ:今朝、エンジンのかかりが悪かったが、ほとんど問題なし。助かったよ。
店員:それは、良かった。今度はいつ来るの?
カルロ:来年の予定だけど・・どうなるかわからないな。ちなみに、
この車のこの後の予定は?
店員:中国人に買われて来週には中国まで走っていく。
壊れずに中国までいけば中国人が買う。
カルロ:壊れたら?
店員:そこで直せればいいが部品があればいいけどね。
カルロ:いくらで売れたの?
店員:5500万円だって、オークションでイタリア人同士が競ってたんだけど・・
3300,3400そしたら一発で5500
みんなどっちらけでオークション終了!
結局、この車をイタリアには残せなかった。
カルロ:そういう時代だね。ありがとう!
店員:じゃあ、また!
3か月前の安ホテルにまた泊まる。
ここから歩いてすぐだ。荷物を預けて昼食に出た。
カルロ:何にも変わってないな・・
カルメン:観光客も落ち着いてきたみたいね。
カルロ:コロナが明けたときは、すごい人だったからね。
それで、亡くなった人も多かった。
エライザ:コロナになって客足も無くなってもお店は潰れなかったの?
カルロ:この辺の店には、十分な補助金が政府から出ていたからね。
店が無くなったら観光イメージが悪くなるから・・
カルロが、いつも使っている店で昼食を取る。
カルロ:2,3日ベニスに居られるから何しようか・・観光にでも行く?
エライザ:遠くに観光に行くより・・カルロが暮らしたこの街をもっと知りたい。
カルロ:そういわれても・・
エライザ:スーパーだったり、床屋さんとか・・よく行った洋服店・・
生活していくための普通の店を見てみたい。
カルロ:買うわけでもないのに?
エライザ:見るだけでいいの。わたし、カルロのこと知らないことばかりだから。
カルメン:ホテルが近いから私は一人で、部屋に帰る。二人で行きなさい。
旧市内の細い路地を抜けて二人で歩いて行った。建物が途切れて広場に出る。
食品を扱っている店が並んでいた。オープンスペースで、食事ができる店もある。
トルコ風のケバブを売っている屋台もあれば、ドイツ風のソーセージを売っている
店も・・
カルロ:イタリアは、地中海に突き出て、アフリカに近いから多くのアフリカの
難民が船で漂着する。チュニジアの政変の時は、たくさんのアフリカ系難民が
ベニスにも押し寄せたんだ。その多くは、イタリアを出てヨーロッパの他の国に
分散して受け入れられたんだけど、イタリア人の親戚がいる人などは、ベニスに
残る人がいてこの先にはそういう人の住む場所がある。治安も悪くなるので、
このマーケットぐらいまでしか来ない方がいいよ。
エライザ:華やかなベニスの街の裏側か・・ なんか食べようよ!
カルロ:お昼食べたばっかりだよ・・・
エライザ:やっぱり、ケバブサンドか!
こぼれそうになる野菜を手で受けながらケバブサンドを食べながら街を戻る。
イスラム系の洋服屋があった。女性用のベールもたくさん売っている。黒い色が
中心のベールだが、カラフルな物の方が多い。黒いベールに顔を隠した、観光客
らしい若い女性が楽しそうにベールを選んでいる。
カルロ:イスラム教の戒律の厳しい民族では、色鮮やかなベールを持っている
だけでも罰せられる民族もあるので、旅行に来て、旅先でカラフルな
ベールを買っておしゃれを楽しむんだ。帰りは、古着屋でベールを
売って帰る。
エライザ:おしゃれしたいもんね。私も一時期ベールに凝ってた。黒一色だけど、
いろんな種類があって巻き方も結構難しい。
カルロ:ベールに隠していれば、化粧もしなくていいんだろう。
エライザ:どうかなあ、女性は、隠れていてもおしゃれしたいと思うけど・・
カルロ:下着のおしゃれといっしょ?
エライザ:どこ見てるのよ!
カルロ:べつに、見てないって・・隣の店は、イスラムのグッズの店だよ。
メッカに向かってお祈りするときのマット、コーランやブックスタンド、
メッカの方角を示す方位磁石のキブラコンパスとか僕らが見ても使い方
が分からないものもいっぱいあるよ。子供のころは、いろいろ聞いても
叱られないで教えてくれたからこの辺で、よく遊んでた。
観光客用の店や地元の人が利用している店など久しぶりに二人でぶらぶらと散歩
した。エライザは、大きくなってきたお腹で長く歩いたの少し疲れた。ホテルで
仮眠することにすることにした。エライザをホテルに返してカルロは、自分の
見上げ物屋が有った通りに行ってみた。自分の店はたたんで友達が靴屋をやっ
ている。
カルロ:久しぶり元気?
靴屋:おーっ、帰ってきたって聞いたよいつまでいるの?
カルロ:明後日、日本に帰る。天候次第かな・・日本に台風が近づいてるから・・
靴屋:結婚したんだって?日本に住むの?
カルロ:結婚した。日本に住もうか考えてる。
靴屋:変わらず夜は、いつののところで飲んでるよ。
カルロは、笑って返した。
近くの友達に挨拶して、ホテルに帰った。カルロもホテルでのんびり過ごし修理
で疲れた体を休めた。次の日は雨、ホテルでテレビを見たり、本を読んだりして
過ごした。カルロが携帯で天気予報を見ている。
エライザ:台風来そう?
カルロ:15日は、成田が暴風圏内に入る予報に変わったね。14日の便だと南回り
になって台風の上を飛んでくるルートだから大分迂回して、長い飛行になるね。
同じ直行便は、13日にしかないけど取れるかな・・
エライザ:検索してみようか
二人で、いろんな航空会社のサイトを検索してみた。日にちが近くなると席が
空いてくる場合もある。台風などが近づくと予定を変える人が多く、頻繁に
予約状況が変わる。
エライザ:全日空は、満席だね。
カルロ:北回りは、どこも一杯だ。15日の予定通りにして待つしかないか・・・
台風がそれるかもしれないから。
夜になって、雨も上がった。一日、ホテルに居て体は休まったが、外の空気も
吸いたい。三人で食事に出る。カルメンは、何が食べたい。
カルメン:春さんの鰆の西京焼き!
エライザ:ベニスで、あるかな?(笑)
ベニスにも日本食レストランは、たくさんあるが、どこも日系人やイタリア人が
料理している日本風レストランがほとんどで、本格的な京都料理の店はない。
タイ料理の店があった。
エライザ:ここは、? タイ料理は、食べやすいよ。
あんまり辛くないし脂っこくない。
カルメン:いいわよ、入ってみよ!
タイ料理屋に入った。余りこんでなくて、東南アジア系の家族が一組食事を
していた。エライザが、英語のメニューを見て何品か頼んだ。
ソムタムという青パパイヤのサラダ、春雨のサラダ、ヤムウンセン、
パクチーが入っている。マッサマンカレーに、定番のトムヤムクン、
エライザは、タイやベトナムで医療ボランティアをしていた時期があり
タイ料理には詳しい。
エライザ:サラダは、食べやすいと思うよ
カルメン:そうね。いつも食べているものよりドレッシングが甘い感じかな・・
カルロ:この鶏肉のカレーは、トルコ料理に似てるね。
カルメン:トムヤムクンは、聞いたことあるわ。少しここにちょうだい。
カルメンも珍しそうにタイ料理を楽しんだ。
カルメン:あなたたちは、1日中ホテルにいたからもう少し街に居たいでしょう。
わたしは、帰っているから。
カルメンは、一人でホテルに帰った。
エライザ:ちょっと、だけ・・・いい
カルロ:ほんとにちょっとだけ?
エライザは、久しぶりに飲みに行きたかった。二人で街をぶらぶらしながら
ベニスの水路脇を歩いた。
エライザ:友達とかに会ってきた?
カルロ:靴屋に会いに行ってきた。あと、見上げ物屋の通りで・・・
みんな変わってないよ。
エライザ:ここいいじゃん!ちょっと怪しげ・・・
カルロ:ここは・・・あっちに・・・
エライザ…なんで、ここ怪しげだって・・・入ってみよ!
カルロ:そこは・・・
エライザは、さっさと、店に入っていった。薄暗い店内、イケメンの中年男性が
カウンターにいた。店内のボックス席に何組か飲んでいた。
カウンターの中から男が声をかけた。
中年:いらっしゃい。観光ですか?
エライザ:そんなとこかな・・スリーバーレルある?
中年:スリーバーレル!無いけど・・よくそんな酒知ってるね!
カルロ:エライザ!もっといい店・・・
中年:へーっ、カルロか!久しぶりだな。お前の女か・・・
カルロ:あぁっ、、久しぶりです。まあそんなところで・・
エライザ:カルロ、知り合いだったの!いいじゃん、じゃあのもう!
中年:ジャックダニエルならある。
エライザ:ロック、ダブルで
中年:強そうだね。お姉ちゃん
エライザ:強そうじゃなくて、強い!それにお姉ちゃんじゃなくて、ママです。
エライザは、お腹をさすった。
中年:いやそれは、失礼 妊婦がジャックダニエル、ダブルか・・・
まいったな・・カルロ!そういうことか?
カルロ:そうじゃなくて、結婚してる。妻のエライザ エライザ、この人は、
バレンティーノ・ロッシ 通称 カル!
エライザ:バレンティーノが何でカルなの? (カル・ロッシか!)ああそうか
ロッシでいいじゃん。
カル:ロッシじゃ恐れ多くてとんでもない。
エライザ:それで、カル・ロッシのカルか
カルロ:カルでも普通は使えないけど・・この人は、本物の公認だから。
エライザ、実は僕もこの店で昔、働いていて
カルは、先輩バーテンダー。今は、この店を任されてる。
カル:ほんものロッシがこの店に飲みに来て、二人もロッシがいると、
呼びにくいからお前がロッシでいいって言われて・・
ロッシは恐れ多いって言ったらバレンティーノは言いにくいから、
カルにしろって、酔っ払いの冗談から・・
エライザ:カルもう一杯 イタリアのウイスキーってあるの。
カルロ:イタリアには、ウイスキーメイカーは、ないよ。
カル:カルロ!それが、有るんだな・・最近有名になってきた。
2010年操業だから最近のメーカーだ。何とか飲める味になってきた。
ママさんいってみるかい。
エライザ:いいね!ロック、シングルで・・
カルが、ボーリングのピンのような変わったボトルを何本かカウンターに並べた。
カル:こっちが、プーニ PUNIのソーレ SOLE、
こっちがヴィーナ VINAどちらもロック、シングル。まあ講釈はなしで・・
飲んでみて・・カルロも飲むか? いや、僕はワインで・
エライザ:じゃあこっちの色が薄い方から・・んうん・・なるほど、
まだ、若い感じ・・でも、柑橘系も感じられて水割りにおすすめかな
・・こっちは・・オッ、飲む前に香りがいいですね。
・・んうーん・・本物だよ。深いね。
カル:ママさん!なかなかの舌だね。大したもんだ。
エライザ:ママさんはやめてよエライザって呼んで。
カル:エライザはなんで、そんなに酒が飲めるようになったんだ?
エライザ:そんなん知らないよ。ただ、飲めるだけ・・
飲めるから飲んでたら分かるようになって飲んじゃって・・
カルロ:エライザ、もうこれで最後ににして帰ろう・・・
エライザ:分かった・・ママになるしね。
後ろから女がカルロに抱き着いてきた。
ローズ:カルロ、探してたのに・・どこ行ってたのよ。
カル:ローズ、からむな向こうで飲んでろ!
客:ローズ!どこ行ってんだよ!
お前の酒は、ここにあるだろう・・
カル:(めんどくさくなってきたな・・)




