それは唐突に…。
俺は魔法剣士ゼニス。
熱血漢の男友達と、二人の女性メンバーと、とあるパーティーを組んでいたんだが…。
「悪いが。キミには今日限りでパーティーをやめてもらいたい」
そう言われたのは、いつものようにクエストを終えて冒険者ギルドに報告に向かった時のことだった。
「えっ?なに急に?どしたの?」
なるたけ軽い感じでパーティーのリーダーに聞いてみる。
もしかしたら聞き間違いなのかも知れないからだ。
「実を言うと…キミがパーティーにいることに、とある問題があると、俺たちは気づいた。気づいてしまったんだ…」
神妙な表情で、申し訳なさそうにそう言うリーダー。
「このままずっとキミがこのパーティーにいると…」
「いると…なんだよ?」
リーダーは少し口籠るが、その数秒後に意を決したように俺に告げる。
「俺たちの物語の山場が無いんだ!!」
やまばっ!?
「キミの支援魔法は最高さ。正直助かってるし、本当にありがたい!!」
「だったらなんの問題も…」
「だから問題なんだ!!」
俺の言葉を遮るように叫ぶリーダー。
え?コイツこんなヤツだったっけ?コワ〜…。
「もし俺たちの冒険が物語にまとめられても見ろ!!『魔法剣士の支援魔法のおかげで全員無傷で冒険を終えました』なんて、なんの盛り上がりもないでしょうが!!」
「いや、そこは多少後世の人たちがなんかうまい具合に脚色っていうか、なんか苦戦させてくれたりなんか…」
「ねぇよ!!何故なら俺は嘘がつけないからだ!!」
あぁうん。バカ真面目だもんねキミ。
そして、他のパーティーメンバー二人はメニューを見てどれにしようかなぁ〜なんて呑気なことをしている。
まったく…美少女じゃなかったら今飲んでるお茶をコッソリ飲める程度に熱くしてやるとこだよ全く…。
「大丈夫!!キミが居なくなったからって、俺たちはキミの悪い噂を流したり、後々になって逆恨みしたりなんてしないから!!」
さっきまでとは打って変わっていい笑顔を向けてくるんだけど。
俺が人間不信になったらほぼ百パーコイツらのせいなんだけど。
あとあの二人、この状況でウェイトレスさんに注文してる。
え、とりあえずこっからここまで全部?
どっちもガワのいい美少女じゃなかったらこっそり足踏んでたよ?軽く。
「いや、何を根拠にそんなこと言ってるのさ…だいたい、人の心なんて正直その時の気分とか状態によりけりじゃ無い?」
「だからほらッッッ!!魔法契約書も用意してあるんだ」
俺のその質問を待ってましたと言わんばかりにテーブルにそっと置かれるのはとある文書。
俺はそれを手に取って確認する。
そろそろ注文した品が届いてる。
アレだけの量を一度に運べるとかすごいなぁウェイトレスさん。
「へ?なんでそんな仕事早い…ってコレ!!S級契約書じゃん!?」
「そう。ここに記された契約を破った側はこの世の全ての苦痛を味わったのちにゴミクズのように死ぬという、あのS級契約書だ」
隣の二人もウンウンって頷くなよ。
そして話に加わるんならせめてその骨付き肉から手を離そうね?
美少女じゃなかったらその肉の食える程度にパサパサしたところを三倍にしてやるところだよまったく…。
「うんまぁ…キミら全員の名前が署名されていることからキミらの本気度合いはわかったけどもさぁ…」
改めて差し出された契約書をまじまじと見る。
「けど、人間って普通安定する方を望むと思うんだけども…どんだけスリルに命懸けなわけ?」
「馬鹿野郎ッッッ!!そんなんで燃えるような旅ができるか!!」
「じゃあ今後はこっちもなんかいい感じに加減するし…」
「ダメだ!!キミの本気の支援魔法を知ってる分、なんかモヤモヤするからっ!!」
「うん。キミ自分が今どんだけメチャクチャなこといってるかわかってる?」
めんどくせぇなぁコイツ。
っていうか、今にして思うと支援魔法しか使うなって言ってたのアレ、自分達の活躍の場が欲しかったってだけか?
いや、コイツに限ってそれは無いかぁ…。
「無論、このパーティーでキミが一番強いのは知っている。戦闘センスも魔法の才能だって頭一つ抜け出ていると言っても過言では無い!!」
グッと握り拳を作った熱弁するリーダー。
他の二人はテーブルに並んだ料理をむっしゃむっしゃと食べている。
もう興味無くなったのかなぁ?
「だから…だからこそッ!!俺たちはキミから…卒業しなければならないッッッ!!」
なまじ褒めるニュアンスなため、なかなか否定しづらい。
「うん、パーティーから追い出すのを体よく卒業っていうのやめな?」
あとあの二人はデザートまで頼んでるんだけど。
まったく、美少女じゃなかったら………。
こうして俺は、とある冒険者パーティーから除名されることとなったのだった…。
あっ、活動資金の半分を退職金代わりに貰ったから、そこは良かったかなぁ…。