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横田広域警察24時  作者: 魚河岸ボブ
第1章 転生したらバイオレンスな法強制執行者になりました
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Day Off ー 千夜と私の休日 ー

「うーん…」

 チャーちゃんが唸っています。猫だった頃はよく謎の雄叫びを上げていたので、唸り声など可愛いものです。が、気になるな。


「チャーちゃん、どうした?」

「姉ちゃん、じゃない兄ちゃん…チャーは納得がいかない」

 何だ?思春期特有のモヤモヤか?


「クラスメイトのギャルがいるんだけど、チャーとばかり遊びたがってくるから正直うざい。他の人と遊べばいいのに」

 ほう、チャーちゃんにしつこく絡む女子がいるとな!なんと尊い…いや、遊び好きなチャーちゃんが嫌がるなんて余程のことだ。詳しく聞いてみよう。


「どんな遊びしてるの?」

(転生前)にもっちょんと遊んでた時みたいに、毛を引っ張ったり物をぶつけてきたり、パンチしてきたりだよ。チャーはせっかく人間になったんだからもっと人間らしい遊びをしたいのに、あの子達いっつも『校舎の裏で待ってるから、早く来て遊ぼうよ』ってうるさいんだ」

 …ん?なんかおかしくないそれ??


「どの技ももっちょんよりヘタクソで面白くないから、途中でチャーが『もうやめてよ』って言うと、『生意気なアンタがお願い?へぇー』ってクスクス笑ってどっかに行くんだよ。もう全っ然意味わかんない!遊びたいって言ったりいきなり笑ってどっか行ったり。ギャルってあんな遊びが楽しいのかな?」

 チャーちゃんがムスっとしている横で、遊び方を褒められたもっちょんが尻尾をバッタンバッタンさせている。いや、猫同士の遊びの話だからね?今ドヤ顔になっても仕方ないよ?


 しかし、人間としての経験が未熟なチャーちゃんには、基本的なことをしっかり教えてあげないといけなかったようだ。私、反省orz…


「チャーちゃん、それってイジメだよ」

「うそ?!チャーはいじめられてたの?あれって遊びじゃないの?!」

 もっちょんが毛繕いの後で口を開いた。

「チャーよ、人間と猫の遊び方は違う。それは人間が弱者を屈服させ、優越感に浸るための浅薄で愚かな行為だ」

 うーん、言うねぇ。


「ちょっと!もっちょん知ってたら教えてよ!チャーが弱いって思われてるってことじゃん!」

 うーむ…チャーちゃんは元々体の弱い子で、最近漸く回復して学校に通えるようになったって設定なんだよな。

 色白もやしっ子を予想してたのに、天然赤毛の天真爛漫娘がやって来たからギャルは面白くない、ってところか。…それにチャーちゃん、今月だけでもラブレター5通貰ってるしな。妬みも入ってるぞ、きっと。


 ちょっとギャル子達にお灸を据えたくなってきた。うちのチャーをイジメた罰を受けるがいい!本人はまるで無自覚だったけど。


「明日は休みだから、チャーちゃんのことイジメてる子達がどんな子か見てみようか」

「さすが兄ちゃん、お願いします!」


翌日、下校時間近くになって学校を訪れた私は、ギャル子3人組に付きまとわれているチャーちゃんを発見した。近づくにつれ、声もよく聞こえてくる。


「やめてよー、今日はお兄ちゃんと帰るんだから!」

「何よアンタ、自分じゃ何もできないから兄弟に助けてもらうの?だっさ!」

「どうせお前みたいな変な奴の兄貴なんて変人なんでしょ!キモいわー」

「ちょっと見た目がいいからって調子乗ってんじゃないわよ、ほんと目障りなんだから」


 思った以上にムカつくな、あれは。俺のM10で蜂の巣にしてやってもいいんだぜ…?

 しかしここはグッとこらえて、校門を出たところでチャーちゃんとギャル御一行様に肉薄する。


「やぁ、みんな。うちの(チャー)に詰め寄ってどうしたんだい?」

 知ってるぞ、チャーちゃんの挑発に乗ってネチネチと仕返ししてたんだろ?ふっふっふ、私とチャーちゃんの作戦にハマりやがって。

「あ?何よ…って」

「え、ウソ…!?」

「ヤッバ、何コレ」


 ゲンナリしたチャーちゃんと対照的に、ギャル子達は一瞬ギクリとした後、私の顔を見て硬直している。

 というか、顔面が紅潮している。


「こ、これはその…あの…」

「も、もしかしてあなたはチヤ…加藤さんの」

「違うんです!アタシは何もしてなくて!」


 おうおう、焦ってるなギャル子達よ。

「妹は体があまり強くないし、人見知りでね。あまりいじめないでくれないかな」


「「「…」」」


「そんなに遊びたいなら、私が代わりに(・・・・・・)遊び相手(・・・・)になってもいいんだよ(・・・・・・・・・・)?」


 決まったー!子供のイジメに無慈悲な大人の介入アタック!これで効かなければ、とどめは『ドッキリ!お兄ちゃんは警察官!逮捕しちゃうぞ☆』作戦だ!

 …って、アレ?なんかギャル子達がトロ目でこっちを見てるぞ…。

「い、いいんですか?」

「チヤのお兄さん、反則じゃん…」

「私、落ちちゃった」


 なんか、思ってたのと違う。

 

 とりあえずチャーちゃんが嫌がっていることを伝えるとちゃんと謝罪したし、これからはイジメたりしないと約束してくれた。話を聞いてみると、やはりチャーちゃんの人気が羨ましくてイジメたくなったらしい。そういうのダサいから二度とするなよ、ギャル子達よ。


「じゃあ、千夜と私は帰るから。君達も帰り道気をつけて」

「じゃあね、もう絡んでこないでね」

「「「はーい」」」


 結局、ギャル子達に熱いお灸を据えることなく、女神に貰ったイケメンフェイスで解決することができた。まあ、終わりよければ全てよし、かな?


 後日、チャーちゃんに聞いたところによると、ギャル子達に私のことを根掘り葉掘り聞かれた後「お兄さんの連絡先を教えろ」とか「家に遊びに行っていいか」とか、とにかく猛烈なアプローチが続いて困っているらしい。

「イジメはなくなったけと、相変わらずうざい」

とのことである。


「でもあのギャル子達、借りてきた猫みたいに大人しくなって面白かったよね」

と適当に誤魔化すと、

「あんなメスの匂いプンプンさせてブリッ子するような連中と猫を一緒にしないでくれる?!」

とチャーちゃんに怒られた。


 もっちょんはこの手の話には興味がないらしく、欠伸してウトウトしていた。よく考えたら、小さい頃に去勢されてるから、色恋沙汰とは無縁なのは当然なのか。

 なんかごめんよ、もっちょん。


 とりあえずこんな感じで、うちのネコ様達とは毎日楽しく生活している。

 仕事はともかく、プライベートは楽しみがないとね。

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