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女子の自己紹介 

 全滅先生、ゲルト・フィンケがぐるっと教室を見渡している。

「ヨーシ、今度はみんなに自己紹介してもらいまーす!」


 フィンケ先生、最前列の女子に目が止まった。


「それじゃ君、お願い出来るかな?」

「私ですか?」


 指名された小柄な女子は表情を引き攣らせている。それはあたかもフィンケ先生に怯えているように見える。


「はい!お願いします」

「えと、アンナ・コールです。治癒魔法の使い手に成りたくて入所しました。よろしくお願いします」


 パチパチ、拍手を皆が送るが一番音が大きいのは予想通りのフィンケ先生。


「うん、ありがとう!でも、アンナ!もう少し踏み込んでみようか!」

「え?どうしたら良い?んですか?」


 アンナと名乗った栗色の髪をショートボブにした小柄な少女は、オドオドしながら聞いた。


「入所の動機を言う事はとっても良かったよ!でも、もう一歩踏み込んで、アンナがどういう人なのか、みんなに分かってもらう場にして欲しいんだよ!」


 意外だ!フィンケ先生が教師らしく見える。


「じゃあ改めて、アンナ・コールです」

「もっとボリュームを上げて行こう!これはチャンスなんだよ!アンナ自身のプレゼンをするんだ!」


「アンナ・コールです。ここ王都からかなり離れたエコーヤという山に囲まれた田舎町の出身です。お医者様がいないので、治癒魔法を使えるようになって地元の役に立ちたいと思います。剣は全然ですが、そっちの分野で頑張っていきたいです。よろしくお願いします!」


 先ほどのオドオドしたアンナとは別人の様に、明るく自己紹介した。

 もしかしたら、元々は活発な性格だが緊張していたのかも知れない。

 そう思うとフィンケ先生の励ましが効いているんだな。意外だ。


「アンナ!立派な目標じゃないか!がんばろう!」


 フィンケ先生、熱烈にアンナの両肩を両手で掴んで言うとアンナの表情が歪む。

 恐らくアンナはツバを幾らかくらったに違いない。可哀想に。


「それじゃ、次は」


 フィンケ先生に指される前に1人の女子が立ち上がった。フィリップに話し掛けた金髪の女子だ。

 女子としては平均より少し大きめくらいの身長で、金髪のセミロングをなびかせて颯爽と教壇に上がる。


「私やっていいですか?」


 高めの澄んだ声でお伺いを立てる。


「もちろん!どうぞ!」


 フィンケ先生、余程嬉しいのか今日1番の笑顔で応える。


「レオニー・ラーンです。今の2年生の勇者は女子です。私の目標も女子で勇者になる事です。剣には自信あります。よろしくお願いします」


「レオニー!よろしく!」


「私は勇者が目標ですけど、入所式の勇者先輩の一撃を見て正直、あんなに強く成れるの?なんて自信無くしてます。でも頑張るので、みんなで頑張りましょう!」


「レオニー、がんばろう!」


 フィンケ先生かと思いきや、男子生徒から声が上がった。

 まぁ、あの金髪のセミロング、小顔で整った顔立ち、多分積極的な性格と、男子が好きな要素を兼ね備えていると思う。


「次は君、やってみよう!」

「私ですか?」


 フィンケ先生に次に指名されたのは、赤い髪をポニーテールにした女子だ。フィリップに話し掛け損なった彼女。

 彼女はアンナよりかは大きいが、やはり平均よりも小柄だと思う。


「エマ・ノイヤーです。私もアンナ同様、地方の出身です。私は南の漁村、イオーレで生まれ育ちました。攻撃魔法を覚えて漁船を襲う魔物を退治する!これが私の目標です」


「魔物って?」


 レオニーが間髪を入れずに質問する。


「クラーケンと呼ばれる海の魔物。私のお父さんは漁師をしていて、お父さんも襲われたの。お父さんは何とか助かったけど、お父さんの仲間が犠牲に」


 和やかな雰囲気だった教室が、ピンと張り詰めた空気に変わった。


「それこそ勇者のパーティーとかは来てくれないのか?」


 今度は銀の短髪男子が聞く。


「年がら年中出る訳ではないからね。そんな偶にしか出ない魔物退治には勇者や冒険者のパーティーは来てくれないのよ」


「私が行くわ!一緒にクラーケンを倒しましょ!」


 勢い良く立ち上がったのはレオニーだ。


 エマは少し驚いた様だがすぐにニッコリ微笑む。


「ありがとう」


「俺も行くよ!」

「俺も!」


 何人かの男子が手を挙げた。


「うん、素晴らしい!仲間のピンチはみんなで乗り越えよう!」


 フィンケ先生の声にさっきまでの勢いが無い。どうしたのかと思いきや、涙を堪えるのに必死な様だ。

 将来的にクラーケン退治をするとしても、先生はパーティーには一切関わらないで欲しい。

 全滅するから!

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