仮面の女
E組に駆け付けるが、いきなりは入らない。ドアの隙間から様子を伺う。
そこに、あの仮面で顔を隠す彼女はいた。
剣を抜いて対峙しているのはフィリップとレオニー。
残りは後方にまとまり、それを守るようにマリーが構える。
彼女に隙が無いのと、気迫で押されているからかフィリップもレオニーも身動きが取れない。
「これじゃ、面白くないな」
フィリップは沈黙を破ると火球を出し、同時に切り込んで行った。
しかし直前でステップを踏んで方向転換をすると、彼女にはマリーの放った氷塊が迫る。
咄嗟の連携プレーだが、よくやっている!
「これで終わりよ!」
彼女が氷塊を躱そうとした瞬間にレオニーが正面から、同時にフィリップが側方から斬り込む!
だが相手が悪い。
彼女はレオニーの剣を絡める様にして自由を奪うと、そのままレオニーの身体をフィリップの剣の軌道上に引っ張る。
フィリップは咄嗟に剣を引いたが、そのままレオニーと衝突してしまった。
そろそろだな。と思った時に廊下に仮面の女もう一人現れた!
「ケヴィン、ちゃんと案内してくれないと分かんないわよ!」
こっちの仮面の女は、俺が仮面の女の格好をして養成所を襲撃するように頼んだエリーゼ・バーンスタイン。
特徴が似ていたから、緩んでいるE組の緊張感を出す為に頼んだんだが。
「エリーゼ、今来たのか?」
「来たのは少し前だけど、迷っちゃって」
という事は、本物!
俺はすぐに教室に入り、仮面の女とレオニーたちとの間に割って入る。
「俺が相手だ!」
「………」
「今日は俺も魔剣だ!思う存分やろうぜ!」
仮面の女はそれまで使っていた普通の剣を捨て、改めて魔剣を構える。俺も魔剣ダルシャーンを抜く。
魔剣を構えた瞬間から、余程殺したいのか先日同様、徹底的に突いて来る!
それが分かっていれば防ぎようは有る。
突きに対して、俺はカウンターを狙う。腕を切り落とさないように気を使いながら戦うのは案外難しい。斬り殺すつもりでやり合う方がまだ楽だ。
動きは既に見切っている。っていうか、手に取る様に分かるんだ。
「魔剣同士なら、お前に勝つ要素は無い!大人しくしろ!」
「……」
「仮面をしていると話せないのか?」
「………」
「それじゃ、これでお前を魔剣から解放してやる!」
何回目かの突きを俺は下段の剣で魔剣を払い、体制を大きく崩す。下から払われたので、彼女の腕は大きく上に上げられており、体の正面ががら空きだ。
攻め放題と言わんばかりに隙だらけになっている。それこそ、突きでも決めればそれで終わるが、それは止めておく。
「フィンケ先生!全員連れて避難して下さい!」
「分かりました!」
「あと、来ても邪魔なので応援とか絶対に呼ばないで下さい!」
「応援いらない? 分かりました!」
「マリー、皆を頼む!」
「畏まりました。ご武運を!」
フィンケ先生とマリーに促され、全員が教室から出て行った事を確認して、廊下に隠れているエリーゼに声を掛ける。
「エリーゼ、すまないが教室に誰も近寄らせないでくれ!」
「分かったわ!しっかりケジメ付けなさい!」
不敵な笑みを浮かべ、エリーゼは教室のドアをビシッと閉めてくれた。
「来いよ」
俺は敢えて上段にかまえて、彼女の魔剣目掛けてダルシャーンを振り下ろす。
魔剣同士がぶつかり合う光を放つと、彼女の魔剣はその手を離れ教室の床に突き刺さっていた。
すかさず俺はダルシャーンを喉元に突き付ける。
「!」
「もう、終わりにしよう」
「………」
会話にならない。やはりあの仮面も取らないとダメなのか。
俺は細心の注意を払いながら、全身全霊をダルシャーンの一撃に込めた。
これ以上深くても浅くてもいけない、ギリギリの所に切っ先を通す。
「どうだ!」
ダルシャーンの一撃で仮面は真っ二つに割れ、予想通りの見知った顔が現れる。
「私、一体…」
「おかえり、クララ」
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もうすぐ完結させます。
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