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美人冒険者

「行くぞ」


 助太刀してくれた女冒険者と思わががチンピラと睨み合っていると、チンピラの一人がそう言って撤退して行った。

 すると残りの三人も、此方に視線を残しつつ後ずさり、距離ができた所で反転して行った。

 ただのチンピラではない気がするが、深追いは禁物。


「助かりました」

「ありがとうございますぅ」


 俺とマリーは女冒険者に礼を述べる。すると


「お礼より彼女、大丈夫?」


「大丈夫で……」


 マリーの様子がおかしい。改めてマリーを見ると、いかにもお酒飲みました!って顔をしている。


「あはっ、彼らがいなくなって安心したら急に酔いが…」

「大丈夫か?家まで送るよ」

「それには及びませえん。大丈夫ですよお!酔ってません!」


 マリーはまさに酔っ払い口調だ!だが酔っていないと主張する。世間一般ではこういう時は大抵、前後不覚に酔っているものだ。


「彼氏、ちょっとごめんね」


 女冒険者はマリーに近寄ると、右手をマリーの口に翳した。魔法を使うつもりだ。彼女ほきっとマリーに悪い事はしないであろう。


「解毒の魔法よ。お酒にも多少なりとも効果は有るわ」


 その言葉通り、マリーの様子が戻った。

 解毒魔法を酔っ払いに使う事は俺も初めてだ。素直に感心する。酒って一種の毒とも言えるのかな?


「彼氏、悪い事は出来なくなっちゃった。ごめんね!」


 茶目っ気たっぷりに女冒険者の口から出たその言葉に、マリーは再び赤くなる。

 シャレになって、…、なるよ!



「ケヴィン、私も一人で帰れますから大丈夫です」

「いや、さっきみたいな連中もいるし」

「大丈夫ですよ。人通りの多い所を通って行きますから」


 何となくだが、マリーは俺に付いてきて欲しくないような気がする。


「分かった。くれぐれも気を付けろ!何かあったら大声上げろ」

「心得ました。おやすみなさい。

 一度ならず二度までもありがとうございました。せめてお名前を」

「名乗る程の者じゃないよ。気をつけて帰りな!」

「はい、ありがとうございました」


 マリーは微笑を浮かべて家路に着く。


「彼女を一人で帰して良かったの?」

「心配ではあるけれど、軽く拒否されてる気がしたんだ」

「拒否?何で?あんただって結構イイ男なのに」

「そりゃ、どうも」


 マリーなりの事情が有るのだろう。いつか理解出来る時が来る事を望む。


「ねぇ、それじゃ飲み直さない?彼女を送って行く時間が空いたでしょ?」

「そうだなぁ。お礼もしたいし、奢るよ!」

「奢るって、キミ年下でしょ?私は二十歳だけど」

「十六歳。綺麗なお姉さんに杯を傾けられる事は光栄の極みでございます」

「ウフフ」


 かしこまって言った事は勿論冗談だが、彼女は受け入れてくれたようだ。冗談を言っても相手が受け入れてくれないと、ただの道化だから本当に良かった!


 近くの適当な酒場に入り、カウンターに並ぶ。


「エリーゼ・バーンスタイン」

「ケヴィン・ワーグナー」


 互いに名乗り杯を交わす。

 エリーゼは二十歳の女冒険者。マリーとの別れ際に見比べたが背は高めでマリーよりは少し低かったものの、女性として高い方だろう。。

 栗色の長い髪、整った小顔で美人と言って差し支えないと思う。とてもじゃないが冒険者らしからぬ風貌とも言える。


「誘っておいて何だけど、あんな綺麗な彼女がいるのに私に付き合って良かったの?」

「マリーは彼女じゃない。彼女いない歴、二ヶ月」

「そうなの!それじゃ私と付き合わない?」

「なっ!」


 エリーゼは瞳を輝かせて大胆発言する。


「出会って一時間も経たない四歳も年下の男を口説く女冒険者とか?」

「年齢や時間なんて運命の前には意味なんて持たないわ」


 平静を保とうとするが、主導権はエリーゼに握られている。 


「俺の何が気に入った?」

「強さよ!」

「分かるか?」

「私はA級冒険者よ!」


 エリーゼは誇らしげに語る。

 冒険者ほランクが上がる程に相手の強さが分かる。

 これは冒険者をしていると身体で覚える感覚。この感覚が身につかないと、無謀な戦いをして命を落とす。つまり、猪武者となる。


「弱い奴じゃ、ときめかないの!あなたは私よりも強い事は間違いないわ。S級?」


「正確には冒険者ではないからランクはない。幻滅した?」


「そんなに強いのにもったいない」


「それじゃ、A級冒険者さんに質問。さっきのチンピラをどう見る?」


「あの四人の内の二人はA級、残りの二人はB級冒険者くらいかしら。でも冒険者の動きではなかったわ。あなたがその気になれば呆気ないでしょうけど、彼女の手を掴まれて手加減しすぎた?」


 見事な分析だ、エリーゼ・バーンスタイン。


「彼奴らは俺の手刀を避けるまで自分の強さを隠匿していた。随分と訓練されたチンピラだ」


「私が見た時にはもう、隠匿出来てなかったわ。あなたと対峙して余裕が無くなったようね。軍人?…まさかね」


 エリーゼはグラスを傾けながら持論を語る。

 酒のせいなのか、場の雰囲気なのか、エリーゼがやけに艶っぽく見える。媚薬とか盛られてないよな?


 「そんな事より、飲みましょ!今夜は長くなるわよ!」

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