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帰り道

 まだ宵の口だが、一応は学生だ。祝勝会もお開きとなった。

 請求書を見た時のエンゲルスの顔は是非とも見ておきたい表情となるだろうな。


「まだまだ飲むのぉ」


 なんてレオニーがすっかり出来上がった為、俺が送って行く。      介抱役としてマリーに同行をお願いした所、快く引き受けてくれた。こんな状態の女子と二人きりだと、何かと大変そうだから助かる。


「じゃぁね!」


 寮生であるアンナ、エマ、ルイーザの三人はフィリップとオリバーに送ってもらう。

 フィリップの家はここから近いはずだ。しかし申し訳ないがオリバーだけでは心許ない。

 王都だろうと悪い輩はいるものだから。


 千鳥足のレオニーを歩かせる事は諦めて背負ってみた。思ったより軽い。

 そして、俺の背中にはレオニーの胸の感触がぁ!

 確かに小さいかもしれないが、確かに感触はあるぞ!

 世の中の男が皆が皆、巨乳好きでもなかろうにそんなに気にしなくても。何て考えていると、


「どうかされましたか?」


 鼻の下が伸びていた俺を見かねたのか、マリーが声を掛けてきた。


「いや、レオニーが軽くて驚いていたんだ」

「そうでしたか。私でしたら背負う事は無理だったかもしれませんね」

「マリーも大歓迎だ!」

「いえ、重たいので遠慮させていただきます」


 マリーはそう呟くと俯いてしまった。すると、


「違うのぉ、ケヴィンはマリーをおんぶしたいのよぉ!」


 突然、レオニーが俺の耳元で話し出した。酒臭いけど。


「マリーをおんぶすれば、合法的に感触を味わえるからね、胸の!私じゃぁ物足りないんでしょう!」

「レオニー、ケヴィンがそんな事を考えている訳がありません」


 ごめん、考えてました。


「男なんて皆、巨乳好きなのよ!私も巨乳スキルを身に付けたかった」


 スキルではないと思うのだが。


「私もマリーになりたい」

「レオニー、私は確かに他人より大きいかもしれません。でも、大きくて得をした事なんてありません!」

「そんな事ないでしょう!みんなうらやましがってるし!」

「いいえ、肩はこるし、汗はかくし、運動すれば揺れて皮膚が引っ張られて痛いし、一番は殿方の視線です!あの不快なイヤラシい視線を浴び続けなければならない事が、もう嫌で嫌でたまりません!」


 マリー、酔った勢いなのか結構大胆発言している。

 男には分からないが小さければ小さいで、大きければ大きいで悩みの種とは。


「すみませんでした」

 何か急に世の中の女性に謝りたくなった。


「ケヴィンなにかしたのぉ?」

「どうかされたのですか?」


 マリーとレオニーは疑問に思うだろう。

 俺も酔ったかもしれない。

 


「楽しそうだな!」

「兄ちゃんはいいから、お姉ちゃんたちは俺らともう一軒行かない?」

「行こう!楽しいよ」


 見るからにチンピラって感じの四人組が声を掛けてきた。普段ならウォーミングアップにもならない相手だが、レオニーとマリーは守らなければ。


「あっ!ここからなら一人で帰れるよぉ!じゃぁね!」


 レオニーは俺の背中からスルスルと降りると、手を振って雑踏に消えた。


「きゃっ!」


 悲鳴の方を振り向くと、マリーがチンピラの一人に左手首を掴まれている。

だがマリーも掴まれているままではない。空いている右手で平手打ちを、と思いきや右手も掴まれてしまった。

 つまり、マリーは両手首を掴まれたチンピラと対峙している。

 良くない状況だ。


「無礼者!お放しなさい!」


 騎士の娘として育ったプライドがそう言わせているのか、マリーにしては何時になく強い口調だ。

 しかしチンピラは下品な笑みを浮かべ、手を離しそうにない。

 

「その手を離せ!」


 丸腰の俺はチンピラに手刀を受けてもらう事にした。骨は折れるだろうが!それくらいは当然の報いだ!


「おっと危ねー」


 咄嗟にチンピラはマリーから手を離して、俺の手刀を躱した。

 有り得ない!

 普通は、このシチュエーションで出て来るチンピラは、やられキャラだろう!

 この動き、コイツらはただのチンピラじゃない!マリーを守らなければ!

「マリー、絶対に守るから!」

「はい!」


 この四人をどう片付けようか考えていた時だ。


「あなた達、目障りです!」


 冒険者風だが、どこか品の有るどちらかと言えば美人と言える栗色のロングヘアの細身の女性が野次馬をかき分け、此方に寄って来た。


「後はお姉さんに任せてキミ、彼女を守ってね!」


 強くて綺麗なお姉さんは大歓迎します。

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