祝勝会
「美味しい!」
料理を口に入れた瞬間、エマが思わず言葉にする。
「ワインも美味しい!」
ワイングラスを傾けつつ、アンナが高閲の表情だ。
王国では十五歳で成人となる。飲酒も許可されるが、健康上の理由で十代の飲酒は推奨はされていない。
ここは王都でも指折りの高級レストラン。個室を借りての祝勝会だ!
「これ全部エンゲルス先生のおごり!いい条件だね、ケヴィン」
オリバーは飲酒は初めてらしく、最初は顔をしかめていたが、すっかり気に入った様子だ。
決闘は五勝二敗でE組の勝利!
元々は、負けたクラスは担任と生徒全員が退所する条件だったが、勝ったE組の申し出により取り消された。
代わりの条件、
祝勝会の費用をC組担任のエンゲルス先生が負担する事。
俺の提案だが、エンゲルスは飲まざるを得ない。だから、高い店にきてやった!
彼の夏のボーナスはこれで吹っ飛ぶ!
俺を含む全員がほろ酔い気分でいい気分。
そういえば、砕けた話はしていなかったな。いい機会だ。
戦った順に話をしてみる。
「オリバー、今日は嫌な役をやらせて悪かったな。でもそのお陰でC組を油断させられた。お前がわざと負けたから呼び込めた勝利だ!」
「役に立ててよかったよ!負けたのはわざとじゃないけどね」
顔を赤らめてオリバーは言う。赤い原因はワインだけではなさそうだ。
「なぁケヴィン、俺は何やっても上手くいかない。今日だって結局は剣を抜かずにやられただけだし。これからどうしたものかな?」
「オリバー、剣だけが全てじゃないし、目指す職業はいっぱい有る!オリバーが最初に言ってた安定した公務員、例えば警察官。この養成所なら警察官レベルの強さは身に付けられるけど、お前がなりたい職業って実際は何だ?」
前から、何か隠していそうなオリバーにこの場の雰囲気を借りて聞いてみた。
「笑わないか?」
「人の夢を笑う程ふざけた生き方はしていないつもりだ」
探る様に聞いてきたオリバーに自信満々に答える。
何故なら、そう言われたら何としても聞きたい。
「俺は将来は、弁護士になりたい!」
「へっ?」
マジですか?
この養成所は様々な戦い方を身に付けられるけど、法廷での戦い方は教えてくれない!
来る所が違う!
「へぇ、オリバーって頭が良いの?」
ほろ酔い気分のアンナが聞いてきた。
ツッコミを入れずに普通に会話出来るのは、ある意味凄いし、ありがたい。
「良くはないけど、弁護士って格好いいから」
オリバー、グラスを傾けつつボソリと呟く。
もう少し男前なら絵になるのだが。
「でもオリバー、養成所は弁護士には向かないんじゃないか」
「そうか、それじゃもう一つなりたい職業があるんだ」
「何?ねぇ何?」
聞いたのはエマだ。気が付けば全員が集まってオリバーの話を聞いている。
「大道芸人!」
やっぱり来る所が違う!
「そうか!オリバーは養成所で火を吹いたり、剣を飲み込んだり、ナイフのジャグリングを覚えるんだね!」
そんなスキルは教えてないぞ!




