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ルイーザの立ち位置

「よし、勝って兜の緒を締めよ!気を取り直して第六試合だ!」


 レオニーはまだヒートアップしているので、しばらくは放置するしかない。

 下手に何か言えないし、とてもじゃないがそんな雰囲気じゃない!


「あのケヴィン、次は私が行きましょうか?」


 丁寧に申し出て来たのはマリーだ。

 残った二人の中でも、ルイーザとマリーではマリーの方が数段強い事は明白。

 その事は本人達も承知している。


「マリーはその次頼む!第六試合はルイーザだ」


 マリーの剣は俺を除くE組ではレオニー、フィリップに次ぐ実力が有る。

 恐らくはC組の上位の実力だろう。

 だから、強い順に出してくるC組はとの対戦ではなるべく後に出したい。


 もう一つ理由が有る。

 マリーはレオニーとは逆で、胸が大きい。

 はっきり言うと、爆乳!

 この雰囲気ではマリーを出しにくい。申し訳ないが、ルイーザにワンクッション置いてもらう。


「ねぇケヴィン、もうこの、胸チラ作戦はやらないよね?」


 アンナとエマが上着を着ながら尋ねてきた。

 二人が上着を着るとC組の男子達が残念そうな態度をしているのを見るとまだ使えそうだが、ちょっと作戦を決行出来る雰囲気ではない。

 第一、胸チラ作戦なんて作戦名にした覚えは無いぞ!


「あぁ、もう大丈夫だ。ルイーザもマリーも、もう作戦は無しだ」


 マリーは大きく安堵した様だし、ルイーザもマリー程ではないが安心した様だ。

 だが、作戦無しでルイーザが勝てる要素が全く無い。俄仕込みだが、ルイーザの為の作戦が閃いた!



「ルイーザ、怪我をしても治癒魔法で治せるが無理に痛い思いや怖い思いをしなくてもいい」


「端っから負けるって?」


「不快なら済まない。でも相手は脳筋で、お前は剣の素人だぞ!だが、お前専用の作戦を思い付いた」


「見くびるんじゃないよ!そんな作戦なんか無くたってやってやるさ!」


 不意にルイーザが声を荒げる。その声は闘技場に響き渡り、C組の連中までルイーザに注目した。

 ルイーザの事を思って棄権を促すつもりだったが、そうは上手く行かなかった。


「オジウ先生すみません、五分だけお時間を頂けませんか?」


「良いだろう。前の試合の折れた歯とかを片付けるのにまだ時間が掛かる」


「ありがとうございます」


 俺はオジウ先生に感謝を述べると、ルイーザの手を取った。


「ちょっと来い!マリーも来てくれ!」


 急に手を取られてルイーザは驚いていたが、そんな事はお構いなしだ。二人を控え室に繋がる通路に連れ出した。


「そこまで自信が有るのなら、もう一度俺に打ち込んで来い!」


「いいのか?」


「切り刻むつもりでな!」


「でやぁ!」


 ルイーザは掛け声を上げて攻めて来た。

 が、俺にはその剣が止まって見える。

 今年で十二歳になる下の妹の方が強いとさえ思う。


「なっ!」


 ルイーザは動揺を隠せない。

 それもその筈、気付いた時には彼女の剣は斬るべき相手である俺に刃を指でつままれて、ピクリとも動かせない。


「お前のその自信の根拠は分からんが、自分の立ち位置は理解しろ。エマもアンナもオリバーもマリー分かっていた。自分は弱いってな。だからあんな作戦でも勝てるのならって作戦に乗ったんだよ!」


 ルイーザは更に動揺し、呼吸が荒くなっていた。


「お前だけだ!弱いのにイキがって無策で戦うなんてバカは!」


 図星突かれてハッとしたルイーザの瞳が潤んでくる。

 ビビった!

 泣かせるつもりは無かったんですけど。


「私、バカだから…。見くびられたくなくてイキがったり、バカなのがバレたくなくて一人でいたり、みんなの足を引っ張りたくなくて作戦に乗ろうとしたけど、できないし」


「ルイーザ、みんな似たもの同士ですよ」


 涙声のルイーザにマリーが優しく語り掛ける。


「私も皆のノリと言いますか、雰囲気に馴染めなくて一人でいます。そんな自分を何とか変えたいと思っているのですが、なかなか」


「マリー」


 ルイーザが顔を上げて微笑むマリーを見つめる。


 当初の計画では、イーザに一言だけ言った後に技を一つだけ教えるつもりだった。そしてマリーにはお手本としての働きをしてもらうつもりだった。

 思い描いていた展開とは行かなかったから、ルイーザが泣きそうになった時には俺の方がビビったけど、ホントにマリー様々!

 きっと今のルイーザにとってマリーは聖母の如きの救いとなっているだろう。

 そして俺にとっても救いの女神だ!


「ルイーザ、今は弱くてもいい!」


 優しく言うと二人共、意外そうな表情を浮かべる。


「一年間で俺が強くしてやる!マリーもな!」


「はい!」

「わかった」


 良い返事だ。


「もう時間だ。行ってこい!例え負けても俺がケツを持つ!」


「えーっ、負けたらケヴィンにお尻を持たれるのですか?」


 マリーが赤面しながら驚きの声を上げる。

 慌てたのはこっちだ!励ますつもりがまさかの予告セクハラになるとは。


「ルイーザ、説明してやってくれ」


 騎士は貴族に準ずる身分だ。元騎士の娘であるマリーが馴染むには、まだ時間が必要な様だ。

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