いざ闘技場へ
「作戦を言う前に確認しておく。まず、C組とは実力に差がある事は認識していると思う。弱い者が強い者に勝つには作戦が必要不可欠だ!」
皆は黙って頷く。
「その上で聞く!勝つ為には何でもするか?出来るか?」
「もちろんよ!ねっ、みんな!」
エマが代表して答える。他の皆も同意している。
「では作戦を授ける。作戦は絶対!」
そして
時はいざ、決闘の時間となった。
「作戦分かっているな!」
「…やればいいんでしょ」
これから決闘だと言うのにエマ、アンナは不満タラタラで、マリーはずっと俯いている。
女子で唯一、平然としているのはレオニーだ。レオニーは作戦の影響が無いからだろう。
剣で勝負出来るレオニーは作戦無しで行く。
「あの、本当に作戦決行しないとダメですか?」
今にも泣き出しそうなマリーが恐る恐る聞いてくる。
「気持ちは分かる。だけどなマリー、勝つ為の作戦なんだ」
「分かります。分かっているのですが私…」
「マリー、俺を信じてくれ!」
「は、はい、貴方を信じて従います」
「ありがとう、マリー」
マリーに優しく語り掛けた。マリーは直接は作戦を実行しないが、メンタル面での影響はあるだろう。本心では今からでも作戦を中止させたいだろうが我慢してくれている事は分かる。
作戦が失敗して、この決闘に敗れたなら責任を取る覚悟だ!
皆の準備が整った様だ。
女子は全員が上着を羽織っている。
「みんな!まだ作戦には懐疑的かもしれないけど、この作戦は歴史上に実際にあった戦術を応用した物なんだ」
フィンケ先生では絶対にやらないであろう、戦史を去年は習った。確か、強力な相手の騎馬軍団に対抗する為に牝馬、つまりメスを用意して、騎馬軍団の馬を無力化させたとか。
女子が多い事を活用しない手は無い!
「そろそろ時間だ。行こう!」
俺達は闘技場に向かう。
闘技場は校舎からは少し離れた位置にあり、古代の円形闘技場を連想させる作りとなっている。
中も円形で、直径五十メートル程のフィールドを囲んで観戦者用の席が設けられている。
今回の様な決闘や、年度末のトーナメント戦はフィールドの中央に二十メートル四方のステージが設けられ、その上で戦う事になっている。
闘技場に着くと入口付近にフィンケ先生が突っ立って、俺達を待っている。
「みんな、本当にすまない。今からでもエンゲルス先生に謝ってみんなの退所は勘弁してもらおうと思っている」
「先生、あなたは本当に分かっていない!今更何を言っているんですか!連中が収まる訳が無いし、そんなんで残った人間の惨めさを分かっていない!」
折角E組がやる気を出したというのに、冷水をぶっかける真似はやめてもらいたい。
「エンゲルス先生がE組は全員退所なんて言い出したのは、E組を見下しているからでしょう?更に見下されますよ!」
フィンケ先生に戦う必要性を説いた。彼に分かるだろうか?
「みんな!行くぞ!」
もうこれ以上はこの先生に構っている余裕はない。
「おー!」
気合の入った声だ!ちょっと甲高いのはご愛嬌。
闘技場に入るとC組は準備万端だ。
「逃げずに来た事は評価する。もっとも、実力差も理解出来なかったのかな?」
こちらを舐める様な視線、まるで獲物を威嚇する蛇の様だ。
「何なら、誰か一人でも勝てたらE組の勝ちにしてやっても構わんよ」
「それはありがたいお申出です。ですが残念ながら一度決まった決闘のルールを変更するには理事二人以上の承認が必要です。残念です」
「そうであった!残念だ!ウハハハ!」
品の無い高笑いだ。
そして確信した。俺達が負ける要素は全く無い!




