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決闘

 昼休み明け、E組の空気は重い。

 クラスの編成は実力順だと聞いたらしい。


「C組と決闘して負けたら全員退所?何を考えているんですか先生!」

 

 基本的にクラス編成は実力順だと知っているのか、レオニー、アンナ、エマに囲まれ、当然だが攻め上げられるフィンケ先生。

 その外にはフィリップ、ルイーザ、オリバーも何か言いたそうだ。

 マリーだけはこんな時でも着席している。

 理事長から聞いた話ではC組の担任教師、エンゲルスとの売り言葉に買い言葉で決闘になったらしい。

 エンゲルスは負けた時の条件まで出してきたって事は、嵌められたのかもしれない。


「みんな、本当にすまない」


 フィンケ先生は事の重大さをようやく理解したのか、顔面蒼白で謝るだけだ。

 この決闘、やる前から分かる。勝てる要素が無い!


 今回の決闘は一対一の戦いを七人ずつで行い、四勝した方が勝ちだ。

 此方は七人中五人が女子だ。

 しかも今回は魔法は使用禁止となっている。もっともE組で魔法はフィリップとマリーが多少使えるだけで、エマなんかは魔術師志望と言っても、現段階では何も使えない。

 魔力の素質が有るって事での入所だからだ。


「せっかく王都まで来たのに!」

「今からなんて他の学校に行け行ける訳が無い!」

「私達の将来を何だと思っているんですか?」


 エマ、アンナ、レオニーが食ってかかる。


「ケヴィン、剣を教えて!」


 俺が視界に入ったエマが懇願して来る。


「今からじゃ無理だ。だが、俺とクララの戦いでのレオニーとフィリップ、それにマリーは見所があった。上手く行けば三つ勝てるかもしれない」


「良くても一勝足りないじゃない!私、辞めたくない!」

 レオニーは涙声だ。


「私だって夢が有る!ここにはそれを叶えに来たの!」

 エマも叫ぶ。


「私だって、このままじゃ村に帰れない!」

 アンナも泣いている。


「お前たちは、どうなんだ?」


 他の四人にも聞いてみた。


「俺は単純に退所は困る。これじゃ就職も出来ない」

 オリバーは無愛想にそれだけを言った。


「私も同じ。ここを卒業と同じ頃に妹は孤児院を出なきゃいけない。妹を養う為にも卒業して就職しないと」

 ルイーザは苦虫をかみつぶしたような表情で言った。


「私だって生半可な気持ちで入った訳ではありません」

マリーが立ち上がって、歩み寄って来た。こんなマリーは初めて見た!


「僕はね、みんなほど切羽詰まってないけど、この養成所に通う僕を僕自身が気に入っているんだ。だから、終わりにしたくないな」

 最後にフィリップが、やはり舞台の台詞の如く目線を遠くに決めた。


 決闘の時間まであと三十分くらいだ。やる気は評価するが今さら稽古は出来ない。


「出来る限りの事はしよう!みんなの力量が知りたい。順番に俺と手合わせしよう!」


 全員が黙って俺に注目している。そして、もはやフィンケ先生は空気と化している。


「まずは、アンナだ。次はエマだから準備しておけ」


「はーい」


 決闘の前だと言うのに二人共に気の抜けた返事をする。


「お願いします」


 アンナは撃ち込んで来たが、予想通りの素人だ。


「次はエマ!その次はルイーザだから準備しておけ」


 エマはアンナよりかはマシだ。


「エマ、その剣はモリ、そして俺を魚だと思って突いて来い!」


  もちろん、剣とモリでは全然違う。だが集中力は通じる物が有るのだろう。一つアドバイスを与えると、予想以上の鋭く突いて来た!

 収穫かもしれない。


「次はルイーザ。その次はマリーだから準備しておけ」


 ルイーザは勢いよく攻める。だが、動きはやはり素人。


「次はマリー、その次はレオニーだ」


「お願いします」


 マリーは構えからして前の三人とは全然違う。C組相手ならマリーは普通に勝てると思う。


「次はレオニー、その次はオリバー」


 レオニーは激しく撃ち込んで来る!剣に自信が有るそうだが、これなら勝てると思う。


「次はオリバー、最後はフィリップ」


 オリバーも素人。


「最後はフィリップ、来い!」


「行くよ、ケヴィン」


 動きその物は悪くない。フィリップも勝てると思った。


 やはり今年のクラス編成は完全な実力順ではないようだ。

 確実に勝てそうなのはレオニー、フィリップとマリーも例年のC組が相手なら勝てると思う。

 予想上回るが、一勝足りない。

 エマの突きも、鋭いが過度に期待は出来ない。

 大体、こっちは五人も女子、それも素人が過半数なんだからハンデがあっても罰は当たらないでしょうに!


 ん?五人も女子…


 勝てるかもしれない!

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