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呼び捨てで

 残る質問者は三人。

 そう言えばこの三人が他のクラスメートと話している所を見た事が無い。

 今日の朝もそうだった。


「それでは次はオリバー、ケヴィン君に聞いてみたいことは何だい?」


「特に無いんですけど、それじゃ武器や魔法の得手不得手は何ですか?」


 渋々って感じでオリバーが質問した。

 本来なら、それが人に尋ねる態度か!と言いたい所だが今日は許そう。根性を叩き直すのはもっと後でもいいだろう。

 コミュニケーションを取る事が苦手なタイプかもしれないし。


「得意な武器はやっぱり剣だな!武器で苦手なのは、自分で使うならナイフだ。剣に慣れているからあの間合いが難しい。相手にして厄介なのは鞭や鎖鎌だ。やはり間合いが難しい」


 ご一同、へえと関心した様に聞いている。

 でも、これは実は嘘である!

 お蔭様で苦手な武器という物は存在しないのだ。


「それじゃ、魔法はどうなんですか?」


 オリバーが食らい付いて来た事は意外だった。

 さて、どうするか。レオニーがラーン班長からどの程度の事を聞いているのか分からないから下手なことは言えない。

 ラーン班長の前で使ったのは捕縛の炎、氷の盾、そして治癒魔法だな。こいつらは得意中の得意って事にしておこう。


「得意な魔法は氷と治癒魔法が得意中の得意かな。自分が使えないのは土、風、光の魔法。相手にして厄介なのは幻惑魔法が本当に厄介だよ!」


 嘘つきました!

 魔法も苦手はございません!


「オリバー、君も得意分野を作ろうな!協力するから」


 何も得意分野が無いと言うオリバーに言った。皆を発奮させる為に、俺も完璧じゃないんだよ!一緒に頑張ろう!って思いも有って苦手が有るなんて言ってみた。

 通じれば良いけど。


「ケヴィン君でも苦手なものってあるんですね!先生、ちょっと意外です」


「確かに、ワイバーンの高温のブレスに敢えて氷の盾を使ったってお父さん言ってた!氷の魔法、凄いんですね!」


 レオニーが立ち上がると、俺の元に来る。


「それに、治癒魔法!何度でも言わせて下さい。お父さんを助けてくれて本当にありがとうございます」


 そして両手で俺の手を取り、瞳を潤ませた。


「当然の事をしただけだよ、レオニー。ラーン班長、助けられてよかった」


 出来るだけ優しい言葉で、助ける価値の有る人の娘に応えた。


「はい、そこまで!レオニーは席に戻って!」


 フィンケ先生が俺とレオニーに割って入るがその一瞬、レオニーがフィンケ先生を睨み付けたのを見逃さなかった。

 

「は、はい、それではマリーにお願いしよう!」


「は、はい」


 レオニーに睨まれ、萎縮したフィンケ先生に指名されたマリーが立ち上がった。

 授業以外の時間はほとんど読書をしているか、俯いていて独りでいるマリー。態度を見る限りはかなり内気なようだか、話してみると実に気品が有る。

 女子の中では一番の長身で、ブロンドの長い髪を一つ結びにしている。長身でブロンドの髪って、それだけでかなり目立ちそうだが、なるべく目立たない様にしているとしか見えない


「あ、あのケヴィン君は」


「ケヴィン君?」


 クラスメート一同が声を上げる。


「マリー」

「ちょっと失礼じゃないの」

「仮にも年上に!」


 アンナ、レオニー、エマが強い口調でマリーを責める。


「わ、私はただ同級生なのに年上扱いは変かなと思って」


 マリーが弱々しく反論する。その姿はいじらしく見える。


「いや、マリーの言う通りなんだよ!みんなには俺を呼び捨てで呼んで欲しいし、敬語もいらない。同級生なんだから!」


 俺がそう言うと、ご一同は余程意外だったのか目を丸くしている。そんなに怖いイメージだったのか、俺?


「ヨシ!それじゃこれからはケヴィン君を呼び捨てにしよう!」


 貴方、直っていませんが。先生。


「それじゃ、ケヴィンはやはり勇者が目標ですか?」


 マリーは今度ははっきりとした口調で質問した。


「もちろん!それ以外は考えていないな!」


「ケヴィンは決勝戦でクララ先輩とは闘えなくて棄権して留年しました。また今度も同じ事、例えばレオニーと闘う…」


「ちょっと!そこで私の名前を出すなんて…」


 レオニーが慌てて立ち上がった。


「ごめんなさい。いけなかったかしら?」


「あ、いや…。大丈夫…」


 立て板に水のマリーとは対照的に、しどろもどろなレオニー。

 それにしてもマリーは俯いてばかりかと思いきや、話し出すと人が変わった様に堂々としている。

 そういうギャップも良いもんだ。


「今度は戦い方を考えるよ」


「ありがとうございます。質問を終わります」


 マリーはそう言うと着席して、縮み込んでいる。

 とんでもない事言ってしまった!何て思っているんだろうな、きっと。全然大丈夫なのに。


「最後はルイーザだな。ルイーザ、よろしく頼む!」


「すいません、質問が浮かばないからパスします。先生、それにもう休み時間ですよ」


 ちょうど一時間目の終了の時間だ。

 ルイーザは何故か、してやったりと言わんばかりの表情を浮かべていた。

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