今更ですが
ちょっと停学になっている間に3人が辞めていた!
元々人数が少ないけど大袈裟に言えば、クラスメートの三割が養成所を去った事になる。
「カール達ったらケヴィンさんとクララ先輩の闘いでビビったらしいですよ」
驚きを隠せなかった俺にエマが教えてくれた。
目の前で俺の作った魔法障壁が、俺の放った剣圧で破壊された事による衝撃波をまともに喰らったからか?
悪い事したかなとも思うけど、あれでビビるのならば早めに見切りを付ける事は間違ってない。人には向き不向きが有る。
彼等にはそれぞれの道で頑張って欲しい。
「改めて自己紹介をお願いします!ケヴィン君!」
今更やると注目度高すぎで、気が滅入る。
フィンケ先生に手招きされて教壇に上がると、早く終われとしか思わない。
「ケヴィン・ワーグナーです。みんな知っていると思うけど留年しました。だから養成所の事は詳しいので、分からない事は聞いて下さい」
「それでは、ケヴィン君への質問コーナーです!全員必ず質問して下さい。ケヴィン君はどんな質問にも答えて下さい!」
変なコーナー作らないでくれ!先生!
「それじゃ、はーい」
赤い髪をポニーテールにしたエマが元気良く挙手している。
「ケヴィンさんは、クララ先輩の元カレって本当ですか?」
いきなり何て質問するんだ!エマ!
小っ恥ずかしいが仕方ない、答えてやるとするか。
「本当だ。そして、この前聞いたと思うけどトーナメントの決勝戦の日に別れた。と言うか、振られた」
「どんなきっかけで付き合って、どうして別れたのですか?」
今度は栗毛のショートボブのアンナだ。確か山村出身で治療士志望だったはすだろう、他人の心の傷の心配もしてくれ!
「同じクラス、B組で色々と教えてやっている内に付き合い始めて、トーナメント戦の決勝戦でクララを打ちのめす覚悟が出来なくて棄権したら、激怒されて振られた」
「それでクララ先輩は決着を付けに来たんだ」
エマもアンナもは納得した様だ。もう大人しくしていてくれ。
「デートはどこに行きましたか?」
アンナが追加の質問をしてくる。
「至って普通だったと思う。放課後は毎日二人きりで……」
何人かが身を乗り出して来た。
「剣の稽古をしたなぁ」
ドタン!
放課後の所で身を乗り出して来た連中は皆コケた。
「休みの日には二人きりででよく森に行った!人が来ない所まで行って」
またまた身を乗り出して来た。
「魔物を倒してた」
ドタン!またコケた。休み日は森に…で身を乗り出していたんだけどな。お約束だな!
「人気の無い丘に行っては魔法を試したし、ダンジョンにも行ったな」
「もう、いいです」
アンナは恐縮した感じで質問を打ち切った。
「はい、では次の質問!」
フィンケ先生が仕切り直す。
するとレオニーがすくっと立ち上がった。
「ケヴィンさん、改めましてお父さんを助けて頂いてありがとうございます。巨大なワイバーンを圧倒した実力、どうしてそんなに強いのですか?」
「良い質問だ、レオニー。ケヴィン君、是非とも教えてくれ!」
むしろ貴方が聞きたそうですよ、フィンケ先生。
「俺の父親も勇者なんだよ。それで、次男だから結構無茶な育てられ方した結果かな。父の魔物退治の旅に連れて行かれたりしたからな。物心付いた時から魔物を倒していたなぁ」
「まだ幼いのにケヴィンさんがお父様の旅に付いて行ったのですか?」
レオニーが目を丸くして聞いて鍛え。
「付いて行ったのではなくて、連れて行かれたんだ。お陰でたまに家に帰ると妹からは、あなた誰?って感じで泣かれたよ」
軽く笑う。でもレオニーは笑ってくれなかった。真顔だ。もっと聞きたいらしい。
「それが強さの秘訣ですか?」
「学校に行く年まで旅に出て、その後も休みには旅だったよ。本当に、人生は旅!って感じだった」
やって見せ
言って聞かせて
させてみて
誉めてやらねば人は動かじ
親父はそんな感じで俺を育て上げた。もちろん厳しくもあったけど、親父なりに考えていたんだと思う。そこは感謝している。
「はい、はい!いいですか?」
「はい、フィリップ君どうぞ!」
元気に手を挙げるフィリップが次の質問者だ。
「あのケヴィンさんは、クララ先輩と別れたという事は、今はフリーなんですか?」
話を戻すな!
っていうか、何故に男のお前が聞く?
「確かにそうだけど、本来ならこの養成所に通う者に男女交際している余裕は無いぞ!俺とクララは例外だ」
「って言うか、ケヴィンさんとクララ先輩って付き合っていたって言うより、一緒に稽古してただけなんじゃ…」
アンナが恐る恐るツッコミを入れる。
それに対してふと思った。
そうかも知れない。




