⑥
恋愛の方になかなかもっていきませんね( ˙-˙ )
大我は気分が最下層まで下がっている僕を教室前側の窓際まで連れていくと、知り合いであろう3人に僕を紹介した。
「よろしく。」
運動部男子の滲み出る陽の雰囲気に少し怯えながら、僕は半ばぶっきらぼうな感じでそう言った。
言ってすぐに後悔と反省をした。初対面の人たちに愛想悪く接してしまったのだ、ましてや相手は学年きっての眩しい奴らだ。やってしまった。
繋げる言葉も思いつかず、立ち尽くしていると彼らはそんなことなど気にしていようで普通に話しかけてきた。
「よろしくな!俺は森本 優吾。部活はバスケ。遊びで休日とかにストリートもやってるから、よかったら一緒にやってみようぜ!」
爽やかな感じで話しかけてきたこの色白なイケメンはバスケ部のエースらしく、県選抜にも選ばれるくらいの凄腕らしい。身長も180cm以上はあるだろう。彼女はいないらしいが、こんな優良物件なら引く手数多だろうに。
「俺は康二、深澤 康二な。部活はバレー部で、趣味はドラム。一年間よろしくな!」
次に話しかけてきた茶髪マッシュのスリムイケメンは身長が188cmもあるらしい。その身長を生かし、バレー部ではミドルブロッカーで1年の頃からスタメンとのことだ。趣味はドラムと言っていたが、ギターも、キーボードもできるとの事。ただ、バレーで指を怪我しやすいから、ドラムが一番やりやすいらしい。なんだよ、このハイスペック野郎。次元が違い過ぎて、嫉妬すらしないわ。
「最後は僕だね。名前は目黒 照。部活は優吾と
同じバスケ部だよ。よろしくね!」
最後に話しかけられたのが茶髪ミディアムヘアの童顔イケメン野郎だ。身長は170あるかないかくらいだが、目黒君もバスケ部のスタメンらしい。たまにモデルの仕事もしているらしく、オシャレ感が凄い。制服もオシャレに着崩していて、モテる雰囲気を常に醸し出している。
初対面同士の自己紹介も終わり、普通の会話に戻る。と言っても僕が話すことはあまりなく、たまに話を振られるがほとんど彼ら4人の話を聞いているだけだ。
客観的に見て思うが、今の状況での僕の異物感がすごい。
僕でも知ってるくらい学校でも有名なイケメン達。その中に1人だけ冴えない見た目で会話を聴いてるだけの自分。
はっきり言ってめちゃくちゃ邪魔だ。どこを見てもイケメンだらけ。僕も身長は178cmあるが、それでも、目黒君を除いて全員僕より身長が高い。会話の中から醸し出される一軍感と、性格の良さに圧倒されていく。
何一つ勝ってないじゃないか。
元々誰かより優れているなんて傲慢さは持ち合わせていないが、ここまであからさまに自分の醜さを見せつけられると劣等感で吐き気がしてくる。
嫌でも目立ってしまうこの状況は普段周りの視線に晒されていない自分からすれば苦行だ。
思えばこの教室入ってからずっと好奇の目に晒されている。
別にこの4人を見ているだけであって、僕を見ているのはついでみたいなものなのだろう。
それは分かっている、分かっているのだ。でも頭では理解していても、心は『はい、そうですか』と簡単には解釈してくれない。
『ダサい見た目の癖に調子にのってやがる』と思われるのではないかと僅かな視線に怯え、『邪魔だよあいつ』と罵っているのではないかと、見る者の口の動きに恐れる。
自分でも自意識過剰とは分かっているが、分かってすぐにやめられるのなら、とっくのとうに人はみな聖人君子に成り果てている。
慣れない視線を遮るように俯き、HRが始まる時間になるまで4人の会話をただ聞いていた。
お読みいただきありがとうございます。
評価のほどよろしくお願いします。