⑤
自分が書きたいように書いているので、その時の気分で話の雰囲気が大分変わってしまうのはどうしたら良いんでしょうか?
教室に入ると既に結構な人数がおり、各々元からの知り合いであろう人達の島がいくつか形成されていた。
その中でも1番目立つまさに一軍といったような4、5人の女子グループの中に、僕の彼女である長谷川紗希がいた。
その姿を見るまでは僕の中にまだ「嘘であってくれ」なんて願う諦めの悪い気持ちがあったが、実際に現実を見せられるとそんな夢も強制的にシャットダウンされる。
通学時の会話のこともあり紗希に気まずさのあった僕は、せめてバレないようにと大我の影に隠れて自分の席に着こうとした。
だが、大我のやつは俺の気持ちにはつゆ知らず、教室に入ると開口一番にデカい声で喋り出しやがった。
「よぉ、みんな。俺サッカー部の松村大我。これから一年間同じクラスだからよろしくな!」
正に陽の人間といったところだろうか。
知らない人間もいるであろう空間に入って速攻で自己紹介かますなんて、僕からしたらイカれてやがる。
そんなことをしたら、クラス中の全員がこちらに目を向けてくる。
最悪だ。恐る恐る紗希がいた方向に目を向けると彼女もこちらを見ていた。
若干目があってしまった気もする。
紗希が微笑むかのようにこっち見てきた姿に、一種の恐怖すら感じた。
自分の中で今のは無かったことにして、目を背けるように下を向く。
逃げることも必要な時がある、そう自分の行動を正当化しようと思い込ませた。
そんなことを考えているとクラスの中で、こんな声が聞こえてくる。
「大我くんだぁ!」
「マジで! ちょーイケメン!」
「今年のクラス。ホントさいこー!」
クラスの女子が大我を見て色めき立っていた。
去年も観てきた光景だが、あらためてあいつの人気の高さを知らしめられる。
「おぉ大我じゃん!なんだ同じクラスだったのかよ。」
「大我いんのかぁ笑
このクラス当たりだな。」
「大我と同じクラスなら面白くなりそうだわ。」
教室前側の窓際にいた男子の一軍らしき奴らが話しかけてきた。見た瞬間僕でも分かるくらい学校でも有名な人達だった。どうやら大我とは知り合いらしい。
「おぉー、優吾に康二、照もいんじゃん!」
大我が話しかけられた方向を向き答える。
目立ちたくない僕は、そーっと大我のそばを離れ、自分の名前が貼られている席に行こうとすると、大我が俺の意図に反してこう言ってくる。
「あいつら、面白いやつだから歩に紹介するよ!
こっち来いって。」
「えっ!」
僕の気持ちはお構いなしといったところだろうか。有無を言わせずに大我は俺を引っ張っていく。
嫌だ、めんどくさい、目立ちたくない、喉の手前までこみ上げてきたそんな気持ちを無理やり飲み込み、僕は引っ張る勢い身を任せた。
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