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自粛生活って意外と快適。
校舎の入口前に生徒の人集りができている。
おそらく新しいクラスの掲示がされているのだろう。
喜んでいる人もいれば、ため息をつく人もいる。
それもそうだろう、高校生の大事な一年間を一緒に過ごす人達なのだ。
その発表をされるイベントがあったら飛びついて観に行くのも理解できる。
そしてその一年間同じ空間を過ごす相手が勝手に無慈悲に大人たちの気まぐれで決められる。
子供が社会の不条理に気付かされる瞬間の一つだろう。
かく言う僕もそのイベントにドキドキしている1人だ。
喧騒をかき分け各クラスごとに名前の書かれた紙の中に自分の名である『宮村 歩』の字を探す。
隣を歩いていたはずの紗希は校門を過ぎたあたりで紗希の友達であろう女子に手を引かれていなくなった。
1人クラス分けの紙の前に立っていると後ろから声をかけられた。
「よぉ、歩!
今年もまた同じクラスみてぇだな!
一年間よろしくな!」
話しかけてきたこいつの名前は松村 大我。
僕と同じサッカー部だ。社交的でノリが良いやつだから、クラスでも人気だった。
こいつとは1年生の時も同じクラスだった。
『マツムラ』と『ミヤムラ』で席が前後だったため、よく話しかけられた事もあり、よくつるんでいた。
つるんでいたと言っても、僕は社交的じゃないし大我に連れまわされていた感じだ。
こいつも紗希と同じく眩しいタイプの人間だ。一緒に居過ぎると劣等感で消えてしまいたくなる。そんな奴とまた一緒なのかと思うと気分は下がる一方だが、彼にとってはお構いなしな様で、浮かれた声で話しかけてきた。
消えたくなる気持ちを抑え、僕は彼に返答する。
「そうなのか、よろしくな。
っで、僕らのクラスは何組なんだ?」
「ん?まだ見つけてねぇーのか⁉︎
C組だよ。ほれ、あそこ!」
2-Cと書かれた紙の下を見ていくと確かに『宮村歩』と書かれていた。
他に誰がいるのが興味がてらに見ていると見知った名前があった。
『長谷川紗希』
その字を見て僕はしばし固まってしまった。
嘘だろぉ、今日ほど運命から見放された日はあっただろうか?
なんでよりにもよって彼女と同じクラスなんだ、
僕が何をしたっていうんだ、何故こんな仕打ちをする。
さっきから大我が何か話しかけているが、返答する余裕は今持ち合わせていない。
これから一年間の自分のことを思い、誰にも向けられない怒りと絶望を抱え教室に向かった。
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