12
竜の炎は不愉快だ。魔力を焼かれるたびに皮膚の上を炙られるような不快感がある。
「竜帝があなたを助けにくるみたい、おにいさま」
女神は魔力の水晶に、そっとふれる。冷たい。
「かわいい子どもだったわね、覚えてるわ。おにいさまの影に隠れて、いつもわたしをにらんでた。最初はそうじゃなかったのに、どうしてきらわれちゃったのかしら……」
考えてもしかたがないと、クレイトスは首を小さく振る。
「でも、あなたを助けられるのはわたしだけよ」
口にしてみると、まるで、兄そのものを手に入れたような感覚がした。
ずうっといっしょ。ついに自分はその願いを叶えたのかもしれない。
でもクレイトスは知っている。兄はクレイトスの腕の中にはいない。
だって消える直前のあのときでさえ、兄は自分を見てはいなかった。
あんなにしあわせそうな顔で、満足げに、自分を無視した。
――こんな結末、認められるものか。
このまま兄の望みどおり、消えさせてなるものか。最初から最後まで徹頭徹尾無視されたまま、終わってなるものか。
愛を解さないあなたを、わたしはまだ、ゆるさない。




