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やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中  作者: 永瀬さらさ
第九部

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 差し出された水を飲み干した男は、笑ってつぶやく。


「いるかもと思ったけど、ほんとに最前線にいるとはな。さすが期待を裏切らねーわ、リステアード隊長は」


「軽口を叩けるなら大丈夫だな、ヒューゴ曹長。脱出できたのは君、ひとりか」

 相づちを返したヒューゴは、ベイルブルグの方向を見た。

 見張りのために小高い丘に張られた陣営に、夜明けを知らせる日が差し込んでくる。夜明け前の闇に紛れて、彼はここまで、竜にも見つからず、たったひとり逃げ出してきたのだ。


「仲間も部下は全員、中だ。残りたかったんだが、俺が適任だって言われて……うまく脱出できても、敵にも味方にも殺される可能性あるから」

「適切な判断だ。君はハディスにも面識があるからな」

「誤情報を渡しても、首を飛ばされる率がさがる?」


 笑って尋ねるヒューゴに、リステアードは真面目に頷き返した。ヒューゴが呆れる。


「そこは竜帝サマはそんなことしないって否定し――」


 再度水を飲もうとしたヒューゴが咽せる。やはり無理をしているのだろう。リステアードは救護班を呼ぶ。


「少し休め、報告はそれからでもいい」

「――竜神ラーヴェの居場所をつかんだ」


 リステアードを引き止めるように、ヒューゴが腕をつかんできた。リステアードは驚いて振り向く。


「ラーヴェ様の? だが、ラーヴェ様の姿は見えないだろう」

「白銀の竜だろ。金目かどうかはわかんなかったが……たぶん、天剣と入れ替わって……俺だけじゃない、他にも見てる奴がいる。小さな竜だったが、あれは竜神だ。神様だよ」


 気のせいだと笑うには、ヒューゴの瞳に強い畏怖と確信が浮かんでいた。


「見えるのがいいことか悪いことかは判断つかねえが、早く助けたほうがいい」

「もちろん作戦はいくつか準備をしているが」


 ぐっとリステアードの腕を強く引いて、ヒューゴが声を潜める。


「なあ、どっちが現実なんだ?」


 リステアードまばたき、ヒューゴの目を見る。ヒューゴは自嘲気味に告げた。


「ベイルブルグは今、そういう状態だ」

「……了解した。申し訳ないが休みなしでノイトラールに移動し、報告してもらう」

「そうしてくれ。それがいい……なあ、竜帝は……」


 俺が知ってる竜帝だよな。


 祈るように目を閉じるヒューゴを支えてやりながら、リステアードは唇を噛み締め、尖塔だけが見えるベイルブルグをにらんだ。


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― 新着の感想 ―
早く続きが読みたいです!
現在のハディスを知ってる筈のヒューゴでさえ、”どっち”と悩んでしまう状況だとすると、あまり時間的な猶予は無いかもしれないですね…
ああ、ヒューゴたちも思い出しちゃった人たちか
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