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最後尾につく形で、マイネが悠々と飛んでいる。昨夜、月を見あげながら『これから自分たちはいかに強くなるか』をテーマに語り合ったのがよかったのだろう。
既に予定にあった街道を横に見るルートからはそれ、旧街道の上空に入っていた。
先頭は、最後まで反対していたロルフだ。せめておりる場所くらい決めさせろと言われて、先頭を奪われた。面倒くさがって違和感を見すごされないといいのだが、ここにきたこと自体、正解かと言われたら頷けないので、強くは言えない。
だって、想像してしまうのだ。
颯爽と竜を駆るミレーが部隊を率いて功績をあげてきたら、きっとハディスは――
「あーーーーーーーーーー!」
「ど、どうしました竜妃殿下」
「い、いえ、何も……あれ?」
視界の端に煙を捕らえたジルはまばたく。
街かと思ったが、それより規模は小さい――村だろうか。
ジルたちが飛んでいる旧街道の億、古びた橋を渡ったその向こうに、木々にまざって屋根がぽつぽつ見える。どうもそこからあがっている煙のようだ。
横目で眺めていると、先頭を飛んでいた竜たちが、角度を急に変えた。
その集落に向かって、高度を落としていく。慌ててジルは横で飛んでいるフィンに尋ねた。
「おりるんですか? 竜が飛びたがらないのって、もうちょっと先ですよね」
「はい。でも、休憩にはちょうどいい頃合いですし……」
口調は優しいが、フィンの表情が険しい。緊張が伝染して、マイネの手綱を握り直した。
「マイネ。皆もローも守らなきゃいけないんだ。慎重にいくぞ」
小声で話しかけると、マイネは頷くように顎を引き、先頭に案内されるまま集落から少し離れた川辺にゆっくりとおりた。マイネからおりたジルに、ジークが近づいてくる。カミラとロルフは既にいない。
「あのふたりは村のほういった。ロルフじいさんがぎっくり腰だって設定だとよ」
「わかった。――でも、どうしてロルフはそこまで警戒するんだ?」
外側から見る限り、どこにでもありそうなただの小さな集落だ。
「地図にはあんな村、ないんだとよ」
大剣を背負い直して、ジークが端的に教えてくれた。
 




