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やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中  作者: 永瀬さらさ
第四部

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40

『分断されたな』

「ああ。でも支障はないよ。そのほうが戦いやすい」


 まだ暗い空を見あげながら、ハディスはラーヴェに応じる。

 ひとりきりだ。元々少ない人数だったが、綺麗にハディスだけリステアードたちと引き離された。囲まれていることには気づいていたが、おそらく最初からこうすることを見越して攻撃してきたのだろう。深夜から始まった押しては引く攻撃は、見事にハディスを孤立させた。


「ナターリエは? ローザはもう南国王の宮殿に着いてるはずだ」

『いんや、まだ連絡はないな。……それにしても、攻めてこないなぁ。サーヴェル家ならこう、もっとガッと食いついてくると思ってたんだが』

「そうだね。兵もサーヴェル家の私兵だけみたいだ。国軍も出てきてないし」


 言いながら、ふと気づいた。もし、あちらがまだハディスがラーヴェ帝国側にローを通じて指示を出せることを知らないとしたら――ハディスさえ足止めすればラーヴェ帝国軍は動かないと考えているとすれば、辻褄は合う。

 ただ、それはすなわち。


『黙ってくれてんだな、嬢ちゃん。まあ、ローザを見られたらどーせばれるけどな』

「……。僕は信じない。どうせ開戦が嫌だとかそんな理由だ」

『はいはい、わかってるよ。……変なことになってないといいけどなぁ、嬢ちゃん』

「へ、変なことってなんだ」


 三角座りをしていたハディスの胸から、ラーヴェがするりと出た。


『だぁってさーお前を悪者にして、実家に情けをかけさせるってさ。竜妃の力を削ぐ作戦としてはあまりに感情論すぎないか? まー女神らしいっちゃらしいんだけど、なんかある気がするんだよな、それ以外にも。女神は散々竜妃に負けてるから、いい加減何か対策立ててもおかしくないだろ』

「……ジルは竜妃をやめたいだろうから、いいんじゃないか。なんでも」

『お前さあ、こういうとき変な意地はるのやめたほうがいいと思うぞ』

「変な意地なんか張ってない。僕は――」


 言い返そうとした言葉が、詰まった。ちょうど気にしてしまったのも悪かったのだろう。同じことに気づいたラーヴェが、ハディスと同じ方角を見る。南の、遠く離れた方角だ。

 竜妃の神器の気配が、消えた。


『……おい、ハディス……』


 何かあったのか。それとも、なんらかの方法で竜妃の指輪をはずしてみせたのか。


「……気にしない。今、僕が気にすべきはそこじゃない」

『だけど、女神が嬢ちゃんになんかしたとしたら』

「竜妃の指輪があろうがなかろうが、ジルは僕が選んだ竜妃だ」


 立ちあがったハディスに、ラーヴェが目を丸くしたあと、苦笑いした。


『……そうか。そうだな。うん、それでいいんだよ』

「なんだ、意味ありげに。いいから準備しろ。くるぞ」

『あー俺の出番か、ついに』

「兄上に居場所を知らせるにもちょうどいい。それに、義父上になるひとだ。礼儀は尽くす」


 するりとラーヴェが右腕に巻き付いて、姿を変える。

 銀色に輝く天剣を握ったその瞬間を待ち構えたように、空から魔力が降ってきた。夜空の星をすべて降らせたような膨大な量だ。

 さすがサーヴェル家。

 笑ったハディスは、地面を蹴って飛び上がる。そして背中に向けられた拳を、振り向きもせず天剣の柄で弾き返した。普通ならそれだけで地面に叩き落とされるところだが、相手は体勢も崩さず蹴りが飛んでくる。よけて距離を取ったところで、ラーヴェが呆れた声をあげた。


『天剣に素手で戦いを挑むか、普通!? いくら魔力があるからって、度胸ありすぎだろ』

「さすが、今の一撃をよけられるとは素晴らしい反射神経ですな」


 にこやかな声に、ハディスは目を向ける。

 屋敷に招いてくれたときと同じように、ビリー・サーヴェルはにこにこしていた。ただし、その肉体は、以前見たふくよかな紳士のものではない。


『じょ、嬢ちゃんの父親、だよな……? 体積変わってないか!?』


 魔力による筋力の増強だ。骨格も変えているかもしれない。


「一応、確認したいのですが。ビリー・サーヴェル辺境伯で間違いないですか」

「そうですよ、竜帝陛下。初めましてではありません」


 周囲の気配をさぐりながら、ハディスはビリーと向かい合う。口角があがった。


「おひとりで?」

「ええ。領民たちもきたがったのですがねえ。何せ竜帝です。誰がいくか選別も血で血を洗う争いになってしまって。年甲斐もなく我こそはと声をあげる者やら、血気盛んな若者やらで収集がつきません。私ひとりの歓待になってしまいますが、ご勘弁ください」

「お気遣いなく。あなたとぜひもう一度お話をしたかったので、十分です」

「はて、何かご用がありましたかな」

「本音で話せなかったでしょう、ここまで。ぜひおうかがいしたいことがあって」


 にっこり笑って天剣の剣先を突きつけると、鍛え抜かれた上半身をさらしたビリーは隙のない構えをとった。それを見据えて、ハディスは大事な言葉を口にする。


「娘さんを僕にください」

「断る」


 清々しいまでの即答だ。そのまま、互いの魔力が衝突した。


読んでくださってありがとうございます。感想やブクマ・評価などいつも励みにさせて頂いております。

そろそろ決着間近なので、更新時間は朝7:00のまま、一応の決着がつくまで連日更新したいと思っております。

色々あった4部ですが、最後までおつきあいいただけたら嬉しいです。


また、念のため再度の告知を。

2/25にて「やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中」原作3巻の購入特典「プレゼント交換心中作戦」、無料視聴版「ふたりの出会い」「わたしの陛下」のオーディオドラマの視聴が終了いたします。

書籍を購入されていなくても、なろうの作品ページ下部にあるリンクから特設サイトに飛べば無料視聴版が聞けますので(こちらも2/25で消える可能性が高いです)ぜひ!ジルが料理を燃やす話です。

背後に気をつけ、イヤホンをしてお聞きください。いや本当に。


他にも、明日2/18に「聖女失格」という別作品の書籍版が発売されます。こちらは集英社オレンジ文庫さんからの発売です。宜しくお願い致します。

1月発売だった「勘当されたので探偵屋はじめます!」もそろそろ発売一ヶ月で本屋さんからなくなっていくかもしれないので、初版に入った特典SSがほしい方はお早めにどうぞ。


長いお知らせになってしまいましたが、ジルたちも引き続き応援して頂けたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「竜妃の指輪があろうがなかろうが、ジルは僕が選んだ竜妃だ」 素晴らしいんだけど、それはジルに直接言ってっていう 歴代竜帝もこういう感じで、それを竜妃に直接言え!って感じだったんだろうなと想像…
[良い点] 指輪があろうがなかろうがジルは僕が選んだ竜妃だ。 娘さんを僕にください。 ハディスカッコいい‼️よね。たとえ、エプロンが似合っても、最高です。 [気になる点] 何で、サーヴェル家はそんな…
[良い点] パパかっこいい。 ジルの両親がかっこよくない訳ないよね、うん。 クレイトスもラーヴェも王家は歪だけど、 サーヴェル家はそんな世界の光だと思う。 読者にとっても笑
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