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え?悪役令嬢の断罪?いえ。……***

え?悪役令嬢の断罪?いえ。ヒロイン断罪の時間ですわ。







きらめくシャンデリア。

光り輝く大ホール。

着飾った少年少女。

卒業という一大イベントを祝うパーティ。

そのど真ん中でそれは行われた。



「フリージア・ジェネラル。お前との婚約を破棄する!!」


「……………」


私はそう発言した男を馬鹿を見る目で見つめ返した。


やっぱりこうなるのか、と思いながら。



*・*・*



「フリージア。貴方はこの国の王太子様の婚約者になるのです。嬉しい?」


嬉しい?なんで?王太子妃なんて面倒くさいだけじゃない。


「でもねフリージア。これは政略的婚約なのよ。相手を愛してしまったら節度を持ってね」


政略的婚約。

あ、じゃあ相手を好きにならなくてもいいのね。


「わかりました お母様。きっと好きになることなんてないと思いますが、節度を守れるよう頑張ります」


私は笑顔でお母様にそう告げた。


「………流石私の娘だわ。現実的……」


お母様はいい笑顔でそう言ったのだ。



あ、申し遅れました。

私、フリージア・ジェネラルと申します。

この国の公爵家の娘でございます。

お父様とお母様、お兄様の家族4人と沢山の使用人の方々と暮らしております。

ひと月前に8歳になりまして、同い年の王太子様と婚約が決まりましたの。


王様、王妃殿下に愛されているそうですわ。

勿論お父様もお母様もお兄様も、私を愛してくれます。勿論使用人の方々とも仲良くやれていると思いますわ。


ただ、私のお母様は貴族としては少し変わっている人みたいですの。

夢見がちで傲慢な貴族の方々が多い中、お母様は現実的で使用人方とも分け隔てなく接する人ですの。

お父様はお母様のそんな所に惚れたらしいのです。

だから、我が公爵家の教育方針も貴族らしくないのですわ。


『貴族だからって偉いわけではない。自領民の方々あっての私達。貴族平民分け隔てなく接しなさい。でも、馬鹿な貴族達に舐められないように。私達が馬鹿にされたら領民達も馬鹿にされたと思いなさい。何かやられたらやり返しなさい。タダでやられる事は許しません。夢を見るのはいいけれど、必ず最後には現実を見なさい。』


これが家訓。

ね。あまり貴族らしくないでしょう?

でもね、私、この家訓大好きなの。

特に、何かやられたらやり返しなさいって所。貴族らしいでしょう?




*・*・*



「はじめまして。フリージア・ジェネラル嬢。僕はシェレル・スターチェスです。これからよろしくお願いしますね」


お母様に連れられて顔合わせの会に行きましたら無駄にキラッキラした男の子がいましたの。

絵本の世界で出てくるような金髪碧眼の王子様。輝く金髪にキラキラ笑顔。

私、こんなキラキラした方と将来結婚しなければなりませんの?

………疲れそうですわ。

あぁ、ちなみに私の色は水色の髪に、濃い紫の瞳ですの。

髪の色はお父様から、瞳の色はお母様から受け継ぎまして、お兄様は灰色の髪に黄色い瞳ですの。髪色はお母様、瞳の色はお父様からでして、ちゃんと両親の色が入っていて安心しますわ。

….あ、話がそれてしまいましたわね…。


「フリージア・ジェネラルと申します。

これからよろしくお願い致しますわ。王太子殿下」


私は軽く王太子殿下に頭を下げた。


「王太子殿下は堅苦しい。シェレルと呼んでくれて構わない」


「わかりましたわ。シェレル殿下」



それからにこやかにお茶会を楽しんで帰宅した後、お母様に


「私、あんな物語のようなキラッキラの王子様となんて結婚したくない」


と言ったら凄く笑われた。


…なんかおかしな事言ったかしら。




*・*・*





私は今領内で流行っている、『悪役令嬢とヒロインが出てくる夢物語』を手に、教室から中庭を眺めていた。


そこにはキラキラ王太子殿下と、ピンクブロンドの輝く笑顔の少女が仲睦まじく談笑していた。


私現在、15〜18歳までが通う学園の二学年に在籍していますの。

貴族は勿論頭のいい平民やお金を持っている平民も通う学園ですわ。

『貴族も平民も分け隔てなく』を校則にしているのですが、流石に守らなくてはならない節度はあるでしょう。


未婚の女性は無闇矢鱈(むやみやたら)に殿方と接しない。婚約者のいる方とは必要以上に親しくしない。などは守らなくてはならない常識だと思うのですけどね。

あのピンクブロンドの方と言ったら……。


私の婚約者である王太子殿下と仲良くするなら別に構いませんわ。私、嫉妬しませんし。

でも、ほかの婚約者持ちの殿方ともベタベタと………。


「分け隔てなくといっても、やっぱりなんだか……不潔ですわ」


何人もの殿方と仲良くするだなんて……。

まるでこの物語のヒロインみたいね。

私は悪役令嬢といった所でしょうか?

それにあのピンクブロンドの彼女はいつもニコニコへらへらしていて、都合が悪くなると泣くらしい。

こちらが悪くなくても彼女が泣けば、こちらが悪者になるんだとか。


「………なにもないといいのですけどね」


もう一度窓から中庭を見ると2人の姿は無かった。


「……王宮に、勉強しに行かないと…ですね」


めんどくさいな と漏らして本を閉じ教室を後にした。



*・*・*



それから一年とちょっと。

冒頭に戻るわけである。



「………王太子殿下?何故、婚約破棄なのですか」


私は王太子殿下を見据えていった。

殿下の後ろにいるピンクブロンドの女の子がブルブルと震えだした。……なんですの アレ。


「何故?何を今更。フリージア お前は、アリーナに嫉妬して、数々の悪質な行為をしだだろう。アリーナが平民で、自分は貴族だからって」


「……嫉妬に、悪質な行為…ねぇ」


私が手を口に当てながら呟くとピンクブロンドの女の子が泣き出した。

あ、名前アリーナって言うんですね。初めて知りました。

それに平民ですか。

平民と王族が結婚…。

周りの方は認めてくれるんですかね?


「アリーナ 泣かないで。大丈夫だから」


殿下は泣くアリーナを慰める。


「ふぇっ。は、はい…。でも怖かったんですぅっ」


ポロッポロ×∞涙を流す。

……馬鹿なんですかね、あの子。


「…………はぁ。殿下。私の家の家訓を、ご存知ですか?」


「家訓?そんなの知るわけないだろう」


…ですよねぇ。

でも、婚約者の家のことくらい知っておけよと、思うのですけどね。


「『貴族だからって偉いわけではない。自領民の方々あっての私達。貴族平民分け隔てなく接しなさい。でも、馬鹿な貴族達に舐められないように。私達が馬鹿にされたら領民達も馬鹿にされたと思いなさい。何かやられたらやり返しなさい。タダでやられる事は許しません。夢を見るのはいいけれど、必ず最後には現実を見なさい。』ですわ。

だから、殿下の言うように身分にモノを言わせて彼女をって言うのは不可能なんですよね。そんなことをしたら私が家を追い出されてしまいますわ」


「そ、そんなの言い訳でもなんでもないからな。そんなことで自分のやったことがなくなると思うなよ」


殿下は私を冷たく睨みつけて言い放った。


「そ、そうですぅ。私、凄くこわかったんですぅ。やめてって言ってもやめてくれないし、いくらシェレル様が好きだからって、やっていい事と悪い事があるとおもうんですぅ……」


アリーナはシクシク泣きならがらそう言う。

やっていい事と悪い事?

どの口が言っているのよ。


「やっていい事と悪い事?それ、貴方が言えますの?」


「え……?」


何を言っているのかわからないって顔しないでくれます?

イライラしますから。


「貴方は、私の婚約者を好きになって奪ったんですよね?それは、やっちゃいけない事にはならないのですか?

婚約者がいる人を好きになってしまうのは仕方がない事ですもの。

でも、それ以上はしてはいけないのではないでしょうか。それに貴方、殿下だけでなく、他の婚約者がいた男の方にも手を出していましたわよね」


「そ、そんなっそんなこと……」


アリーナはぼろぼろと涙を流してその場にうずくまってしまった。

その姿は庇護欲を誘うのだろう。

周りにいた男達は一斉にアリーナに駆けつけようとした。

でもそれを私は睨みつけて辞めさせた。

『勝手に入ってこないでくれます?』と。


「フリージア!!お前!見苦しいぞ。そんなにアリーナを虐めて楽しいか!?いくら俺が好きで、嫉妬したからって言っていい事と悪いことくらいわかるだろ!!」


殿下はアリーナを抱きしめてすんごい形相で睨みつけてきた。

おかしな事を言いながら。


「…殿下。何を勘違いしているのでしょうか」


「は?勘違い?」


私は手を口に当てながら笑う。


「私、いつ、殿下を好きだなんて言いました?」


「……は?」


だから、何言ってるかわからないって顔しないでくださいよ。

そんなに理解力が乏しいんですか。


「殿下は先程から、私の行為は嫉妬による為だと決めつけておりましたが何故でしょうか」


「そんなのお前が俺を好きだからに決まってるだろ」


殿下を好きだからに決まってる。

ふふっ。おかしいですわね。


私は口元は笑ったまま冷ややかな目線を殿下に向けた。


「先程も言いましたよね。私、殿下を好きだなんて言ったことないのですけれど。

何処からそんな自信が来るのでしょうか。

私、殿下のことはどーとも思っておりません。好きでも嫌いでもない。……あ、今は嫌いですかね。こんなに馬鹿な方だとは思いませんでしたわ。それに、そこの…アリーナ、さん。貴方いつまで泣いているんですか。

泣けばいいと思ってるんですか。泣けば、慰めて貰えて許してくれると。それ、偉い方々に通用するといいですね。ま、無理でしょうけど。世の中そんなに甘くないですよ。まぁ、だからと言ってへらへらしても駄目だと思いますけどね」


「……は?」

「……え……?」


2人とも呆けた顔して。どうしたんですかね。


婚約破棄?勿論ウェルカムですよ。

だってこんなキラキラ馬鹿王子。こっちらから願い下げですわ。


「婚約破棄はこちらからお願いしたく思いますわ。この足で陛下に進言しに行きますので。

これから2人で頑張ってください。

アリーナさん。平民出身で大変かと思いますが頑張ってくださいね。貴族世界で泣きが通用すると思わないように。あと、お勉強も頑張ってくださいね。私、陰ながら応援していますわ。

あ、殿下。私が何故殿下の事をあの茶会でしか名前で呼ばなかったと思います?

私、お恥ずかしながらどーでも良いことは覚えていられなくて…。申し訳ございません」


私はオブラートに包んだつもりで、貴方の名前はどーでも良かったから覚えていなかった。と言ってその場を後に………しようとした。が、馬鹿王太子に止められた。


「は。ははははっ!フリージア。お前、俺に愛されなかったからってトチ狂ったか」


トチ狂ったのは貴方でしょう。

いきなり笑い出して……頭大丈夫ですか?


「…………はぁ」


「俺はな、お前が嫌いだった」


いきなり独白を始めたのですけれど。

これ、聞いていないとダメですかね?


「俺を冷たい目で見て、いつまでたっても殿下殿下殿下と名前を呼んでくれない。何故だ。何故フリージアは俺のことを見てくれないのだ。俺はこんなにもフリージアを見ていたのに!!」


いや、冷たい目(殿下比)で見ていたんでしょ?私。ならいいじゃん。


「そんな時、暖かく包み込んでくれる彼女と会ったのだ!彼女に惹かれるのは当たり前だろう。フリージアを蔑ろにして彼女と共に過ごした。なのに、何故フリージアは俺に苦言を申してこないのだ!」


………。

いや、何が言いたいんですかね。

殿下アリーナの名前呼ばなくなったし。


「俺は、フリージアの中ではどうでもいい存在…なのか?」


さっきそう言ったじゃないですか。


「…………で?殿下は一体何を言いたいのですか?私にはわかりかねます」


「俺を。俺自身を見てくれ」


「はい。見ました。それで?」


「何か、言いたいことはないのか?」


今日も無駄にキラキラしないでくれます?

……じゃなかった。


「……殿下は女を見る目がないのですね。

そこの彼女。何人もの婚約者がいる殿方とベタベタベタベタと。見ていて汚らわしかったですわ。都合が悪くなると泣くところも全て。そして、その彼女と仲睦まじくしている殿下も汚らわしい。早く私の視界から消してしまいたいのです。だから、私、帰っていいですか?」


私は冷めきった目をして殿下をまっすぐ見て言い切った。

もういいや。不敬罪でもなんでも。


「そうじゃなくて、」


殿下は悲しそうな顔をする。

あ、私がちゃんと2人を祝わなかったからかな。


「御二方。おめでとうございます。晴れて邪魔者である私がいなくなるのです。これからも仲睦まじく、国を守ってくださいな。

まぁ、私は汚らわしい御二方の姿は見たくないので領地に帰らせて頂きますが。

遠くから幸せを願っていますわ」


私はニッコリ笑った。

周りからは感嘆の声がする。

私よくやったわ。


殿下は今にも泣きそうな顔をして私を見ていたけども、アリーナはそんな殿下に気付かずその、豊満な胸を殿下の腕に押し当てて幸せそうな顔をしていた。


「フリージア。君はどうやったら俺を見てくれる…んだ」


殿下を見る?

私は殿下を見ていますよ?

何が不満なんですか。


「………まぁ、そうですね。

皆様が認めてくれる素晴らしい方になったら…(皆さん殿下を見てくれるんじゃない)ですかね?」


「……そうか」


「……はい?」


お気に召す答えだったようでなによりですわ。


では、本当に、今度こそ。


「では、皆さま失礼致しますわ」


私は笑顔でその場を後にした。





その後領地で、あの後にアリーナが殿下と周りの殿方の婚約者に糾弾されて投獄された。

周りの殿方は最後までアリーナをかばい続けて勘当されたと聞いた。



「いや、じゃああの茶番はなんだったんですの」




*・*・*




私はまだ知らない。


優雅に独身生活を貫いていた頃に、同じく独身で政を素晴らしい手腕でまとめ上げ、民に賢王と認められた殿下が、無駄にキラキラを倍増し、色気をプラスした状態で迎えに来ることを。


その腕に捕らえられた私は二度と逃げられない事を。







フリージア…非転生者。某乙女ゲームの悪役令嬢だった。母の教育の賜物で悪役令嬢とは反対の性格に成長した。母大好き(マザコンじゃないよ)。

キラキラした目の疲れそうなものが嫌い。

シェレルの事は本当になんとも思っていなかった。再会したシェレルはキラキラ倍増で吐き気を催した所で純潔を奪われる。

現在2児の母。シェレルを見るたびに死にたくなる。


フリージア母…転生者。フリージア父をみて、あ、これあの乙女ゲームの世界に似てね?と思い至る。それから自分をみたら悪役令嬢の母親じゃん。となりまともな悪役令嬢を育てようと決心する。息子が生まれた事で乙女ゲームの世界に似てると確信した。

最近は息子がフリージアにべったりで結婚しなくてとても不安。

フリージアがシェレルに捕まってからは別の意味で不安で仕方ない。

兄が殴り込みに行かないことを願っている。


シェレル…非転生者。某乙女ゲームのメイン攻略者。ザ王子様。初めてフリージアを見た時に恋に落ちる。

が、フリージアが自分を見てくれなくて拗らせる。フリージアにはとても執着深い。

アリーナを利用するもフリージアは自分を見てくれなかった。フリージアと再会してからは愛が重い。既成事実が欲しい。フリージアとの子供がたくさん欲しい。


アリーナ…非転生者。某乙女ゲームのヒロイン。自分が中心で世界が回っていると思っている。

ただのキチガイお花畑。

自分が泣けば全て治ると思っている。

天然のヒロイン気質。

イケメン大好き。

なんで自分が投獄されたかわかっていない。

いつかシェレルが迎えに来てくれると本気で信じているがそんな日は二度と来ない。

可哀想だけど可哀想に見えない。不思議。


アリーナがお花畑すぎてあまり断罪?にならなかった……。


沢山の方に読んで頂ければシェレルsideのお話もあげようかなぁと思ってます。

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] oh...王太子さんレイPはちょっと...まあもともと婚約者だし誤解させてたとは言え言った条件をこなしたんだからギリギリセーフじゃない?
2019/07/28 08:51 退会済み
管理
[一言] >アリーナがお花畑すぎてあまり断罪?にならなかった……。 後書きのその後はともかく、作中のアリーナはお花畑と言うより空気ですね。 作中描写的に、『現実的でない(夢をみてる)』のは「現実見…
[一言] いろんな意見があるけど。主人公がハッピーならオッケー
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