【初級者向け】小説執筆のNG&小技九選!
本エッセイでは、私が小説執筆をするにあたって気をつけている点、ひいては小技を九点紹介していきたいと思います。
ここでは一字下げや三点リーダーの打ち方といった基礎から、一歩進んだ部分を解説させていただきます。
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1.文末の「~だ。」「~た。」の連続を避ける。
以下に悪例を一つ挙げます。
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俺は○○××。どこにでもいる普通の男子高校生だ。
「○○くん、先生が職員室に来るようにって言ってたよ」
クラス委員長の△△□□が話しかけてくる。美人で誰にでも優しいクラスのマドンナだ。
しかし、先生から呼び出しとは良い予感がしないな。きっと今日は厄日だ。
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いかがでしょうか。何かすごく単調な文章に感じませんか? では、次に改善版を見てみましょう。
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俺は○○××。どこにでもいる普通の男子高校生だ。
「○○くん、先生が職員室に来るようにって言ってたよ」
美人で誰にでも優しいクラスのマドンナ、クラス委員長の△△□□が話しかけてくる。
しかし、先生から呼び出しとは良い予感がしないな。きっと今日は厄日かも知れない。
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ほんの少しいじっただけですが、文章にメリハリが生まれたと思います。これ以外にも、「~た。」(~だった。~した。など)もうっかりすると連続で使いがちで、これも文章のメリハリを削ぎます。
「~だ。」「~た。」が連続しがちなときは、他の結び方がないか考えてみましょう。
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2.固有名詞の連続を避ける
これも、文章が単調になるので避けたほうが良いです。まずは悪例から。
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「ここ、手強いモンスターがいるっていう洞窟じゃない?」
サラが不安げに言う。
「安心しろ。サラは必ず守る」
俺はサラに力強く宣言した。
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文章が非常に一本調子ですね? では改善版を見てみましょう。
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「ここ、手強いモンスターがいるっていう洞窟じゃない?」
サラが不安げに言う。
「安心しろ。君は必ず守る」
俺は彼女に力強く宣言した。
――――
いかがでしょうか。ずいぶん印象が変わったと思います。このように同じ対象を示しつつ別の言葉で言い換えると、文章にメリハリが生まれます。
念のために書いておきますと、たとえば「彼女」が連続するのもNGです。一節ごとに別の言葉を使いましょう。
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3.「俺」の多用を避ける。
これは私もうっかりやりがちで、あとから見直して清書の際によく修正するのですが、文章に「俺」が乱舞するとこれまた稚拙な印象を読者に与えてしまいます。では、おなじみ悪例から。
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「えっ本当ですか?」
俺は仰天した。こんな話、俺の人生で初である。
「嘘ではないよ。君に社運をかけたプロジェクトを任せたいと思っている」
これは、天の配剤か地の情けか。ついに俺にも運が向いてきた!
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なんだか冗長な感じがしますね? では続いて改善版を見てみましょう。
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「えっ本当ですか?」
仰天だ。こんな話、人生で初である。
「嘘ではないよ。君に社運をかけたプロジェクトを任せたいと思っている」
これは、天の配剤か地の情けか。ついに運が向いてきた!
――――
なんと、まるっと要らないんですね、「俺」(笑)。このように、つい書いてしまいがちな「俺」を可能な限り省くと、読者に冗長な感じを抱かせずに済みます。
もちろん、「俺」が「僕」や「私」でも同じことですよ!
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4.「……」「――」の多用を避ける。
かっこつけた文章を書こうとするとつい書きがちな「……」や「――」。しかし、これを多用するとくどかったり、オサレ(おしゃれを勘違いした痛い状態)な文章になってしまいます。おなじみの悪例を見てみましょう。
なお、このエッセイの「――」は単に文章の仕切りとして使っているだけで、この項目には当てはまりませんので悪しからず。
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「どういうことなんだ……」
……どうやら俺たちは罠にはめられたらしい。
「どうする……? このまま助けを待つか……?」
ジョンが不安顔で言う。
「いや……。それはアテにできない……。脱出方法を考えよう……」
今日もツイてないようだ。やれやれ……。
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はい。もう、一見しただけで「これはあかん」というのが伝わってくると思います。非常にくどいです。カ○ジもびっくりの三点リーダーっぷりです。続いて、改善版を見てみましょう。
――――
「どういうことなんだ……」
どうやら俺たちは罠にはめられたらしい。
「どうする? このまま助けを待つか?」
ジョンが不安顔で言う。
「いや、それはアテにできない。脱出方法を考えよう」
今日もツイてないようだ。やれやれ。
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最初のもの以外全削除したら、ご覧のように大変すっきりしました。このように、三点リーダーは必要な部分に最小限使うのがコツです。
では、「――」についても悪例を見てみましょう。
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「嘘だ。こんなことあるはずがない……」
そうだ、これは悪い夢なんだ――。
――
え? たったこれだけ!? と思われるでしょうが、これだけで恐ろしく痛々しくなります。改善版は以下の通り。
――――
「嘘だ。こんなことあるはずがない……」
そうだ、これは悪い夢なんだ。
――
よほど効果的に使える場面でなければ「――」は使うべきではない、というのが本項のまとめです。
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5.体言止めの多用を避ける。
体言止めとはなんぞや? といいますと、名詞で文が終わる文法のことです。
眼の前に落ちてきた物体、それは剣。
こんな感じの文章のことですね。
そしてこの体言止め、使い方を誤るとこれまた大変痛々しい文章になります。では悪例を見てみましょう。
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「注文するぞ。八十個、チーズバーガー」
レジに下ろしたての紙幣を置く。それは諭吉。
「八十個ですか!? チーズバーガー!?」
驚愕するのは店員。
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思わず、えずきそうになるぐらい酷い文章ですね(笑)。体言止めの多用が、いかに奇っ怪な文章を生むかおわかりいただけたと思います。ではお口直しに改善版を。
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「チーズバーガーを八十個注文するぞ」
レジに下ろしたての諭吉を置く。
「チーズバーガーを八十個ですか!?」
店員は驚愕した。
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実に読みやすい文章になりました。体言止めは効果的に使うとかっこいいですが、くれぐれも使い方に気をつけてください。
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6.倒置法の多用を避ける。
倒置法というのは、「○○した、××が」というように、語順を逆にすることです。先ほどの体言止めに結構近い感覚のものです。
つまり、体言止めと同様の問題を抱えているとも言えます。
以下は、実際私が見たことのある悪例を少しいじったものです。早速見てみましょう。
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殺人鬼は俺の背後に迫っていた。血塗られた刃物をちらつかせて。
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なんだか珍妙な文章ですよね? 私が見た作品ではこうした倒置法が多用されていました。
では、改善版を見てみましょう。
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血塗られた刃物をちらつかながら、背後に殺人鬼が迫っていた。
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いかがでしょうか。ずいぶんすんなりと入ってくる文章になったのではないでしょうか。倒置法も可能な限り避けるべし、というお話でした。
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7.「の」の三連発を避ける。
「の」という言葉は使いやすいので多用しがちですが、三つ以上続くと大変な駄文になってしまいます。悪例を見てみましょう。
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箱の中の花のいい香りだ。
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くどさや稚拙さが漂う文章ですね。では、改善版を見てみましょう。
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箱の中の花が、いい香りを放っている。
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このように、「の」は二つまでに抑えることが肝要です。
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8.一人称や口調を被らせないようにする
発言者名がセリフの頭についている会話形式(俗に言うSS方式)を取らない小説は、言葉の主が誰なのかわからなくなることが多々あります。そのため、セリフの前後に誰のセリフであるか書く必要があるわけですが、これを多用すると文章が説明的になりすぎ、没入感を阻害します。では、おなじみ悪例から。
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「俺は聞いてないぞ! どういうことだよ!?」
Aはいきり立った。
「俺だって今初めて聞いたんだ、仕方ないだろ!」
Bがふてくされる。
「まあ待て。俺に名案がある」
Cが自信ありげに不敵に微笑む。
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誰が誰だよ! という感じですね。
幸い、日本語は一人称や口調が非常に豊富なため、一人称と口調で人物を書き分けることができます。では、続いて改善版を。
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「俺は聞いてないぞ! どういうことだよ!?」
「僕だって今初めて聞いたんですよ、仕方ないじゃないですか!」
「まあ待て。ワシに名案があるぞい」
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なんと、セリフだけで人物の書き分けができてしまいました。日本語特有の、一人称と口調の豊富さを武器にしていきましょう。
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9.女性キャラに「~だわ」「~よ」「~かしら」を使わせない。
こういうコテコテの「女言葉」を使いがちなのは、ずばりリアルの女性への観察の足りなさです。
では具体的にどう回避したらいいかというのは、キャラクターによりけりなので一概には言えず観察と工夫あるのみですが、手軽な参考としては「SSSS.GRIDMAN」という作品の視聴がおすすめです。スタッフがリアルな若者の会話を徹底的に勉強したと言うだけあって、「そのへんに実際いそうな高校生」としてのリアリティが見事な作品です。
一例として、私が元気な少女を書くとしたら、「○○だわ」→「○○だよ」、「そうよ」→「そうだよ」、「どういうことかしら?」→「どういうこと?」という風にすると思います。
ただし、8で触れたような「口調のひとつ」として扱うなら多少はありでしょう。前述八つに比べると禁じ手度は低いです。
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以上、小説執筆における九つのNGと小技を紹介しました。ご創作の一助になれば幸いです。