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第六話


 僕の目の前で、瀬川結奈が…あの《冷姫》がとても嬉しそうに笑顔を浮かべている。


 この、すれ違う誰もが振り向く程の美少女…なんと、僕の彼女らしい。いやぁ…信じられないね。何の取り柄もないこの僕に、まさか彼女が出来る日が来ようとは…それも、とびきりの美少女の。


「ねぇ…そういえばさ、啓介君のご両親はいないの?」


「ん? …あぁ。いつだったかな…僕が最後に親にあったのは」


 多分、お正月頃だったかな。もう四ヶ月前くらいか。意外とは早いもんだな…。


「えっ…もしかして、一人暮らしなの??」


「もしかしなくてもそうだよ」


 そんなに驚くほどのことかね。()()()親と離れて暮らす事なんて、高校生ならありがちな事じゃなかろうか。


「へ、へぇ…そうなんだ…」


 なんだろう…結奈がなんか意味深な笑みを浮かべてるんだが。一体何を企んでるんだろう…これ以上学校の男どもに睨まれるのは勘弁して欲しいのだが。

 …てか、彼女が出来た事につい浮かれてたけど…僕たちストーカーにあったばかりなんだよな。


「それで、結奈はいつ頃からまたストーカーの被害に?」


「ええとね…啓介君に告白されてすぐだったかな」


 まさか、僕のせいじゃないよな…。いや、僕が告白をした事で犯人を刺激してしまったのかもしれないな。偶然とは思えないタイミングだ。


「なんか…ごめんね。ストーカーは僕のせいかもしれない…」


「ううん!啓介君のせいじゃないよ…ちゃんと拒絶出来ない私のせい…」


 そんなことはないと思うのだが…ここではこの議論に決着はつかないだろう。まぁ、お互いの所為ってことで。


「今後どうしようか。警察はダメだろうし…」


「そうだね…」


 確かな証拠がない以上は、警察は動いてはくれないだろう。前と同じ犯人っていう確証もないしな。


「例のボディーガードは?今はいないの?」


「いないかな…この頃はストーカーの被害なんてなかったから…。今は、お父様もお母様も海外に行っちゃってて…家には私と家政婦さんしかいないの」


「なるほど…」


 結奈のご両親は日本にはいないのか。そして、家には結奈と家政婦さんだけ…地味に危ない状況だな。今日のストーカー犯みたいな奴なら、家に押しかけてきても不思議はない。


「ね、ねぇ…」


 だとすると登下校も危ないかもな…。どうすればいいんだろうか。やっぱり一度警察に…


「啓介君!!」


「うおぉいっ!?」


 いきなり耳元でそう叫ばれるもんだからびっくりしちゃったよ…変な声も出ちゃったし。


「啓介君のお父さん達はいつぐらいに帰って来るの?」


「え?う〜ん…今年はもう帰ってこないんじゃないかなぁ」


 多分、来年のお正月…下手したらもっと先だろうな。


「じゃあさ、お願いがあるんだけど…」


「お願い?」


「うん…」


 なんだろう。なんかものすごーーーく言いにくそうな…恥ずかしいのを隠しているような…。


「やっぱりさ、家の中にいても怖いし…学校に行く時とかも怖いの。だから…しばらく私の家で暮らさない?」


「…は?」


 え??いまなんて言った…?ちょっと理解出来なかったんだが。


「だから、私の家で一緒に暮そ…?」


「ええと…それ、本気で言ってるの?」


 それは、まずいんじゃ…てか、不味い。何が起きたら同い年の女の子と一緒に暮らす事になるんだ?


「あ、家政婦さんがいるから二人って訳じゃないよ…?」


「いや、そういう問題…なのか?」


 問題はそこなのか?二人じゃなければ問題ないのか…なわけないよな。


「…ダメ?」


 なぁ。この世で、美少女+涙目+上目遣いに勝てる奴はいないと思うんだが…。こんなの、断れる猛者いるか?少なくとも、僕は無理だな。


「分かったよ…」


「ホント!?やったぁ!!」


 凄い嬉しそうだな。学校で《冷姫》と呼ばれているのが嘘みたいだ。…《冷姫》信者に今の結奈を見せたらどんな反応をするのだろうか。


「じゃあ、迎えが来たみたいだから先に帰ってるね!!準備出来たら来てね!」


「りょーかい…」


 そう言って、結奈は玄関前に止まった車に乗り込んで帰っていった。あれが、家政婦さんかな?…取り敢えず、準備するか。

 僕は、自分の部屋に戻りスーツケースに荷物を詰めた。





 結奈の家はそこまで遠くないので、歩いて向かうことした。ガラガラガラーーとスーツケースのタイヤが転がる音を響かせながら歩く。


「……」


「……」


 立ち止まって、振り向いてみる。そこには誰もいなかったが…そこの角の横、誰か居るな。


「おい…いるのはわかってる。出てこいよ」


「……」


 そう問いかけてみる…返事は、ない。


「こないなら、こっちからいくぞ?」


 見過ごすわけにもいかないので、上着のボタンを外しながら角に近づいて行く。角まで残り三メートルを切った辺りで…角から二人の男が姿を現した。どちらも、黒い上着を着ていて…フードを被っているため表情が上手く読み取れない。手には…小振りのサバイバルナイフが握られていた。


「お前らがストーカーの犯人か?」


「……」


 なにも話すことは無い、ってか?…周りに助けを呼べそうな人影はない。


「…死んでもらう」


 聞き取れるギリギリの音量でそう呟いた男は、ナイフを構えて僕に突進してきた。ったく、危ねぇ奴らだ。


「っ!?なに…?」


 ナイフが、()()に刺さる…そんなことはなかった。オレが、相手が刺すよりも前に裏拳でナイフを弾いたからだ。


「お前ら、素人だな?実戦で使うならもっと練習しとけよ」


 この程度で、オレを殺すなど到底不可能だ。


「チッ…引くぞ」


 そう言って、二人の男が走り去って行く。別に、追えないわけじゃなかったが…今はそれよりも優先すべきことがあった。


「結奈…大丈夫なのか…?」


 ここまで、露骨に人を殺しに来るような奴らなら…結奈の家に他のやつが行っていたとしてもおかしくない。


 取り敢えず、結奈の家に小走りで向かいながら…ある人物に電話をかける。


「もしもし?送って欲しいものがあるんだけど…」


 結奈が、無事であることを願いながら僕は道を急いだーー。
















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