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53歳の私にくるはずがないのにモテ期  作者: くりはらまさき
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2. 栗本舞香のこと 1

栗本舞香は、重たそうな二重まぶたをしている。

そのせいで、顔がとてもゴージャスに見える。ゴージャスと言ったがそうとしか言いようがない。

舞香がミスコンのドレスを着てみると、胸とお尻が豊かに突き出してるが、腰はキュッとくびれている。

トランジスタグラマーとはこういう女の子のことを言うのだろう。

このミスコンテストの最終候補者の中では、一番のグラマーかもしれない。


でも私は、その美しさをゆっくり鑑賞しているヒマはなかった。

なにしろ忙しいのだ。

ミスコンの事務局スタッフという仕事は、かなりヒマなように松本ヨシノブは言っていたが、そんなことは全くなかった。

すべてが初めてのことばかりで、倉庫係でつちかったノウハウなど何の役にもたたない。

さらにミスコンテストの本選はまだまだ先のことだった。


それまでは、候補者たちは研修やらイベントやらに駆り出される。忙しいのだ。そしてその世話をする私も忙しいというわけなのだ。

最終候補者も私も、すべてが初めてのことで、私に限らずてんてこまいの毎日を過ごしている。

その中で、私は頼られる立場ということになっていた。

その私がオタオタしていては、彼女らを不安にさせるだけだ。しっかりしなければならなかった。

そう自分に言い聞かせている。


そんな毎日の中で、特に栗本舞香は私を頼りにしているようだった。

なんであっても、しきりに龍造寺さん龍造寺さんと言ってくる。

それでも舞香に使われている感じはなく、単純に不安だから私を頼っている感じは伝わってくる。

まあ、悪い気はしない。


「隆一郎さん。」

「えっ。」

ある日いきなり下の名前で呼ばれて、私はとまどった。

そんなの全く気にしないように、舞香はゴージャスな笑顔を見せた。

A4サイズの書類を私に見せた。直筆で書き込んである。

「この書類書いたんですけど、見てもらえますか。」

今度のミスコンに必要な申請書類の一つだ。

もっとも申請書類と言っても、私が適当に作った書式なのだが。

「ああ、これね。見てみようか。

えっと、ここはちょっと書き直して。あとは問題ないよ。このまま提出してもらえれば。」

「新しく書き直したほうがいいんですか。」

「そんな必要はないよ。こうやって二重線引いて・・・」

そう私は対応する。


舞香は私の手元をのぞき込んでくる。顔が近づいてくる。女の子と顔をこんなに近づけたのは何年ぶりだろう。いや何十年ぶりだろうか。

舞香の家はかなり裕福らしい。いや大富豪と言っていい家庭のようだ。家は芦屋であの六麓荘らしい。父親は有名な会社のオーナー社長だ。

金をふんだんに使ったから、こんなに美人に育ったということか。

別の日には、舞香からもっと違うことを相談したりされた。


舞香はちょっと物思いに沈んだ表情で、私に近づいてきた。

「私、自信がないんです。ミスコンの当日アガらないかって。」

舞香の声は、いまどきの女の子の声とちがってキンキンした感じではない。低音が豊かでセクシーな音がする。

「そんなこと、皆そうだよ。気にしないで自信をもってやればいいんだよ。」

「隆一郎さんがそう言ってくれると、勇気が出ます。」

舞香はそう答えて笑顔をみせてくれた。


私のありきたりすぎる言葉のどこが、そんなに舞香に勇気を与えるのか、自分でもさっぱりわからなかったが、とにかく彼女は喜んでくれたようだった。

こんな毎日を、私は舞香やほかの候補者の女の子と過ごしていた。


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