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6話「押し寄せる王国兵」

-親友の妹の為に俺はスープを作っている。

他人に振る舞うのは10年ぶりだろうか。

皮肉にも最後に振舞ったのは彼女の兄で、今はその妹に振舞っている。


「よし完成だ…、おいそろそろ起きてくんねぇ…!?」


そう言い切る前に外からの足音に気づいた。気が緩んでいたとはいえ警戒は怠っていない。


「この人数は不味いな…」


自分一人ならば何とかなるが疲弊した少女も一緒となれば話は違う。

とにかく彼女を起こさねば。


「おい、敵襲だ、生きたければ目を覚ましな。」


「…は、はい…すみません私眠ってしまい…」


まだ意識が朦朧としているのかふらついている。


「寝起きですまんが隠れろ。」


「はい?」


少女は無垢な表情で首を傾げる。


「だから隠れろって言ってんだ!生き延びたければ俺に従え!」


勇ましい男の怒号が響く。本来ならば滅多に叫ばないが今は余裕が無い。それだけ焦っていた。

その叫びにようやく状況を理解したのか押し入れへ身を隠しだす。


「ヴェルさん、王国兵でしょうか。」


「多分な…」


国の、いや国王の為なら理由や建前も無しに何でもする軍だ、そこに捕らえられでもすれば死よりも恐ろしい現実が待っている。


「ヴェルさんはどうするんですか?」


「俺は…」


正直今の俺に倒せるのか不安しかない。

相手は現役の兵士だ、どちらにせよ無傷ではすまないだろう。

何より指名手配犯を追う兵ということは軍でもトップクラスのエリートに違いない。


「もう来る。俺の心配はするな。」


「は、はい…」


少女は心配そうな表情で身を潜めた。

そしてその直後。


「あの〜ヴェル・バーンさん?こちらにぃイラッシャイマスカァ?」緊迫した空間の中、気の抜けるような、というかとても腹が立つような声が聞こえる。この声には聞き覚えがあった。


「その声はレジアか?」

ドア越しに問いかける。


「ご名答、あなたの元職場仲間のレジア・カーンです。一緒にご同行願えませんかねヴェルさん。私も手荒なのは嫌いなのですよ。」


「手荒なのは嫌いだぁ?笑わせんな。元より俺を連れてくつもりなど無いだろう。」


俺の返答と共に木でできた戸が切り刻まれ、そして奴の姿が見える。

この流れは非常に想定内だった。

一見、細身の長身でとても上品な見た目な "高貴で下劣な悪魔" の姿を再び拝まなければならんとはな…


「そうですか…ならここで果てなさい。英雄の成れの果てよ。」


その言葉と共に彼の目つきは剥き出しのナイフのように尖り、殺意が溢れる。


「英雄の成れの果てか…一つ訂正させてくれ、俺を英雄呼ばわりするな、レジア-国の飼い犬-よ…」


その時押し入れに身を潜める少女は悟った。

彼-ヴェル・バーン-は絶対に勝利すると…

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