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3話「出会い」

-かつての英雄は戸の前で身構えていた。

突然の来客だ、しかも雨の日に。

戦場で磨かれた直感が彼の身体を強ばらせる。


「誰だ!」


威圧的な声で叫ぶ。こういうのは初見が大事だ。

とにかく相手を怯ませねばという事だけが彼の脳裏に過ぎる。


「はひ!えっと私はマリです!マリ・バレスです!」


はっきり言って予想外だった。まさかこんな深き樹海で甲高い女の声が聞こえるとは誰も思わぬだろう。


「何の用だ、まず要件を聞こう。戸を開くのはその後だ」


女を使った誘導かも知れぬと思い警戒は解かぬようにした。

それにしてもマリ・バレスという名前、どこか引っかかる。


「私、国に追われているんです!私の兄グレアスからあなたなら助けてくださるという手紙を貰い、訪ねてきました!」


グレアスの妹と聞き謎は晴れた。そう思い戸を開くと…


「戸を開けてくれてありがとうございます!早速で悪いのですがなにか食べ物を…」


言い切る前に目の前の美少女は倒れ込んだ。

様々なトラブルを経験しているとは言え、流石に驚かざるを得ない。


「おい、大丈夫か!しっかりしろ!」


その言葉に答えるように少女は大きく澄んだ瞳を薄く開き、


「温かいスープが飲みたいです…」


その言葉と共に完全に彼女は眠りについた。

どこか穏やかさを感じさせる寝息を立てている。


「倒れがけにスープの注文とはな、こりゃグレアスの妹で間違えないな」


そんなことを考えながら自らの寝床に少女を運ぶ。

華奢な身体は綿菓子のように軽かった-


突然の客人とはいえ、このまま放って置くのも忍びない。

ましてや親友の妹だ、まったく面倒ではあるが頼みを聞くしかない。


「ったく…こんな雨ん中食材調達かよ…」


武器を携え籠を持ち屈強な肉体を動かし、男は森に出る。

おそらくこの男の前には野獣も怯むだろう。


「これは借しだぜグレアス。」


冗談交じりに言葉を発し自らを奮い立たせる。

雨で濡れる樹海には似つかぬ程、今の彼は輝いている。

それは彼女が現れたからだろうか。


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