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2話「マリの場合」

-「今日は雨?どうすればいいの…」


国に追われる少女の朝は早い。

何故追われるのかも知れぬ少女は自らの運命を呪う暇もなくただ逃げ続けていた。

美しい銀髪に朝露を滴らせ、彼女は森の中を走る。


「あと少しであの人に会えるというのに…」


私にはグレアスという兄がいた。

そんな兄は10年前の戦に行ったきり帰ってくることは無かった。

しかし1枚の手紙だけは帰ってきた。


-王国兵から逃げろ。そしてカラム山の奥にいる我が友"ヴェル・バーン"を訪ねろ。-


そんな突拍子もない内容だった。

だが手紙と同じように兵隊が来たのだから信じるしかない。

もとより両親のいない私は家に命からがらではあったが、一抹の不安も無く逃げ出せた。そして今に至るのだが、少女一人の旅困難だらけ。

況してや大陸有数の樹海を持つカラム山だ、兄の友人より亡き両親が見えてきそうなものである。


「はぁ…お腹空いたし、お風呂入りたいし、もうヴェルって人なんでこんな所に居るのよ!」


もはや文句と弱音しか出ぬほど少女は弱っていた。

村の中でも気さくで明るく、更に美人と抜け目ない彼女にかつての面影は無い。


「でも進まないと…あと少しなんだから…」


唯一の希望を胸に雨で泥濘む密林を少女は歩き出したその時…


「煙?」


彼女の心は一瞬にして晴れた。ようやく目的が果たされたのだ、ここまで生を実感することがあるだろうか。

彼女は煙へ向かい走ると古い建屋があった。

本当にヴェル・バーンがいるか分からないが、こんな樹海の民家だ彼で間違えないだろう。


「よし!」


こういうのは初見が大事だ、みすぼらしい格好だし出来るだけ清楚な雰囲気で思われたい。

彼女は高鳴る胸を抑え、上品に構え美しい髪を整え、戸を軽く静かなリズムで叩く。



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