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それが彼らの魔術黙示〈リベレーション〉  作者: 太郎
第一章 かくして始まる魔術譚
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Day0 キルケPart2

 アヴァン君を見送った後、私はその足であるの元へと向かった。シェーラに連れられて到着した部屋はいつもとは違う。確か来賓との会食の部屋であったかな。扉からして荘厳で装飾が多く施されている。そして中にはアルが待っていて、その前には料理が並ぶ、


「ふふふ、今日はなかなかにおもしろいことがあったよ」


 シェーラの引いてくれた椅子に腰掛ける。アルに招かれた夕食・・・と言うのはチープな表現か。晩餐と表現した方がよいだろう。テーブルに並ぶ品はどれも手の込んだ料理ばかりで目移りしてしまう。以前にも晩餐に呼ばれた時はあったが、あの時に出された料理全てが美味であった。


「これはおまえが教師になれたことの祝いだ。無礼講いや、おまえは全く礼節を無視しているか」


 流石に失礼なことを言われて少しむっとする。「すまんすまん」と謝るアル。まぁ、確かに私はアルに対して敬語を使わない。それどころか愛称で呼んでいる。私とアルの仲を邪推する輩がいるのも事実。一人心当たりがある。あの人物のことは今はどうでもいいだろう。このごちそうを早速いただくとしよう。


「では、失礼する」


 私は七面鳥一匹をまるまる焼いたローストターキーに手を伸ばした。アルは特大の牛ロースを自ら取ろうとするが、付き人のシェーラがそれを止めた。

 無理もないはずだ。アルは自ら料理を取る立場の人間ではないのだから。

 早速ターキーを一口食べてみると、なんとおいしいことだろうか。あふれ出る肉汁、ほどよい塩加減。格別の品と評しても過言ではないだろう。

 それからシェーラは私に前に置かれたグラスにワインを注ごうとしたのだが私はそれを手で制止した。シェーラもすぐに私の嗜好を思い出したようで「失礼しました」と一言。すぐにティーカップに紅茶を注いでくれた。


「全くおまえのそれだけは理解できない。我が国のワインは格別だぞ。しかもそれの最高品を拒むなんて」


「そう言われると言い返せないね。しかし私は紅茶かコーヒーがいい」


「そんなことを言って。本当はおまえただ酒に弱いだ――」


「いいや、紅茶とコーヒーが好きなだけさ」


 決してアルコールに弱いというわけではない。毎度のように「書物」に書かれていたからというわけでもない。ただ単純な嗜好。それらを愛しているというだけなのだ。


 互いに一息ついたところで、アルは話を切り出した。


「それで、いったい今日は何があったんだ」


「今日は――」


 私は今日一日に起きたこと、特にアヴァン君のことを話した。アルは何故か少し引き気味ながらも私の話を楽しんで聞いてくれたようだ。

 教師という職に関する知識については書物から得たものと、常識の範疇においてでしか把握していない。けれど、たった一日、生徒とふれあっただけで感じたあの思いは実に良いものであった。これからの教師生活に期待をしてもよいのかもしれない。


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