Day1 アヴァンPart7
「じゃあ、ここにしようか」
先を行くエノとレイに俺とリンカがついて行くという構図で喫茶店へと辿り着いた。その喫茶店は学園前の大通りから左に曲がってすぐにあり、こじゃれた雰囲気がする。看板には『喫茶 Mellow』の文字が。さっそく俺たちは中に入っていった。
中はテーブル席が4つにカウンター席がいくつか。こじんまりとした店である。それと落ち着いた音楽が流れている。俺たち四人は店員さんに奥のテーブル席へと案内された。
「それじゃあ何頼もうか?マスターおすすめはぁ?」
席に着くと直ぐにエノが声を上げた。
「うん?うちは本格のコーヒー店だが…あんたら若い人らには合わないどろうねぇ。カフェラテとかがいいんじゃないかい」
カフェラテか…確かエスプレッソにミルクを多く加えた飲み物だっけ。まぁそれで――
「それじゃあそれ四つ!いいよね、アヴァン、リンカ?」
おっと早いな、この人。半分強制じゃないか。俺とリンカはうなずくとマスターさんが作業へと移った。
やっぱりこの二人は王都民らしい。こんな積極的な人は初めてだ。正面のレイは鏡を取り出してメイクを始めだすし、エノは優雅に足を組んでるし。それに比べ隣のリンカと俺は場に慣れておらず恐縮しきっている。
そんな俺たちを見かねてかエノは口を開いた。
「それで、お前らを呼んだのはさ…」
「何か理由があるのですか?」
リンカのその問いにレイが鏡をパチンと閉じたレイが答えた。
「どう考えても超絶美少女のリンカちゃんが男を連れて登校…ナニがあったか気になるわけさ!」
「べっ、別に超絶美少女なんかじゃないわ」
顔を赤らめて否定をするリンカの思わず息をのむ。俺も何もなかったと主張しないと!
「何といわれても俺らはただ道に迷ってた時に偶然ばったり会っただけで…」
「そうよ、レイ。アヴァンとは何も関係はないわ」
「とはいえお前ら入学式サボって二人で登校したわけで、その事実からするにぃ…」
「全男衆の嫉妬の対象になるわけだな、アヴァン?」
そうなんだよなぁ。それはよく知っていた。リンカと俺はどう考えても釣り合わない。それで彼女に近づくなんて他の人たちが許すわけもないわけで。
「あの、三人とも?なんでアヴァンが嫉妬の対象に?」
「あちゃー」と声をあげて辟易するレイ。エノもまたため息をついている。そうか、リンカは理解していないんだ。自分が諸問題の元凶だって。
「まぁ、リンカが自覚していなくても大問題なわけさ。だからまぁ…」
「協力してやるというわけだ。一人じゃ手に負えないだろ、アヴァン?」
「えっ?」
状況がつかめない。協力?何に?もしかして一人茨の道へ踏み出した俺に、か?えっ、でもなんで。だってメリットもなにも――
「見てて面白そうだし、二人は」
「面白そうって…本人がどれだけ大変なのか」
享楽主義か、二人は!はぁ、でも一人なんかよりずっと心強いわけで。
「とりあえず、ありがとう。二人の協力に感謝します?」
「おうよ。がんばれよアヴァン。きっと明日の朝は質問攻めだぞ」
「それに本丸は難攻不落みたいだし…ファイトっ!」
「おっ、おう」
声援をされてもあまりうれしくはない。そんな中一人話しを理解していない少女がいた。
「えっと、ごめんなさい。まるで状況がつかめないんだけど」
「いいんだよ、リンカ。リンカは今日の日があったことさえ知っていれば」
「そうだぜ。まっ、気楽にいこうぜ気楽に」
なんやかんや話しているうちにマスターがカフェラテを持ってきた。一口飲むとそのおいしさに舌鼓。
「うっ、うまい…」
二日前にキルケ先生におごってもらった紅茶もおいしかったけれど今日のカフェラテも格別。紅茶は少し苦みが強かったけれどこれは程よい甘さがありちょうどいいというか。
「それじゃあ、普通の会話としゃれこみますか!」
エノのその言葉を皮切りに俺たちのたわいもない話が始まった。俺の出身地、リンカの故郷、王都について。なんだかんだ俺は同年代で話したことがあるのがレーンだけで新鮮であった。
それから一時間話し続けたのちに俺たちは解散した。