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見張りをしておくという名目で、時生、山村、駒木の三人は店の外に残った。
等間隔に並んで備えはするはが、静かだ。
店内から聞こえる明るい声とは真逆の雰囲気である。
駒木の深刻そうな様子が、そうさせている。
「で、話というのは?」
「俺が、駅ビルにいた話はしたよな」
「さっき聞いたところだ」
「正直、あそこで見たものは、できるもんなら忘れてしまいたいくらいだ。あんな、ヤバいものを見たのは、生まれて初めてだからな。でもよ、お前らくらいには、ちゃんと伝えておいたほうがいいと思ったんだ」
「なぜ、俺たちだけなんだ? 情報はなるべく全員で共有されるべきだ」
「真面目かよ。聞いたあとで、みんなにも教えるべきかは、お前がきめればいいだろ」
「わかった。聞かせてくれ」
駒木は深く息をひとつ吐いたあと、話始めた。
「電気が消えて真っ暗になった後、俺は、明かりを求めて、窓際に行きついた。そこから、外を見た。
見てしまったっていうべきかもな。
外はひどいことになっていたよ。人間が、あの化け物どもに殺されるところを、俺はまともに見ちまったんだ。
思い出したくない光景だよ。
地上波テレビとかだったら、ぼかしが入っているやつだが。
あいにく俺はそれを生で見ちまった。
ほら、餌を投げると一気に集まってくる動物っているだろ。鳩とか、鯉とか。あいつらは、人間に対して、そんな感じにしてたわけだよ。
自分のことで、精一杯になってた間は、少し忘れていられたけど。こうして、ちょっとでも余裕ができた瞬間から、あの惨劇がチラつくよ。
いや、俺は、個人的な恐怖体験をカミングアウトして、メンタル的に安らごうとか、そういう話じゃないからな。
まあ、聞けよ。
駅の南側はほとんど町らしいものはなくて、焼け野原っていえばいいのかな。大災害のあとみたいな感じだった。
だから、特に遮るものもなく、俺は色んなことが見られたんだが。
隠れるところがないから、そこにいたやつらは、たぶんほとんどが逃げられなかったんだと思う。
人が、化け物にやられるのを、俺は見ていることしかできなかったよ。まあ、今考えても、助けたられなかっただろうし、お前らだってさすがに無理だと思うはずだ。
しかし、俺が教えないといけないことはそこじゃないんだ。
ま、ここからが本題だ。
城壁があるのは見えたよな?
あの壁には門がついてて、そこから、化け物が出てくるのが見えた。ばかでかい門だよ。赤くて、でかい。
出てくるやつの中にも、でかいやつがいた。
さっきお前らが倒したのより、さらにもっとでかいやつだよ。
遠くから見ただけだが、さっきのサイズのも、あれの足のまわりにいたから、比較はできたんだ。
間違っても、戦おうなんて気はおきないぞ。
それが、見た範囲だけで三体はいた。
あれを見たあとだからな、小さいのが相手にしても、戦ってるお前らが信じられなかったよ。実際、勝ってるんだから、なんかすごいっていうか、まあ、悔しかったっていうのはある。
どこまで、話したか。
俺が我にかえって、そこから逃げ出したのは、蜘蛛の化け物が門の陰から出て来て、真下の駅の中にも、やつらが入って来はじめた時だったか。
蜘蛛の化け物な。
もともと苦手なんだけど、あれは完全にトラウマになってるわ。でかい、ヤバい。それ以上、思い出したくない。ここのくだりはもうやめよう。
その先は、ただ逃げて、逃げてるあいだに他の三人と会って、あとはお前らに助けてもらうだけで全部だよ。
ようするに俺が言いたいのは、つまり、戦っても絶対、勝てない化け物を俺は見たから、それを教えときたかったんだよ。
どうする?
コンビニのなかの女子たちにも、これを教えたほうがいいか?」
駒木が言いたいことを言い終えると、三人はその場で押し黙った。
店のなかは、何やら楽しそうだ。
時生は、もしかしたら、まるでそこだけは、ここに来るまでの、元の世界なのではないかと思えた。
そうだとしたら、どんなによかっただろう。




