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洛中魔界・洛外迷宮  作者: 影宮芯二
7/11

 見張りをしておくという名目で、時生、山村、駒木の三人は店の外に残った。

 等間隔に並んで備えはするはが、静かだ。

 店内から聞こえる明るい声とは真逆の雰囲気である。

 駒木の深刻そうな様子が、そうさせている。


「で、話というのは?」


「俺が、駅ビルにいた話はしたよな」


「さっき聞いたところだ」


「正直、あそこで見たものは、できるもんなら忘れてしまいたいくらいだ。あんな、ヤバいものを見たのは、生まれて初めてだからな。でもよ、お前らくらいには、ちゃんと伝えておいたほうがいいと思ったんだ」


「なぜ、俺たちだけなんだ? 情報はなるべく全員で共有されるべきだ」


「真面目かよ。聞いたあとで、みんなにも教えるべきかは、お前がきめればいいだろ」


「わかった。聞かせてくれ」


 駒木は深く息をひとつ吐いたあと、話始めた。


「電気が消えて真っ暗になった後、俺は、明かりを求めて、窓際に行きついた。そこから、外を見た。

 見てしまったっていうべきかもな。

 外はひどいことになっていたよ。人間が、あの化け物どもに殺されるところを、俺はまともに見ちまったんだ。


 思い出したくない光景だよ。

 地上波テレビとかだったら、ぼかしが入っているやつだが。

 あいにく俺はそれを生で見ちまった。


 ほら、餌を投げると一気に集まってくる動物っているだろ。鳩とか、鯉とか。あいつらは、人間に対して、そんな感じにしてたわけだよ。

 自分のことで、精一杯になってた間は、少し忘れていられたけど。こうして、ちょっとでも余裕ができた瞬間から、あの惨劇がチラつくよ。


 いや、俺は、個人的な恐怖体験をカミングアウトして、メンタル的に安らごうとか、そういう話じゃないからな。

 まあ、聞けよ。


 駅の南側はほとんど町らしいものはなくて、焼け野原っていえばいいのかな。大災害のあとみたいな感じだった。

 だから、特に遮るものもなく、俺は色んなことが見られたんだが。


 隠れるところがないから、そこにいたやつらは、たぶんほとんどが逃げられなかったんだと思う。

 人が、化け物にやられるのを、俺は見ていることしかできなかったよ。まあ、今考えても、助けたられなかっただろうし、お前らだってさすがに無理だと思うはずだ。


 しかし、俺が教えないといけないことはそこじゃないんだ。

 ま、ここからが本題だ。


 城壁があるのは見えたよな?


 あの壁には門がついてて、そこから、化け物が出てくるのが見えた。ばかでかい門だよ。赤くて、でかい。

 出てくるやつの中にも、でかいやつがいた。

 さっきお前らが倒したのより、さらにもっとでかいやつだよ。

 遠くから見ただけだが、さっきのサイズのも、あれの足のまわりにいたから、比較はできたんだ。

 間違っても、戦おうなんて気はおきないぞ。


 それが、見た範囲だけで三体はいた。

 あれを見たあとだからな、小さいのが相手にしても、戦ってるお前らが信じられなかったよ。実際、勝ってるんだから、なんかすごいっていうか、まあ、悔しかったっていうのはある。


 どこまで、話したか。

 俺が我にかえって、そこから逃げ出したのは、蜘蛛の化け物が門の陰から出て来て、真下の駅の中にも、やつらが入って来はじめた時だったか。


 蜘蛛の化け物な。

 もともと苦手なんだけど、あれは完全にトラウマになってるわ。でかい、ヤバい。それ以上、思い出したくない。ここのくだりはもうやめよう。


 その先は、ただ逃げて、逃げてるあいだに他の三人と会って、あとはお前らに助けてもらうだけで全部だよ。


 ようするに俺が言いたいのは、つまり、戦っても絶対、勝てない化け物を俺は見たから、それを教えときたかったんだよ。


 どうする?

 コンビニのなかの女子たちにも、これを教えたほうがいいか?」


 駒木が言いたいことを言い終えると、三人はその場で押し黙った。

 店のなかは、何やら楽しそうだ。

 時生は、もしかしたら、まるでそこだけは、ここに来るまでの、元の世界なのではないかと思えた。

 そうだとしたら、どんなによかっただろう。


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