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洛中魔界・洛外迷宮  作者: 影宮芯二
6/11

北上を続けていくと、道はやがてアスファルトで舗装された、歩きなれた路面の道路に変わる。

最初の数歩は、靴の裏に残った砂のせいでざらざらと音を立てた。

ここから先は、京都駅周辺と同じく、現代の町並みだ。


「電気が通ってないな」


山村が大きめの声で呟く。

彼の言うとおり、街全体の照明という照明が灯っていないせいか、太陽は高いのに薄暗い印象を受けた。


「まてよ、おかしいな」


野田翼(のだつばさ)が何かに気付いたようで、声を上げた。


「なんだよ」


駒木に話の続きを促される。

二人とも、時生と伊代が運び出してきた刀を、それぞれ受け取っている。


「なんか、当たり前のこと言ってるなと、最初は思ったんだけどさ、電線が途中で切れてるんだから電気が繋がっているわけないんだけどさあ」


そういって、指差す先では、確かに空間の変わり目のところで、電柱から電線がぶらぶらとぶら下がっていた。


「そうだな、それで?」


「思い出したんだよ。最初は、電気がついていたんだ」


「そうなのか?」


山村が口を挟んだ。


「俺は最初の時点で、さっきの戦国時代みたいなところにいたからな。そうなのか?」


山村は何故か、時生に話を振る。

時生は記憶のなかの最初の情景を思い出す。霧のなかの街。


「信号は、点いていた」


「だろ?」


時生はしかし、もっと別のことに気をとられていた。

町並みも、車両向けの道路表示も、ここが京都駅を北にむけて進んだ烏丸通りの、おそらく五条付近だということを示していた。

しかし、時生の知るこのあたりでは、すでに何年か前に工事が施されて、電線は地中に埋められているはずなのだ。


(現代に近いけど、もう少し古い年代なのか?)


時生の関心とは、別の方向に、みんなの会話は進んでいく。


「電気はそれでいいんだよ。俺は、京都駅ビルの中で、目が覚めたんだ」


駒木が自分の体験を話始めた。


「人は誰一人いないし、電車は全て動いてなかった。照明は最初は、全部点いていたけど、数分のうちに全部消えた。あれはなかなか怖かった。これって、大事なことか?」


駒木はみんなを見回した。

女子が一人、挙手する。


「はい!」


松下友香(まつしたともか)。山村といた二人のうち一人だ。


「それってかなり大事なことかもしれない。逆に言えば、そのときの直前までは電気は繋がっていたってことでしょ?」


「だな」


「ということは、私たちが、いつの間にか、ここにきていたのと、街自体がこういう姿に変わってしまったのは、同時だったってことじゃないの」


「なるほどなあ」


「それに、見て。車が道路の真ん中で止まってるでしょ。あれって、それまで、誰かが運転していた途中だったんじゃない?」


「まあ、それっぽいけど、運転していた人はどこに消えたんだ?」


「それは、わからないけど‥」


「少し、整理していいか?」


話の挟みかたを聞きながら、山村は、仕切りたがりなところがあると、時生は思った。


「今から数時間前か、ひょっとしたらまだ、そんなに経ってないのかもしれない。とりあえず、そのくらいの時間帯から、みんな「こっち」にいる。それで間違えてないよな?」


全員が山村に同意を示す。


「それで、電気の件からすると「こっち」の状態が、今の姿になったこと自体が、俺たちが来させられたタイミングと一緒だったと。反対する人は?」


「異議なし、だ」


駒木が代表して応えた。


「ということは、俺たちのなかには、「こっち」にもっと前からいて詳しく知っている者もいないし、そもそもなんでこうなったのか説明できる者もいない。心当たりもない。情報があるのは、これまでに見てきたものだけ、それがすべてってわけだ」


山村の言葉には、それを否定してほしいという期待が込められているのが、分かりやすいほどに分かったが、残念ながら、それに応えてくれる者はいない。


暫くの沈黙。

無音の街では重い足音だけがやけに響く。


「これで、何が分かったんだ?」


沈黙を破ったのは、駒木だ。山村は真面目そのものといった表情で言った。


「わからないということが、わかったんだ」


「あー。そりゃ、大した前進だな」


「まずは安全を確保したいが、俺たちに起きていることを理解するためには、みんなで協力してがんばらないと」


山村の優等生発言をよそに、あるものを発見した結果、同行者たちの半数が走り出していた。


「コンビニだ!」


時生はさすがに走りはしなかったが、不思議なほど安心したのは確かだ。子供の時分から、コンビニにいけば大抵のものが手に入るということを刷り込まれているせいだろう。まさに、現代人の味方だ。


「おい、気をつけろよー!」


注意を促す山村の声もどこか朗らかだ。


「なあ」


みんなが離れたの見計らってか、山村と時生の二人に、駒木が話しかけてきた。

駒木は真っ先にコンビニに走ったタイプな気がしていたので、時生には意外に感じられた。


「どうした?」


「お前たちには、話しておきたいことがあるんだ」


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