〜澪side〜
今回はいつも以上に作品を練ってから投稿させていただきました。
もしよろしければ、コメントを残していただけると幸いです。
〜第1話〜
オルゴールの哀しげな音色が寂しいクリスマスを迎えようとしている。
一歩外に出てみれば、息は白く、もう冬の寒さも本番に近づいてきている。
あーあ……なんで恋なんてしてんだろうな……
ふと思えば、恋ってほんとに無駄な気がする。
あんなに非効率で非科学的で……
人間の愚かささえ感じる。
十二月に入りたての頃のこと。
周りはいわゆる「クリぼっち」から抜け出そうと、必死になっているように思えたけれど、わたしは特には気にしていなかった。
「わたし、色々あって……奏と付き合うことになったの。」
「澪、聞いて!わたし快斗に告られた!」
「あ、蘭と隼、ペア画じゃん」
わたしの知らない内に、みんなに何があったのだろうか。
あろうことか、わたしの周りから「クリぼっち」が消えていった。
だからわたしは、「恋」「故意」に逃げた。
わたしの隣の男の子。これといった特徴もないけど、なんとなく馬が合ったのだろう。
わたしは直感で彼、零を選んだ。
「あっ、今の声可愛かった!」
「今日、分け目変えてる!」
これはもちろんわたしに言ってることじゃない。零の好きな子に向けられたものだ。
もう、なんか連呼しすぎて、いつも笑いながらその話を聞いている。その子は、誰が見ても美人だから、こんなわたしが反論したって仕方のないことだ。
「こい」に逃げてからというものの、世界が広がって見えた。
普通なら、「輝いて見える」とか「180度違って見える」とか思うのかもしれないけど、わたしには「広がって」見えた。
今までならこうだって思っていたことが、こんな考え方もあったんだ、とかいろんな発見ができて、それが本当に楽しかった。
「あ、ペン落としたよ」
「ありがと!」
「これ、どうやって解くの?」
「えっと〜わたしも分かんないや……!」
「おい、澪〜!」
「ごめんごめん!」
こんなたわいもない会話も楽しかったし、零に「好きな人いる?」って聞かれたときは、嬉しくて心臓が飛び出しそうだった。まあ、その時は「いないよ」って答えたけれど。
そんな、楽しい時間もあっという間に過ぎ、クリスマスまで一週間を切った頃、クラスで席替えの話が持ち上がった。
「班長をくじで決めます」
ぱっと見ると、わたしが引いた割り箸の先には星印が付けられていた。
わたしを含め、6人の班長が放課後の教室に集められた。
「席は班長さん達で決めちゃってください」先生は簡単な説明を行った後、職員室に戻ってしまった。
班長の集まりの席には、なんと零もいた。
「俺、瑞希もらうわ」
彼はあの「本命」の子をもらっていった。
傷つかなかった、といったら嘘になる。
でも、わたしは自分に「わたしは逃げただけだから」と言い聞かせ続けた。
どっちにしろ、「班長同士は同じ班になれないんだし」と決めつけて、その気持ちを心の奥底に押し込んだ–––––。
ついにその席替えが訪れた。
クラス替えみたいなテンションで、
「じゃあ、またね!」
と班員に別れを告げて、机を動かし始めたのだった。
その次の週から新体制になった。
班長たちで席を決めるとき、わたしの班のメンバーは、みんなの性格がバラバラで、まとめるのが大変だねと他の班長から言われた。
今日一日過ごしてみると、案の定、まとめるのは難しそうだと感じた。
ふと、前の班のことを思い出した。ほんの気まぐれに過ぎなかった。
そう、隣の男の子。
わたしは、零から「勇気」をもらった。
そう、それだけのことだと思ってた–––––。
その日、わたしは一人で残って、やり残した課題をやっていた。
「あれ、何やってるの〜?」
零がやって来た。
「あ、課題だよ〜!今日提出じゃん?」
ちょっと、ほんのちょっとばかり嬉しくなってきてしまった。
「あ〜!俺もう終わったわ〜!」
「うわ〜!当てつけだ……!」
「はははっまあな。」
そう言って、零はわたしの席の前の席に座って、こちらに体を向けた。
「ちょっと〜!緊張するじゃん!ただでさえ硬筆の課題なのに〜」
「いいじゃん、お前字上手いんだから」
「上手くないよ〜!」
……わたしにとっての幸せな時間は刻々と過ぎていった。だからわたしは、ちょっと大胆になってしまったのかもしれない。
「零、ちょっといい?」
「……どうしたの?」
「えっとーあのね、そのーあのー」
「もう〜!澪いっつも焦らすじゃん!」
「ごめんごめん!あのさ、実はさ、好きな人いるんだ……」
「え……?前はいないって……」
「そう、まだ好きになったばっかで…#$*%〆¥※☆!」
零はわたしの口を塞いでしまった。
「澪、もうそれ以上言わないで。」
「えっ……」
そして突然わたしの体を引き寄せた。
「俺、好きなんだ。瑞希じゃなくて、澪が好き。」
「えっ……!」
「俺、本気だから」
「ほんとに……?」
「うん」
「……わたしもだよ」
わたしは零の顔を見つめて言った。もう、ちゃんと言わなきゃと心に決めた。
「えっ」
「さっき、好きな人いるって言ったでしょ。それ、零のことだから……」
「そうだったのかよ……俺、焦ったんだよ?澪に好きな人がいるなんて思わなかったし、他の奴に取られるの嫌だったから、つい告白しちゃったよ……!」
「ちょっと……照れるじゃん!」
「照れてる澪も……かわいい」
「ちょっ……!でもまあ、わたしも瑞希ちゃんと付き合ってる零、見たくなかったかも……」
「そんなこと言われたら、俺も照れるわ……!」
「そんな零も……かわいいね(笑)」
「おい!からかうなよ〜!」
「ごめんごめん!(笑)」
わたしの「恋」はまだ始まったばかりだ。
こんにちは、Chocoringです
お読みいただき、ありがとうございます。
こんなにベタ?な恋愛ものは初めて書きましたが、こんな感じで大丈夫なのでしょうか……?
今回は澪sideでしたが、次回は零sideでお送りできればと思います。




