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3話 考察の日

魔術の本とか読むとわくわくしますよね。

????年 一月 十九日


 この世界へ来てから一年。

 今日はひとまず慣れたこの世界について整理し考えてみることにする。


 まずこの世界、実は名前がまだわからない。

 地名について判っているのは、「ゼーレンブルグ」「セントラル」「ロゼ」の三つ。

 現在住んでいるのが「ゼーレンブルグ」らしい。

 窓の外を見渡せばわかるが、家の辺りは庭か草原か森かで石畳の道以外何にもない田舎である。

 後の二つはどうやら都市らしいが、母マリーと主メイドのサラの会話から探るにはこれが精いっぱいの情報だった。


 しかしそれ以外にも得られるものはあった。

 

 一つ、自分達には父親がいないらしい。

 我が家、マリー・レーデ・パトリアが家主であるこの家で、姿が確認できるのは母さんと先ほどのメイドのサラ、そしてその娘のメルくらいだ。

 (メルはほんの少し年下らしい。幼馴染妹ポジ来た!)

 父親らしい人の存在を未だ見た事も聞いた事も無い。

 これについては母さんもサラもわざと避けている話題のようだ。

 二人のやり取りは一見自然だったが、一方でどこか触れてはいけないもした。

 まあサラは元傭兵で相当な腕利きらしいし、この五人の生活で笑顔は絶えたことはないから、この程度は些事なのだろう。

 

 二つ、異世界に来た時点で察しの良い奴は気づくかもしれないが、

 この世界には魔法がある。と思う。

 というのも、少なくともこの家の大人には使えないのである。

 メイドの仕事とか魔法使えば楽そうなのに、サラは使おうとしない。

 母さんはいわゆる「お嬢様」なので身の回りのことはサラがすべてやっているし。

 まあ見てないだけで使っている可能性は存在するけれど。


 ではなぜ魔法があると思ったのか?

 それは現在進行形でその魔法で攻撃してくる奴がいるからだ。


 リリィ、一応双子だが姉に当たるこの赤子は、

 「あー」とか「うー」とか言い、ハイハイしながら俺を追いかけ、熱風(軽く吹っ飛ぶ風圧、ちょっと熱い)を飛ばしてくる。

 なんて恐ろしい生物兵器だ。この一年で何回殺されかけたかわからない。

 母さんたちはあまり熱風による温度差を感じないらしく、さらに証拠も残らないために、今現在までこの熱風系姉は完全犯罪(未遂)である。

 あぁ、こんなに早く終わってしまうのか第二の人生よ。

 冗談はともかく、姉にも使えるんだから自分も使えるだろうと手をかざしたり、いきんでみたが魔法なる物は一向に出ず。

 まさか姉は天才なのだろうかと自分の中で上下関係がはっきりしそうになるのに抵抗するように、色々とここ三ヵ月間試したが何の成果もなかった。

 マホウキライ。

 もしかしたら何か条件や、魔導書的な何かが必要なのかもしれない。



 最後に三つ、これは「転生」に深くかかわっていると思うが、基本的な生活のシステムが元居た世界と同じであることだ。

 一日は二十四時間、一年は三百六十五日で、間違いないと思う。

 ただこの世界の年号や元の世界でいうところの「西暦〇〇年」に値するようなシステムを発見できていない。

 もしかしたらそもそも何年かを数えていないのかもしれない。

 さすがに技術水準は元の世界より高くないが、母さんたちの会話を聞く限り学園などの教育機関は存在しているらしい。

 二週間のうち一日だけサラが馬車で家まで往復しているし、その様子から少なくとも元の世界の14世紀以降の技術レベルだと推測できる。

 

 そして「転生」。

 例の彼はこの世界にもちらほらいるとか、黒江(今はクロエか)もこっちに来ているとか言っていた。

 周りの人間もそうなのかどうかは気になるが、今のところ不自然さはこれと言って無い。

 彼はこのシステムについてある程度知っていた。

 日本が初めてということは少なからず二回は世界を移動していることになるだろう。

 やはり世界は無数に存在していると考えたほうがいいだろうな。

 魂の交換についても気になるところだ。


 まあこの世界が幸せすぎて、元の世界に戻る気も別の世界へ行く気もないのでどうでもいいことなんだけど。

 ってことでひとまず考察終わり。

 色々慣れなきゃいけないことはまだあるだろうが、とりあえずはこんなとこだろう。

 

 あっこら! 熱いし痛いからやめて――って追いかけて来るなって!!


 …今日も今日とてパトリア家は平和です。


 この世界から移動したあいつは何を思っていたんだろうか。

 ふとそんな考えが頭をよぎった。

※追記2015/11/24

 「セントレア」⇒「セントラル」に修正しました。申し訳ありません。

 中部国際空港はこの話に全く関係ないです。

 

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